garadanikki

日々のことつれづれ 駄目駄目さんのガラクタ日記

「サン・フェリーペ号は来た」 「羽左衛門伝説」

 

この2冊には内容上の共通点はなし。

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いずれも古書店で装幀に目がいき、購入したものでした。

左 『サン・フェリーペ号は来た』昭和46年10月5日 新潮社発行 著:大原富枝
右 『羽左衛門傳説』昭和30年3月5日 毎日新聞社発行 著:里見弴

結論から言うと感想は「なんだかなあ」です。

羽左衛門傳説 について】

f:id:garadanikki:20141119133746j:plain敬愛する里見さんの著書なので、期待していたんだけど、小説じゃなかった。以前 里見さんの『道元禅師の話』を読みだしたものの「いいかな」と思った時と近い印象を受けたんだけど。。。まあ今回は、最後まで読んだけれど。
どちらも里見さんが依頼を受けて執筆した人物伝のようで、膨大な資料を読んだ末まとめていった苦労談のような記述もチラホラ挟まっています。著者がその人物に魅了されていく様子がわかるように書かれているのが特徴かな。その辺が学者が書く本と違うところ。それゆえ読み手の方も、作者と同じ気分になれないと読み進めないかも知れない。ズバリ。興味がわかない人物だったら降りるしかない、そんな本。
道元禅師の話』は、積読リストに入っちゃったけど、羽左衛門の方は、それなりに面白かった。

内容は、美貌で知られた 十五代目 市村羽左衛門 の、出生の秘密を探ぐるもの。羽左衛門の出自はずっと謎だったのが、この本がキッカケで「チャールズ・ルジャンドルと池田絲(いけだ いと)の間に生まれた私生児」だという説が定説になったんだそうです。
歌舞伎役者が、実はハーフだったというんだからセンセーショナルよね。

里見さんったら、調べていく内に父親のル・チャンドルに興味が広がっていったようで、羽左衛門の話というよりもル・チャンドルの話といってもいいくらいページが裂かれてる。この辺りも、枠に縛られない奔放な著者ならではと 微笑ましく感じた次第。里見さんの軽妙洒脱な文体を楽しめるだけでも、ラッキーな出会いの本でした。

【サン・フェリーペ号は来た について】

f:id:garadanikki:20141119133747j:plainサン・フェリーペ号というのは、太閤秀吉さんの時代に、土佐に漂着したガレオン船。その船の積荷や乗組員の扱いを巡って、バテレンとは何ぞや、南蛮人とは何ぞやという話になり、やがて、二十六聖人の殉教という悲惨な迫害の起因になってしまう。

左の写真は、長崎にある日本二十六聖人記念碑。
作者が、彫刻家・船越保武さんだということを偶然知っていたので、そこから興味がつながっていたわけ。

本作は、盲目の老漁師とその妹が浜辺で網の手入れをしているところから始まるのね。
とろとろと居眠りをしていた老人がふと「おう、ロドリゲス…」とつぶやく。ロドリゲスというのは、その老兄妹が若かりし頃、出会った難破船の乗組員で、彼らは国を超えて仲良くつきあうようになった朋友。老人が何十年も経った今になって「ロドリゲス」とつぶやいたのは、恐らく海のかなたでロドリゲスが死を迎えているんだろうということなのね。

「おお、いいぞ、なかなか面白くなりそうだぞ。」

出だし9ページに誘われて、話が老兄妹の若い頃 ( 本筋 ) に入っていきます。
ところがその先は、サン・フェリーペ号が漂着して、藩主の思惑、太閤秀吉との政治の話、キリスト教の会派の対立など、大人の事情・歴史的経緯が書かれているだけで、当のロドリゲスと老兄妹 ( 寅三とおもよ ) の話は影をひそめてしまう。
史実は曲げるわけにはいかにいだろうけど、小説としてはどうなんだろう。。。
最後の方に、ロドリゲスと寅三・おもよ兄弟の交流がチョコっと書かれているんだけど、その文を読むだけでは、どうしてこの三人が気持が深く結びついたのかが描かれていない。
出だしで期待しただけに、凄く残念な気持ちで最後のページになりました。

史実がからんだ小説って難しいよね。どうしても脱線出来なかったり、語っておかなければならないこともあるからね。今回は、珍しく「なんだかなあ」と批判めいたことを言ってしまったけれど、大原さんの作品もまた読んでみたい。(笑)もう「婉という女」の古書、発注しちゃったもの。