散歩の途中で立ち寄る “ あるところ ” で、その人に に会った。
彼は沢山の猫に囲まれ、地面に座っていた。 猫たちは食事の真っ最中。
彼は、
晴れの日も、雨の日も、寒くても、暑くても、何年も何年も、同じ時間、同じ場所で、猫にご飯をあげている。
このあたりの猫のことで、知らないことはないという。
風邪っぴきの猫には薬を与え、ふところ抱きして夜明かししたことも一度や二度ではないという。
そんな噂を聞いて、ワタシはずっと彼に会ってみたかったのだ。
猫を見て「可愛い~!」と近寄る人がいるが、野良猫はテンションの高い人間を嫌う。
折角の食事中そういう人たちの為、何度も中断させられた経験もあるのだろう、彼はワタシを迷惑げに見た。
ワタシは、初めての猫に近寄る要領で、数㎝ずつ少し少し彼ににじり寄る。
1時間ほどして。
ワタシは彼と並んで座っていた。
猫の話に花が咲き、話題は文学や仏教にも転じ、あっという間に時間が経った。
猫の愛称も違うから、ワタシが『モミ』と呼ぶ子が、彼にとっては『こかえで』だったり、
『ヨハンさん』が『ボス』だったりする。
猫は、いくつもの名前を持っていて応対してくれてたことに気づいた。
彼は、決して猫を呼ばない。
いつも黙々と食事の支度をしていると、猫の方から近寄ってくる。
時間までにやって来なかった猫がいても気にしない。次の日会えれば、それでいいと思っている。
ワタシなら4~5日会えない猫なら「どうしてた~?」と、駆け寄ってしまうけど、
彼は「ああ~、○○さん、おはよう」と、挨拶するだけ。
沢山の猫の死にも彼は立ち会ったし、それより多くの人間の迷惑にも晒されてきた。
誹謗中傷や暴力をふるわれたこともある。
しかし。そんな話をしてくれる時、彼は決して、感傷的にも、感情的にもならない。
信じられないような不届者の話も、悲しい別れの話も、腹をかかえる面白い出来事も、
彼は、達観した様子で静かに語る。
彼は仙人のようでもあり。。。いや、やはり彼は『伝説の大将』である。