題 名 : ナオミ と カナコ
著 者 : 奥田英朗
初版本 : 幻冬舎
発 行 : 2014年11月10日
読了日 : 2015年02月23日
カナコ と ナオミを読了。ひさしぶりの新刊。
MOURI もワタシも本好きだけれど、各々趣味があって。
2人の趣味の共通項にある作家は、奥田英朗、沢木耕太郎、永倉万治、池井戸潤といったところ。。
MOURI がこの本を読んでいる時に何回は「うう~ おっかね~」と言っていたっけ。
なるほど、わかるわかる。
この本の感想「おっかね~」で決まり。
望まない職場で憂鬱な日々を送るOLの直美。夫の暴力に耐える専業主婦の加奈子。
親友の加奈子が夫からDVを受けていることを知った直美はいう。
「いっそ、二人で殺そうか。あんたの旦那」
直美の父親も母親に暴力をふるう人間だったから、DVはトラウマだったのだ。
直美だって最初から「殺す」なんて言ってるわけじゃなく、「別れな」と言っていた。
加奈子は「もうやらないって反省してるから」と言う。
DVを受けた女性がよく言うセリフみたいね、それって。
暴力をふるう男が治るわけない。
しだいにエスカレートする夫に、加奈子ももう駄目かなと思うようになる。
それでもなかなか決心できない加奈子に直美が望みは何と聞く。加奈子はいう。
「ちゃんと眠れて、おいしい水が飲めればいい」
・・・なんて、重い話なんだろう。
DV男の殺害を決心するキッカケになったのは、中国人の女性経営者 朱美の言葉だったんだと思う。
中国人の朱美の言葉が直美の心を激しく揺さぶる。。。
我慢して結婚生活を続けるなんてことは絶対にありえません。」
直美「もしも、旦那さんが奥さんに暴力をふるう人だったら、上海ではどうなりますか?」
朱美「仕返しされます。まず無事では済みません」
直美「奥さんが仕返しするんですか?」
朱美「自分で出来なければ、親兄弟が代わりに仕返しします。
たとえば、もしわたしが旦那さんに暴力を振るわれて、自分の力では対抗できなかったら、
いちばん上の兄がカナダから駆けつけて、やっつけるのことですね」
直美「わざわざカナダから?」
朱美「当たり前のことです。こういうときに助けなくて、とうして家族ですか。
家族がいなければ近くの友だちが助けます。それが友情です。ちがいますか」
(中略)
打ち明けついでに、仲のいい友人が暴力被害を受けていて、悩んでいることを話した。
このとき朱美が表情を険しくし「殺しなさい」と言い放った。
やがて、直美も加奈子も、DV夫殺しを真剣に考えるようになる。
しかし彼女らは「殺す」という言葉は避けたくて、「排除」と言い換えるようになり、
更には、夫殺しをクリアランス計画と呼ぶようになる。
直美と加奈子は、DV夫を殺害後、山中に埋めることを企てる。
でもって。
埋める場所のロケハンをして、あらかじめ土を掘っておこうということで、
2人で出かけるシーンが。。。マックスのおっかなさなのである。
加奈子なんか、おにぎり作っちゃって。。。まるでピクニック
2人で芝生に座っておにぎりと唐揚げとポテトサラダを食べて。。
「空気が澄んでるね。遠足みたい」なんぞと言い、
「いい場所、見つかるといいね」ときた。
いい場所というのは、殺害した男を埋める場所のことなんですよ。
これを「おっかねぇ~」といわずになんという?
奥田英朗、常々力のある作家だと思っているが、
今回も先生の筆は、おっかねぇほどに冴えわたっています。
日頃、シミやヤケのある旧仮名のボロボロ古書ばかりだから。
新刊て、すごく 綺麗に思う。