Garadanikki

日々のことつれづれ Marcoのがらくた日記

劇団まるおはな  「癒し処 川の時間」 にて

 

素晴らしい空間で、素晴らしい演劇を観ました。

久々 まるおはなの作品です。以下は昨日見た様子を思い起こして書いたもの。

実際のお話と違っていたりすることがあるかも知れず、

これから見る方には、お邪魔な内容になっているかも知れずですが、

とても感動したので備忘録とさせてもらうことにしました。

 

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川の見える一室に老人が入ってくる。老人はデッキにつづく硝子戸を開け、猫を呼ぶ。

ふと、老人の目が室内におよぶ、何か探している様子。

「・・・いないのか」

 

 

若い男が入ってくる。

老人との会話で、彼は毎日この時間にやってきて川を眺めていることがわかる。

 

若い女が入ってくる。

彼女は先客 ( ? ) の男に軽く会釈をすると、ショールを頭からかぶり、柱に倚りかかり川を眺める。

 

そしてもう1人、中年女性が入ってくる。。。。

 

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どうやらここは、老人が営む「お休み処」のようである。

みんなの目当ては、窓からの景色。

眼下を流れる川と、時折通る電車と、遠くに高速道路。

それらの物に目をはせながら、想い想いの時を過ごしているようだ。

 

名のり合うことはないが、老人とのやりとりから、若い男が仁、若い女が直、中年女性がかすみ

という名であることは互いに認知している。

 

普段 触れ合うことのない客たちが何故か今日は話をしている。

直 ( 若い女 ) がタロット占いにこっていることがわかり、かすみが占ってもらうことに。。。。

かすみがマンネリ化した生活を送っているのは、占わずとも見たからにわかる。そんなかすみに直は「出会い」をほのめかし「身なりに気をつかうように」と、占いともアドバイスともつかぬことを言う。

 

 

声の大きな闖入者が。

男は行方不明の伯父を探し続けていたのだが、その伯父が見つかったと昂奮してしゃべる。

彼の伯父とは、癒し処の店主 篠田老人のことだった。

 

ところが篠田老人は皆の前から逃走。老人の留守を預かる形となった直と仁は、吾郎から事情を聞くことになる。

吾郎曰く、元来やんちゃで明るい性格の伯父は、あっちこっちに女がいるような職人だったという。

そんな伯父が姿を消したのは、妻を亡くした直後。自分は伯父の帰りを待ち、稲荷ずし屋を守っているのとのこと。

 

「なんか全然違う」

直たちは、自分が知っている老人と、甥が語る伯父とにギャップを感じた。

吾郎のお下劣で無遠慮な態度も肌に合わない。

と。

そこにセクシー系の衣装に着替えたかすみが戻ってきた。

かすみは吾郎が出会いの相手と思い猛アタックを開始する。

状況を回避すべく直は「あの人はセクシー系じゃなくて、清楚な和服女性が好み」と告げ、かすみを追い払う。

 

篠田老人が戻ってきた。彼の様子がおかしい。

亡霊を追い求める様子の彼を見て、直たちはある計画を実施するのであった。

 

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出演者は5人。観客は40人くらいかしら。。。

 

今回、篠田老人を演じる恒吉雄一さんと、主催の山崎ふらさんとは旧知の仲。

ふらさんが高校生の頃から、既に恒吉さんは舞台に立っていて、当時はまだ客と役者の関係だった。

やがて共通の知人を通してプライベートの交流は続くものの、一緒に仕事をするのは今回が初めて。

 

恒吉さんは、大きな舞台で、新劇然とした演技をしてきた人だから、今回の舞台は勝手が違う。

さぞ苦心をしたことだろう。

一方、大先輩にあたる恒吉さんを演出するふらさんだって、やりにくいこともあっただろう。

 

でも2人の間に、いや5人のうちに見事な化学変化が起こった

 

演技の質も異なる50歳以上も年の開きがある男女が、素晴らしいハーモニーを奏でる。

ふらさんの本の確かさと、演出力が功を奏したのは言うまでもないが、

この場所が彼らにパワーを与えたことも間違いないだろう。

 

ふらさんは、この場所から見える川を「三途の川」にたとえた。

そして演者たちは、ふらさんの描く、「逝く者」を送る人々の心を、キチンとつかまえたのだろう。

やがて彼らは、やるせなくしんどい日常から、どこかワクワクする世界へ動き出す。

 

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f:id:garadanikki:20150114111037j:plain 他人と距離をおきながら静かに暮らしてきた仁 ( 堀井政宏 ) が、「付き合っちゃいましょうか」と、デッキへの硝子戸を開けて叫ぶ。普段はしゃいだことのない男が声を裏返しながら海、ならぬ川に向かって叫ぶのだ。

対して「ありえないから~」と、叫ぶ直 ( 鶴愛佳 ) も、これまた可愛い。

この家の、このロケーションを使った心ニクい演出。

堀井さん、反応の的確な素敵な役者さんだ。

 

f:id:garadanikki:20150114111037j:plain 篠田老人 ( 恒吉雄一 ) からは、人に対する暖かさが随所ににじみ出てみえた。

「念い入れ演じる」のではなく、直たちや甥っ子の前にすっと立つだけで愛情が伝わってくる。何もせずただそこに立っているだけで、相手を愛おしく思う気配が充分に相手に伝わる。だからこそ、直たちの閉ざされた心も、自然と開いたのだろうと思う。

 

f:id:garadanikki:20150114111037j:plain 甥の吾郎 ( 尾川止則 ) は、うざったくお下劣な役どころを、最後までそのテンションを落すことなく居続けたのが凄い。彼の伯父ちゃんへの情愛が、直たちに伝わったから、最初は気が合わないと言われた直たちも、一肌脱ぐ気持ちになったのだと思う。

 

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演者のスペースは、観客の前のほんの1間ほどのスペース。

※ 芝居がはねてからの一枚。
    当館撮影可とのことだったので撮らせていただきました。

 

「しんどい毎日に疲れはてた人々は老いも若きもただただ沈黙して川を眺める・・・。」

ふらさんの意図する世界は、そんなところから始まる。

しかし、私たち観客は、いつしか演者と同化して川を眺めていることに気づく。

 

・・・・なんだ。川を眺めるというのは、こういうことなのか。

 

劇団まるおはな

劇団まるおはな は、山崎ふらさんが主宰する劇団。劇団とはいっても長いこと団員はふらさんのみだったりもした。ふらさんが本を書いて、その都度共演者を集い、芝居を作ってきた。一生顕命お金をためて製作費を作り、演出をやってもらった時機もあったようだが、最近はふらさんが、作・演出・出演と3足 (笑) の草鞋を履いている。

 

今回の公演は、30日までです。もし興味がありましたら、是非 まるおはなまで問い合わせてみて下さい。

劇団まるおはな 水辺のデッサン