徳冨蘆花の『寄生木 ( やどりぎ ) 』という小説を読んでいます。
図書館から借りた「蘆花全集 第八巻」で。
面白いです。流石、徳冨蘆花の腕は凄い、どんどん惹きつけられていきます。
≪ 蘆花の腕 ≫ といいましたが、半分アタリで半分ハズレです。
実はこの本には、原作者がいたんです。
「小説寄生木」は、徳冨蘆花が、青年将校--小笠原善平の日記をもとに書いた小説なんです。
当初、蘆花は善平から「何か回想録のようなものを書くから、それを基礎として一篇の小説を書いて欲しい」
と請われたそうです。
善平の日記には、父親が村の大物と衝突し公金横領の嫌疑をかけられ、6年間無実の罪で投獄された話、乃木将軍を頼って書生にして貰い、その後もずっとお世話になっていた話、恋人勝子との結婚が、自分の成績が落ちたことで破談になった話など書き連ねられていきます。
善平は、蘆花に日記を書いては送り、書いては送りしていきます。
ところが蘆花は、なるべく加筆をしない形で世に出す方法を選んだのです。
蘆花は、序文でこう書いています。
「小説寄生木は良平 ( 善平のこと ) の遺嘱によって、稿本寄生木を著者が
書き改めたものである。
(中略)
然しながら著者はこれを種として一篇の所謂小説を作るよりも、
良平その人の書き流した回想記中に捨てがたい自然の意匠を認めた。
終いに一個の製作品としてよりも、寧ろ多少の按配を加えた原稿のままに
提供するの方法を選んだ。
(中略)
出来る限り良平をして自ら描き自ら語らしめた。
金も墨も何ものも著者は塗らないつものである。」
センセーショナルな本なんですよ。
善平の望みは、自分がお世話になった乃木将軍を後世に語ることだったんです。
それには結果的に、生家の恥、自分の至らなさを、さらけ出さなければならない。
彼は28歳で自死するんですが、この本には16歳から28歳までを駆け抜けた彼の全てがつまっています。
で。。。。
4週間かかっても読み終わらない。
読むのは遅い方じゃないんですが、何冊も併読している上、このボリュームです。。。 ( 一冊全部、寄生木です )
面白いし、本、持っていてもいいし。
絶版本ですから、色々調べてみると、ちょいとめんどい。
「寄生木」 1956年 ( 昭和31年 ) 岩波文庫
Amazon で、628円から4,300円まで。
この差は、古書の状態とか、初版かどうかであったりする。
・・・そうか文庫で4,300円なら、もっと古い単行本だとどうなる?
「小説寄生木」 1921年 ( 大正10年 ) 警醒社
すごく状態は良さそうだけど。。。17,000円か。
「小説寄生木」 1921年 ( 大正10年 ) 警醒社
うお~ 150,000円。
日本の古本屋には、明治42年のさっきの初版本が150,000円?
よほどの美本なんでしょうね。
ならば全集は?
「蘆花全集 第8巻 小説寄生木」 1929年 ( 昭和4年 ) 新潮社内蘆花全集刊行会
ああこれが今読んでる本に一番近いか。15,000円。日本の古本屋から。
えっ? これ全集全巻じゃなく、一冊の値段?
「蘆花全集」 1929年~1930年 ( 昭和4年~5年 ) 蘆花全集刊行会
こっちのは、20巻揃いで、18,000円也。