高見順さんの本を読み始めました。
「故旧忘れ得べき」 復刻本。
この本、函の中に。。。
函が。。。
二重函になっている。
こんな作りの本、初めて。
さて、内容の方は
小関という男が、学校 ( 東大らしい ) を卒業して、職につくものの、
妻と母とを養うのにカツカツの生活で。。。
学生時代から金がないくせに見栄坊のところがある小関は、
「釣はいらない」と言った後に、あの十銭があれば文庫が買えたのに、と後悔するような性格。
小関の学生時代の友だちが恰好つけて暮らす様子を見れば、背伸びをしたり、落ち込んだり。。。
カフェの女にうつつを抜かしす友人の様子が可笑しいけれど、
五分の二を過ぎたあたりでもまだ大きな展開はない。
中途の本だから、感想をのべる段階にはないけれど、
とほほな小関の思い出話のひとつひとつに「情けないやっちゃなあ」とクスッとしてしまう。
昭和初期の学生たちの様子が面白い本です。
前半、特に印象的だったのが、この部分。
前のものが一人一人減って次第に彼の番が迫ってくるのを、一列縦隊の中で震えながら見ていた彼は前後の子供のように、しっかりしっかりと味方を声援するどころか、味方が負けてくれればいい、そうすれば自分の番で負けが更にひどくなろうと初めから負けだから咎められもしないだろうと、そう考えて、青ざめた唇を引き釣らしていた。
へぇ、なるほど。
駆けっこだけは得意だったワタシは、運動会が楽しみで、徒競走やリレーの順番が廻ってくるのがワクワクしたものです。
でも、小関のような少年にとっては苦痛な行事。「味方が負けてくれれば、自分の番で追い越されて皆に責められることはない」と考えるのかと目から鱗。
「故旧忘れ得べき」
人の虚栄心や弱さが正直に描かれていて面白い。
後半、物語がどのように展開していくのか、楽しみな一冊です。