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garadanikki

日々のことつれづれ 駄目駄目さんのガラクタ日記

一之輔さんの独演会 鮑のし

 

映画館に行くと《予告編を見てそれも見たくなり、また映画館に行く》という連鎖になりますが、

落語会もしかり。去年の落語会で貰ったチラシに、贔屓の噺家の独演会があったりしたら堪りません。

会場でその人のチケット販売などやっていた日には、即買いになってしまいます。

お蔭で去年から今年にかけて、毎月一度は落語を聞きにいっています。

今日は、春風亭一之輔さんの独演会。

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白酒さんと並んで、我が家で今一番好きな落語家さんです。

一之輔さんは、2001年春風亭一朝に入門。

3年半で二つ目に、11年目に21人抜きの抜擢で真打に昇進した、押しも押されぬ人気落語家です。

初天神に出てくるクソガキ と大人のやりとりをやらせたら天下一品。

まくらでもご自身のお子さんのエピソードを面白く展開して笑わせてくれます。

 

今回のまくらも、御当地渋谷から近いA大学の初等部のお子たちのお話。

高座を頼まれて行ったの先がカトリック系の学校だと、やりにくいという話で大笑いをしました。

「チャペルっていうんですか? 大抵そういうところでやるんですが、、 

 よくやるのはお寺が多いんですけど、お寺はやりやすい。

 本堂の天井は色々ぶら下がっていて、仏像もこの辺 ( 頭のあたり ) キラキラと

 おめでたい感じでしょう。

 だけどチャペルはほら、十字架にオジサンがこーんな感じで手を広げてて、

 頭には茨が巻き付いてて、オジサンに『いいからおやり』と言われても、

 なんかねぇ、やっぱり十字架の前というのはやりにくい。。。」

 

その光景、想像しただけで、違う意味で笑えてしまう。

もうひとつA大学初等部の高座の時のエピソード

A大学初等部の、進行の世話役をいいつかった生徒の中に、先だってテレビの落語学校で生徒になった子を見つけた。

「おう、元気でやってたかい?」

「はい」

「お父さんは相変わらず酒のんでるかい?」

「いいえ、そうでもなく頑張っております」

「そうか、あのあと稽古事はやったりしてるのか?」

「はい、踊をやっています」

「そうか。。。。あのさ、俺、覚えてる?」

「あ、はい、あのー。はい」生徒の目は宙に浮いてる

( こんちくしょー、あんなに丁寧に教せーてやったのに忘れやがったか ) 

 

そう思ったんだそうです。最初に自己紹介がないのがいけなかった。

公演が終わってからの打ち上げで、世話役の子や先生たちの紹介があったんですが、なんとその子は五代目市川團子君だった。

そう中車さん、香川照之さんの息子さんだもの、踊の稽古をしているっていったって、

もはやプロじゃないか。

お父さんは相変わらず酒飲みか? と聞いたら変な顔して「頑張っております」というが、そりゃそうだ、香川照之さんだもの。

一之輔さんは、落語学校に来ていた子と團子君を見間違っていただけだったんです。

 

・・・と、こう書いても、その場で一之輔さんの話でないから、ちっとも面白くないでしょうがね。m(__)m

とにかく、子供の仕草を真似させたらウマいんです一之輔師匠は。

観察力が半端ないのです。

 

そんな一之輔師匠の弟子 ( 先日も開口一番をつとめてました ) のきいちさんが、

「桃太郎」でこまっしゃくれた息子を好演します。

口跡もいいですね。堂々としているし。

一之輔さんだったら、こうやるだろうという、口調も生き写し。

これが弟子というものなんですね。

こうやって師匠の口跡を真似ていく内に独自の個性が生み出されていくんでしょう。

前座さん、二つ目さんがこれからどういう風に変っていくのか、それを見せて貰えるのも落語会に通う楽しみのひとつです。

 

さて。

今回一之輔さんは三本の噺を高座にかけました。

最初は「鮑のし」、次に「花見の仇討ち」仲入りをはさんで「百年目」でした。

 

【鮑のし】 

ぐうたらの亭主は、今日も仕事を怠けて稼ぎがない。

腹を減らして家に帰るものの、かみさんは銭もなければ米もないという。

「何か食わしてくれ」という亭主に、

「おまんまが食べたかったら、〇〇さんのところに行って、五十銭借りてきな。

 あたしが貸してくれって言ったと言うんだよ」

言われるまま亭主が〇〇に行くと、言う通り五十銭借りることが出来る。

信用のない亭主と違って、しっかり者の女房に貸すのなら大丈夫だとみんなわかっていたからだ。

 

五十銭を女房に渡すと、今後はこれで尾頭付きの魚を買ってこいという。

何でも大家さんが娘の婿取りをしたので、そのお祝いに使うという。

「大家さんは堅い人、こちらが礼をつくせば祝い返しも二倍になって戻ってくる」というのが女房の見立てだった。

再び女房のいいつけ通り魚屋に向かうが、尾頭付きの鯛は高くて手が出ない。

「大家は鮑が好きだから、よし、10銭まけてやろう」と魚屋に鮑をすすめられ買って帰る。

女房は渋い顔をしながらも、亭主に口上を伝授。

「こんにちはいいお日和でございます。

うけたまわりますれば、この度はお嬢様が婿さまを迎えられるそうで、おめでとうございます。

いずれ長屋からはつなぎ ( 長屋全員からの祝儀 ) が参りますけれど、これはほか ( 個人的な祝い ) でございます。

どうぞお納めくださいませ。」

 

この口上、何回言わしてもどうしても覚えられない。

 

案の定、大家の前でも四苦八苦して口上らしきものを言い、祝いの鮑を差し出すが、それに大家が立腹する。

「こんなもの、持って帰っておくれ。これは〇〇 ( 女房のこと ) の知恵ともおもえない。鮑は『磯のあわびの片思い』と縁起の悪いものなんだ」と突っ返される。

 

亭主がしょげかえって歩いていると、長屋の吉兵衛に出くわす。

これこれ事情を話すと吉兵衛は、鮑のどこが悪いんだと、言う。

「大家んとこにもう一度行ってな、こう言うんだ『おいおい、鮑のどこが縁起悪いってんだ。おめえんとこの祝い物には、のしが付いてくるだろう。お前はなにか? のしを剥がして返すのか? あわびってものは、紀州鳥羽浦で海女が採るんだ。鮑なんてものは女の肌にしかくっつかないんだぞ。その鮑を鮑のしにするには仲のいい夫婦が一晩かかって作らなきゃできねえんだ。それを受けとらねえとは。ちきしょー。一円じゃ安い。五円寄こせ』って尻をまくってこい」

「尻はまくれねぇ」

「どうして」

「今日はふんどししてねえから」

 

・・・大家の家に引き返し、勢いよく教わった通りの口上を言う亭主だが、、

「一円じゃ安いや、五円よこせ五円。いんや十円にまけてやるっと、ここで尻をまくるとこだけど、、、事情があってまくらねえ」

どうも閉まりのない口上となりました。チャンチャン

 

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なるほどね。

一辺、話を聞いただけでは、「おめえはのしをひっべ返して返すのかい」という台詞の意味が理解できなかった。

それはのしの真中のあの茶色い紙みたいなものが鮑だったってことを知らなかったから。

どういう意味かが分かった上で、もう一度思い返してみたら、

「ああ、なるほど」と思うことがよくあります。

やっぱりねぇ、モノを知らないということは困ったものですよね。

 

続く⇒