Garadanikki

日々のことつれづれ Marcoのがらくた日記

おとうさんの ちず 著:ユリ・シュルヴィッツ

「ディクシットのカードの美しさに魅せられて購入して、、、

ボードゲームをやるんじゃなく、ボードに貼って部屋に飾りました」

 

そんな話をしたら、マミーさんが素敵な絵本を紹介してくれました。

その一冊がこちら。

 

「おとうさんの ちず」

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「地図好きなMarcoさんが好きかも」

その通りでした。マミーさん、ありがとう❤

 

地図を見ていると、ワクワクする。

そんな気持ちが一杯つまった、素晴らしい絵本でした。

 

作者のユリ・シュルヴィッツさんは1935年、ポーランドのワルシャワ生まれ。

4歳で第二次世界大戦をむかえワルシャワを離れ、ソ連、トルキスタン、パリ、イスラエルに移った後、

1959年、アメリカに渡ります。

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この本は戦火に焼かれ、両親とトルキスタン ( 今のカザフスタン ) に移り住んだ時の話だそうです。ユリさん4歳か5歳の頃。食べる物にも事欠く中、父親が食糧を調達に市場に行き、地図を買ってきてしまいます。食べ物を買うためのお金でです。

その一節がこちら 

「パンは?」おかあさんが きいた。

「ちずを かったんだよ」おとうさんは こたえた。

ぼくと おかあさんが だまっていると、おとうさんは いいわけを するように いった。

「あの おかねじゃあ、ほんの ちいさな パンしか かえない。

 おなかを だますことさえ できそうになかったよ」

「ゆうごはんは ぬきね。ちずは たべられないもの」

おかあさんの こえは つらそうだった。

 

ユリ少年はひもじいおなかをかかえて寝床に入ります。

同室の夫婦が夕食をとっています。

彼らの食べる音や、舌鼓の音が聞こえないように、少年はあたまからすっぽり蒲団を被って

聞こえないようにしました。

 

翌日、父親は壁に地図を貼ります。

少年は、飽きずに地図を眺めたり、細かいところに魅入ったりします。

地図にある不思議な名前は、少年をとりこにしました。

 

フクオカ タカオカ オムスク、

フクヤマ ナガヤマ トムスク、

オカザキ ミヤザキ ビンスム、

ペンシルバニア トランシルバニア ミンスク!!!

 

魔法の呪文のように唱えました。

すると、狭い部屋にいても、心は遠くに飛んでいけるのでした。

 

呪文のように。いいですねぇ、わかるわかる❤

でも、ふくおか、ふくやま、おかざきって、日本の地名が多いのは、

もしかして訳者の方が書いた ( 変えた ) のかしら。

 

私はこの部分を読んで、ユーミンの歌を思い出しました。

「モリオカというその響きが~ロシア語みたいだった」

なんという歌だったなぁ。

歌詞を聞いた瞬間、ユーミンの感性の豊かさに感動しユーミンの歌をもっと好きになりました。

言葉の持つ響きって面白い 

何もない土の家の暗い部屋で、いつまでも地図を見て空想にふけっている少年の、

空想の翼がどんどん広がっていく、そんな雰囲気や彼の気持ちがよく描かれていました。

水彩画も素晴らしい。心を打たれます。

紹介したいのは山々ですがそれはタブーでしょうから、

どうぞ図書館で見てみてください。どうぞAmazonで買ってください(笑)

 

おとうさんのちず

おとうさんのちず

 

 

でも。一枚だけ。。。

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絵本の後半は、少年が色々な国に飛んでいって、

それが砂漠だったり、摩天楼だったり、アフリカのジャングルだったり、雪山に登ったりするんだけど、

世界各地の景色と、そこを楽しそうに旅する少年の姿が描かれています。

それはそれは美しい風景で、夢のある色使い。

前半の戦争や疎開の暮しの色との対比が凄いのです。

 

でも。ちょっと思った。

当時の、ワルシャワ生まれの4歳だったユリ少年は、まだ世界の景色は知らないんじゃないかな。

今でこそ私達は、テレビや本やインターネットで、行ったこともない遠い国の様子を知っています。

でも当時は、摩天楼も、アフリカのジャングルも想像もつかない世界だったと思うのです。

その点にちょっと違和感がなくはないんですが考えないことにします。

 

作者もこう語っています。

「地図はとっくになくなっているので、この絵本では、記憶をたどって、コラージュ、

 ペンとインク、水彩を使って再現している」

もちろん後半の世界各地の絵は、作者が大人になってから見知ったものが盛り込まれているのでしょう。

夢のような絵本を作る上では、後付けも仕方がないのかも知れません。

 

そんなワケで。。。。

仮にもしこの絵本を私が子供に ( いませんが ) 読み聞かせするとしたらどうするか。

4~5歳の子には無理かも知らんが、

「今のあなたたちと違って、当時の子は摩天楼がどんなだかも、本当は知らない、、、

 情報がないと全くわからないということもあるんだよ。

 だからこそ、地名を唱えて想像の翼を大きく拡げたの。」

そんなことも、ついでに言ってしまうかも知れません。

 

いや~つくづく、めんどくさい親だと思われるだろうが。。。