闇夜に遠くで高らかな唸り声が続いています。
喧嘩か?
普通ならオス猫同士の喧嘩でしょうが、違います。
ここいらのにゃんこ、特に男の子は意気地がなくて喧嘩なんて威勢が良い真似は出来ないの。
それだから困る。
決着がつかず、長引くのです。
圧倒的に強いオスがいて、弱い方が逃げ出せば猫の喧嘩は数分で終わります。
でも、強いボス猫もいないし、喧嘩慣れした子はひとりもいないんです。
じゃどうなるか。
たいていはこんな風に目もあわさずに、お互いとんでもない方向を見ながら
「にゃおおおおーーーー」「ふんにゃーーーー」と叫ぶばかり。
おお、演目が始まった
私たちはこれを「演目」と呼んでします。
歌舞伎の、あの、見得をきり「問われて名乗るもおこがましいが~」とかなんとか、セリフのように。
ひとりが「にゃおおおおおーーー」と始めると、もうひとりは聞いていて。
それが終わると、もう片方が「ぬおーーーー」とお返し。
して本日の演目は何? 仮名手本忠臣蔵 七段目かい?
こりゃ長くなるわい。
ごめんごめん、気が散ったか。
最初からやり直しって、それだけは勘弁してください。
・・・と、うん?
グレゴリーのお口につけてるのは鳥さんの羽だね。
おう? しとめて食べちゃったのかい?
そうかそうか。
それを見てロミ (手前の子) がやってきたワケか。
ロミ「僕だって強いんだから~。
鳥の一匹二匹、ちゃちゃっと捕まえられるんだーーーー」
ロミ、そういうセリフは獲物をしとめてから言いなさい。
男の子は不言実行がよろしいのだ。