ウクレレ演奏家の森拓治先生が、その昔、民藝の舞台に出演したというお話を聞きました。
どのくらい昔の話かというと、1967年ですって。 45年も前の話です。
先生が懐かしそうに、その頃の話をされていた…と、MOURIから聞きました。
出演のきっかけは、民藝に先生の友達がいて、『次郎』という、いいとこのボンで、ギターが弾ける役ができる人を探していて「あっ、拓ちゃんで、いいんじゃない?」という話になったとか、ならなかったとか…。
森先生、濃い顔をしてらっしゃるから、若い頃、それはそれは目立ったことと思います。
間違いなく美青年だったでしょう。
しかしいくらなんでもずぶの素人が、民藝の舞台に出られるものなんでしょうか。
で。
探しましたよ、上演台本。
舞台・テレビ・映画の古い資料(台本、パンフ等)なら任せろという、神保町の矢口書店にあります。
45年も前の台本なのに、保存状態すこぶる良好。
滝沢修、細川ちか子、新珠三千代、伊藤孝雄、芦田伸介、吉行和子と並ぶ中に、森拓治の名前が…。
凄い! 今は、懐かしい手書きのガリ版刷です。
【内容】
大手自動車会社の経営者である父(滝沢修)と母(細川ちか子)の誕生日には、毎年家族が集うことになっている。
と冒頭で、長女(新珠三千代)が独白を始める。
長女の話では「去年までは、祖父(芦田伸介)と祖母、自分と夫、2人の弟(伊藤孝雄、森拓治)に、上の弟の恋人(吉行和子)と、主役の両親の9人で賑やかな宴だったのに、今年は祖母が亡くなり、自分は夫と離婚するし、弟も彼女と別れてしまったので、随分とさびしい宴になるだろう」と語る。
長男(伊藤孝雄)は学生時代、安保運動に参加したことが転就の妨げになり、結局父の会社に入社する。
父も若い頃、反資本主義運動に身を投じ、親の会社に拾われるという、息子と同じ経歴を持つ。物語は、父親の青年時代(回想シーン)を長男が演じる形で、父子が抱える挫折と苦悩を描いていく。
森先生が演じる次男は、兄(伊藤)のように苦悩することもない、ボンボン気質の未成年。
ギターを弾いて、舞台に花を添えるマスコット的な役どころ。
先生にピッタリの役です。
こういうキャラクターは、劇団員に見当たらないというのも、うなづけます。
見たかったなぁ、先生の舞台。
しかしいくら演劇好でも、その頃 私は9歳です。リアルタイムで見られるはずもなし。
こうして台本読んで、今の先生の風貌から45年前を想像して、本の前に立たせてみるしかないのです。