garadanikki

日々のことつれづれ 駄目駄目さんのガラクタ日記

「キャロリング」 著:有川浩

※ 当コンテンツは、これから読もうという方の楽しみを半減する恐れもございます。
所謂ネタバレもありということでご容赦のほどを。。。

 

 

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有川浩さんのファンです。
「新刊が出てたよ」とMOURI が買ってきてくれたのは、

キャロリング』という本。

一日で読了。

 

有川さんの本は読みやすい。普段読んでいる明治・大正・昭和初期の文豪の作品と違って、現代口調だからもあるが、有川さんの息継ぎと相性がいいからだと思います。

 

彼女の作品はいつもハートフルで、やさぐれた心を癒してくれます。

心温まるエピソードがいくつも盛り込まれているから。。。

 

 

↑ それにしても、これから読もうっていう人に、こういう帯は如何なもんでございましょうか。登場人物を想像しながら読みたいのに、イメージ植え付けられちゃうのはね、楽しみ激減。

悔しいから本のあらすじ、NHKのHPから寸借しちまおう。

大和俊介が勤める会社のクリスマス廃業が決まった。会社に併設された学童保育所も閉鎖され、そこで働く俊介の元恋人・柊子は新潟に帰ることにする。学童保育所に通う小学生の航平は、離婚目前の両親を何とかしたいと、柊子に頼んで別居中の父が働く横浜の整骨院に一緒に行くが、そこで借金取りのチンピラに遭遇する。元恋人たち、崩壊寸前の家族、訳ありのチンピラたちが絡んだ奇跡の物語が動き始めた。

 

俊介と柊子以外にも、会社の面々や、横浜整骨院の人々や、借金取りのチンピラどもなど、愛すべき個性的な人達が沢山出てくるんだけど、何と言っても俊介が柊子に想いを寄せる場面の筆が光る。

 

2人の間柄をざっくり言うと、

大和俊介の方は、まっすぐな性格の好青年なんだけど、実は父親の暴力とそれを甘んじる母親との問題でトラウマを抱えて生きてきたのね。一方柊子は、温かい家庭で育ってきた子で、俊介が自分を両親に紹介しない気持ちがイマイチわからなかったりする。

 

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そんな2人が付き合うキッカケになったのは、コルネ。

 

俊介が勤める子供服メーカーに、柊子がデザイナーとして入社。当初はぎこちない関係だったが、大和が皆へのお土産にと、人気店のコルネを大量に買って帰ってきたのだが、会社に残っていたのは柊子ひとり。

「本日中にお召し上がりください」というコルネを前にして、2人は…。

 

その時の文章がこれ。

四人に十個は多過ぎるかなと思わなくもなかったが、べんさんはケーキなら一人で三個は食う。ケーキよりは小ぶりなので余裕だろう。夕方近くに事務所に帰ると、柊子が一人でスケッチブックを広げていた。デザイン画を描いているようだ。俊介に気づいて「お帰りなさい」と手を止める。
「ベンさんは?」
「今日は早退です」
予想外の答えに思わず「えっ」と声が漏れた。
「歯医者さんなんですって」
何でよりにもよって今日に限って、と内心でベンさんを詰るがどうしようもない。
「どうかしました?」
「いや、あの……」
説明に困って提げていたコルネの紙袋を柊子に突き出す。
「今日、たまたま近くに寄ったから」
柊子はわあっと声を上げた。
「ベンさんと話してたやつだ!」
「ベンさん間が悪いよな。じゃあ社長と三人で……」
するともう一つ計算外が来た。
「社長も打合せに出て直帰です」
こうなってくると間が悪いのはむしろ自分だ。思わず背中が猫背になる。
「……二人だと多過ぎたかも」
気まずく頭を掻くと、柊子も紙袋の中を覗いて「わぁ、たくさん」と呟いた。
「あ、でも日保ちするならラップして冷蔵庫に…」
「今日中って言われた」
退路を断たれて柊子もしゅんとしてしまう。だが、すぐにテンションを上げた。
「でもわたし、このサイズだったらけっこう食べちゃうかも! お茶淹れてきますね! 」
まだ打ち解けていない新人女性と差し向かいでお茶、しかも茶請けはあからさまに空振りした洋菓子が山盛り。一体何の罰ゲームかというシチュエーションだ。
柊子は濃厚生クリームを一つ食べ、ストロベリーとチョコレートを食べ、更にクリームチーズに手を伸ばそうかどうか逡巡している。俊介のほうはほとんど義務感で濃厚生クリームと抹茶の二つをたべきり、既に胸焼け気味だ。
「もういいよ、無理しなくて。買いすぎた」
「チーズ系好きなんだけどな……あっ、そうだ」
柊子はクリームチーズのコルネを半分に割り、片方を俊介に差し出した。
「半分引受けてください、そしてら食べられます」
気を遣ってむりやり詰め込もうとしているのかと思ったら、食べたいことは食べたいらしい。
救われた気分が背中を押して、差し出された半分を引き受けた。
「ああ悔しい、あと四つか」
柊子が紙袋の中に残ったコルネを睨む。濃厚生クリームが二つとカスタードとプラリネだ。
「いいよ。冷蔵庫にしまって明日やばくなってたら捨てよう」
「いや、もったいないです」
「そんな高くなかったし」
お土産を捨てる罪悪感をフォローしたつもりだったが、柊子は首を横に振った。
「大和さんの気持ちがもったいないです。せっかく並んでくれたのに」
おもいがけない言葉に思わず目をしばたたいた。
「ガイドブックに一時間待ちって書いてありました」
「いや、今日はそこまで……二十分くらいしか」
「せっかちな大和さんが二十分も並んでくれたのに」
短い間に性分まで見抜かれている。おっとりしているようで、しっかり周りのことは見ているらしい。(中略)
いい子だな、と思った。もったいないという言葉が物ではなく相手の気持ちにかかる。俊介の辞書にはない文法だった。

 

「俊介の辞書にはない文法」って、面白い表現だよね。

でも自分の辞書にはないとはいいながら、それを『いい』と感じ取る眼を彼自身も持っているということじゃない。

出来過ぎの設定と言ってしまったらそれまでだけど、有川さんのこういうドキッとするような、思いがけない文章に、ワタシの目もしばたたいた次第です。