NHK BSプレミアムドラマで、放送していた『真夜中のパン屋さん』楽しく観終りまして 、
続いて大沼紀子著『真夜中のパン屋さん~午前0時のレシピ』を楽しく読了しました。
気に入ったドラマに共通するのは何かなと考えたら、
そのドラマの世界に自分も入り込める。そのドラマの空間で生活しているような夢が見られること、
だと定義づけられました。
例えば病院モノなら、医務局の部屋で、みんながくつろいでる横で、自分もコーヒーをすすっていたり。
このドラマなら、三軒茶屋の住宅街の一角にブランジェリークレバヤシがあって、
弘基が、クレさんに「クレさん、もっと優しく捏ねる」と指導している声を聞きながら、
イートインコーナーでパンを食べてる。とか? (笑)
そんな風に想像させて貰えるドラマは、役者がドラマの中で息をしているということだと思います。
ドラマのセットを担当する美術さんの腕も大きいですが。
『真夜中のパン屋さん』は、人と人との何気ない触れ合いが、とても感じ良く描かれていました。
ドラマの配役は、原作とはビジュアル的に違うけれどどちらも好きでした。
弘基を演じる桐山照史は、「俺は天才ブランジェたぜっ」という鼻っぱしらの強さを可愛く演じてました。
土屋太鳳ちゃんも、希実の孤独な少女の不機嫌っぶりを、適格にかもし出してる。
亡くなった美和子役も、伊東歩がバッチリ表現しているし、ムロツヨシのソフィアも素晴らしい。
小説も、楽しみが満載で、男2人が女子高生と接する場面が秀逸。
学校でイジメを受けている希実が、バケツの水をかけられ全身ぬれネズミになり帰宅するシーン。
「よう、今日はプール開きだったのか?」と、( 弘基は ) 片方の口の端を上げて訊いてきた。そうかもねと希実が吐き捨て階段へと向かうと、暮林がひょいとやって来て、ほらと笑顔でタオルを差し出した。「早よ風呂にでも入ったほうがええ。風邪引いてまうかもしれんで」大沼紀子著『真夜中のパン屋さん』P.50
水浸しになって帰ってきた女の子に、何が起こったかということくらい想像つくはずだが、
この場合、ジメジメしない触れ方のほうが良いことを知っている男たち。
こんな人間関係の描き方、なかなかいい。
小見出しも、洒落ていました。
Open
Faisage -材料を混ぜ合わせる-
Pétrissage & Pointage -生地捏ね & 第一次発酵-
Division & Détente -分解 & ベンチタイム-
Façonnage & Apprêt -成形 & 第二次発酵-
Coupe -クープ-
Cuisson avec buée -焼成-
一応、パンの作り方で完結しているようだけど。
さて二巻目、三巻目の小見出しはどうなっているのやら。

とあるパン屋さんで買ってきたこのパン
「なんてひどいクープなんだろう」と、ふっと笑いがこみ上げました。
小説の台詞を思い出したものだから…。
「この切れ込みで、パンの見た眼が決まるからな。だからクープは、パン屋の顔とも言われてる。」p.285の弘基の台詞