Garadanikki

日々のことつれづれ Marcoのがらくた日記

Lonette McKee について

 

昨晩 観た『Round Midnight』という映画に、魅力的な俳優 ( ミュージシャン ) が大勢 出てきたので、どんなキャリアの人たちか調べてみました。

今回は、Lonette McKee という女優さんの話。

彼女は、Darcey Leigh ( ダルシー・リー ) というジャズ歌手の役を演られていました。

スラリと美しく、歌も上手でひときわ目を引く存在でした。

役どころは、主人公デイルのジャズ仲間。

アル中のデイルは、パリに渡った当初 泥沼状態だったのが、やがて立ち直っていきます。

そんなデイルを心配して、アメリカからやって来る友だちがダルシーでした。

 

デイルがアパルトマンのドアを開けると、真っ白な洋服を来た彼女が立ってます。

天使のように。

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「ノッポさん」

これが最初の台詞。

それだけでもう、2人の関係性が分かるような口調でした。

恋仲ではなくアーチストとしてのデイルを深く尊敬して、信頼を寄せている間柄です。


彼女が、ライブハウス (BLUE NOTE) に飛び入り出演するシーンがまたいい。

 

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「なんていう女優さんだろう」

DVDのパッケージを見たけれど載ってないし、キャスティングロールを丁寧に 見直して、やっと名前がわかりました。

 

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【 Lonette McKee ( ロネット・マッキー ) 】

彼女の情報は日本のサイトでは驚くほど少なかったので、本国アメリカのサイトで調べました。

事実関係、制作/出演年月日などは確認を取ったので、間違いないハズだけど、

インタビューの言葉は、英語が出来ないので思いっきりの意訳です。

ニュアンスが違うことも多々ございましょうから、大目に見てください。

 

取りあえず、ニューヨークタイムズの原文付けときましたから、興味のある方は読んでみてください。

 


Lonette McKee

1954年ミシガン州デトロイトで、アフリカ系アメリカ人の父と、スェーデン系アメリカ人の母の次女として生まれる。

黒人と白人のハーフだったので人種差別も経験したが、その経験は後に白人男性と結婚する気持ちを思いとどまらせるものではなかった。

「私は、愛そのものには人種を隔てる偏見がないと真から思っています」

「私自身が黒人であることを受け止め、何者であるかをわかっている限り、

 異人種間の問題は、私にも彼にも問題にはなりません。」

 

女優としての彼女のキャリアは、順風満帆ではなかった。

1976年、初めてキャスティングされた映画『SPARKLE』は、黒人系女性グループのSupremesのことを描いたもので、当時、自分自身のことを《黒人からも白人からもどちらからもシャットアウトされない混血児》だと思っていた。しかし、本人の思惑とは逆に、役がつかない日が続く。


「ずっと疑問でした。何故誰も仕事をくれないの? 私は歌えるし、踊れるし、曲も作れる。

 色々出来るのに、どうして仕事がないのかしら」

答えは、Lena Home や、肌の白い黒人の女優が干されていたのと同じだった。

彼女は、ハリウッドの黒人役にはあまりにも軽かったし、白人をやるには黒過ぎたのである。

 

「若干のドアが Jennifer Beals と Rae Dawn Chong を含む彼女自身のような女性に開かれていた」

 

と、彼女は振り返る。

しかしドアが自分のために開き、人々に支持されるとしたら、それはまぐれだと、彼女は認識していた。

Jennifer たちに光があたったとはいえ、黒人が虐げられた歴史が塗り替えられたわけではなかったから。

まだまだこの世界では、黒人の役者がトップに立つことを嫌う傾向があると、彼女は言う。

 

1983年 Houston Grand Opera's でリバイバル公演『Show Boat』に出演した時、彼女は映画『Show Boat』のことを思い出したそうである。
映画『Show Boat (1951)』 のジュリー役には当初、Lena Home ( 黒人と白人のハーフ ) が内定していながら、アフリカ系女性と白人男性の恋愛映画を是認する時代でなかったために、Ava Lavinia Gardner ( 白人 ) に交代させられたのだった。

アフリカ系女性であるはずのジュリーという役が、白人ではなく黒人がキャスティングされたのが、32年後の、McKeeだったのである。

 

McKee と Lena Home とは、他にも奇妙な縁で結ばれている。

映画『The Cotton Club (1984)』で、彼女が演じたライラ・ローズ・オリヴァー役は、Lena homeをモチーフにしたキャラクターだった。

 

 

f:id:garadanikki:20150723115145j:plainMcKee の輝かしい経歴のひとつに、『Lady Day at Emerson's Bar& Grill (1986) 』がある。この作品は、44才でこの世を去った悲劇のジャズシンガー、ビリー・ホリデーの晩年を描いたもので、『Strange Fruit (奇妙な果実)』を始めとするビリー・ホリデーのスタンダードナンバーを15曲も歌う、凄まじく体力と集中力を要する一人芝居である。

※ McKee が演じた初演『Lady day』の2年後には、日本で、ちあきなおみ が、演じている。


McKee は、ビリー・ホリデーの歌を賞賛していて、彼女の歌い方や声質も研究していた。しかしこの役がキャスティングされた時、ホリデーを偶像化することが、彼女の苦しみや運命の暗さを表現する上で、役に立つことではないと悟った。

彼女は、ブルックリン・アパートでのインタビューで、こう語っている。

「3週間、いつも『God Bless the Child』を歌うたびに、私はそれを歌いきることができなかった」

「その歌詞について、私は、彼女がその曲を書いた理由を考えたり、

 彼女やお母さんのことに思いが至ったり、

 彼女の生き様について考えさせられたりしたの。」


『Lady Day』の演出家、Andre Ernotte も、このプロセスを必要な第一歩と見なした。

批評家は、彼女の抑制された演技に驚嘆。

『Lady Day』は、McKeeで3回ニューヨーク公演を記録し大成功で幕を下ろした。

 

【映画 ROUND MIDNIGT での彼女】

McKeeが『ROUND MIDNIGHT』に出演したのは、『Lady Day』公演と同じ1986年。

彼女が、白い花を髪に付けて登場すると、デイルが「花つけてるね」とでもいいたげな仕草をします。

それを見て「あっ、ビリー・ホリデーを意識してやっているのかな」と感じました。

ビリー・ホリデーがステージで、白いクチナシの花を髪に付けてたという話を聞いていたからです。

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【参考資料】

ニューヨークタイムズ Arts By E. R. SHIPP著
『THEATER; LONETTE MCKEE ON BECOMING LADY DAY』1987年2月22日の記事