今回の旅で、最初から行こうと決めていたのが BAR SPOON(バースプーン)です。
富山の「あら川」「やつはし」、金沢の「源左衛門」ときて BAR SPOON。この4店の共通点が分かる人がいたらハグしたい。
いずれも 居酒屋探訪家 太田和彦さんが「ウマい」と紹介した店なんです。
《 風任せの旅 》なんて言ってて、しっかり保険をかけていたのれす。
もちろん独自に鼻を利かせて飛び込んだところもありますが、寄り道や予定変更をしながらも、
《 日本各地の太田さん推薦の店を飲み歩きたい 》という別の志向もあったんです。
太田さんの推薦するお店は、藤沢の「久昇」も美味しかったし、
昨年行った松本では「きく蔵」「サイドカー」にも大感動しました。
いい思いをしたんだもの、クセになるというもの。
初めての金沢の歓楽街をさまよい歩き、そろそろ喉も乾いてきた。
じゃあ行ってみるかとお目当てのバー「Bar Spoon」に入ります。
前に言いましたが、写真は撮りませんでした。
カランコロン ( といったかどうか ) ドアを開けると奥までカウンターが、10席くらい。
左手がバックバー、シックな明かりながらも、ゴージャスなボトルがキラキラ光っています。
バーテンダー2人、手前に若手、奥のマスターと思しき方は接客中です。
ワタシたちは一番手前に座りました。
若手のバーテンさん、こんなこと言っちゃ怒られるのかな、、、どこかが皇太子浩宮さまに似とる。
お坊ちゃま風七三分けした髪をグリースで丁寧にセットして、斜めに立ってるの。
まずはジントニックをお願いしました。
殿下は、斜めに構えてスッと立ち、氷で冷やしたグラスに、冷蔵庫でよーく冷やしたビフィータを静かに入れる。ライムを絞り、トニックウォーターを注ぐ。
最後にピールをやったような、やらなかったような、うーむ素早くて見逃した。
一連の動作には無駄はない。でもちょっとおキザ?
「うんまい!! 」 キリっとしてて、まさに皇太子の品格が漂う一杯です。
材料も少なく、やることも単純なのに、どうしてこうも違うのか。
昨夜のバーのジントニックとは全くの別物。
家で作るジントニックとは雲泥の差です。
お世辞ぬき美味しかった、殿下に「美味しい」と言ったら、
斜めに構え、小首を少し傾けて微笑まれました。
お言葉は、、、、、ない ww
無口な人なんだろうな、まあいいよねと2人で話を始めました。
「食べてみろよ、うまいよ」と、MOURI が促したのは 3品 皿に乗ったお通し。
バーといえば、ナッツとかチョコレートとかチョロっとある感じ、、、という固定概念にとらわれていましたが、意表を突かれました。
上:フルーツ
右:サラミとキュウリなどのドレッシング和え
左:タラモサラダ
これが全部、驚くほど美味しくて、酒の邪魔をしていないんです。
野暮ったくないどころか素敵。お通しが目の前に置かれた瞬間、微妙に引いたワタシを見ての「食べてみろよ」だったのね。
しばらく2人で話をしていたら、奥のマスターが殿下とチェンジして、こちらにやってきた。
「いらっしゃいませ。細田でございます」
うおー素敵。一瞬のうちに世界が変わった。
こちらのマスターは、とにかくバーテンダー界では有名な方らしい。
細田さんは何気なく会話をすすめる内に、ワタシたちが東京から観光でやってきたことを突き止める。
聞き出されたというより、こちらから話をしたくなるように仕向けられたという感じかな。
細田「兼六園にはもういらっしゃいました?」
MOURI「いえ、まだなんです」
Marco「来る時に、迷っちゃって」
細田「そうでしょう。金沢の街は、十字路がないんです。迷うようになってます。」
Marco「へえ、もしかして・・」
細田「そう、敵が攻めて来ても、真直ぐ城にたどり着けないように、
お城までの道が、Yの字に分かれているんです」
MOURI「なるほど、どっちが城かわからないな、それじゃ」
細田「そうなんです。迷った敵は右と左に分かれますでしょう?」
もう細田マジックです。
2人は「へぇ」だの「ほう」だの細田さんのお話の虜に。。。
お話は、いつのまにやら兼六園の話になり、こんな話を聞きました。
「あっそうそう、兼六園の噴水は是非見て下さいね。
兼六園の噴水は、とても古いものなんです。
サイフォンを逆にしたような形の水道管で、あっちの水源から、こっちの噴水のところまで
水を引いてきて、しかも管をジグザグにしてるんです。
何故だと思います?
ジグザグにすると水圧が増すので噴水の水が高くまで上がるんですって。
昔の人は、そんなことまで工夫したんだそうで、それが、あの兼六園の噴水なんです。」
うぉうぉうぉ、なんとドストライクな話題。
まさにブラタモリ。
地形や地図の話に目がないワタシ、乗り出すように細田さんのお話に聞き入ります。
「何かお作りいたしましょうか?」
すかさずリクエストをしたのが、アマレットを使った一品。
「少し変でしょうが、アマレットの味が凄く好きなんです。アマレット使って何か作っていただけますか?」
ワタシのリクエストに、細田さんは「辛めと柔らかめと、どちらがお好みですか」とか「アルコールは強めか弱めかどちらにいたしましょうか」とか、ワタシの好みを聞き出していく。
そうやって、作っていただいた一品。
あああぁぁぁぁ~おいしい。
やっぱり一枚撮らせていただけば良かった。
世界にただひとつのカクテルを。。
スキッとして、穏やかな酸味がアクセントになっていて、
最後にアマレットの香りが口に広がる。
ヘネシー&オレンジ&アマレットという予想外の取り合わせは、
コニャックの強さにアマレットが負けるだろう、オレンジにアマレットが負けるだろうと思いきや、それが素人の浅はかさ。
細田さんの手にかかると、三者合わさってお互いの良いところだけが表面に現れます。
そして何よりも、主役のアマレットがちゃんと引き立った極上のカクテルでした。
細田さんには、もう一杯ずつカクテルを作っていただいて、加賀きゅうりの梅ソース添えをサービスして下さったので、その作り方を聞いたり、プライベートで飲むお店やお酒の嗜好なんかもこっそり教えてもらったりと、楽しい時間が過ぎました。
お店には新しいお客さんが4~5人見えられたところで、ワタシたちも帰り仕度、店を出るのにいい時間となりました。
Bar Spoon の細田さん、
聞きしにまさる素晴らしいバーテンダーさんでした。
バーテンダーというのは、酒の知識や腕前は勿論のこと、
短時間で客の嗜好を読み取り、好みの一杯を作るという
大切な為事もあるんだなあ。
いや~素晴らしい夜でした。
ごちそうさま。
Bar Spoon と細田さんの写真です。
素晴らしくてカッコいい、魅了されること必然。是非お寄りあそばしませ。
↓ ↓ ↓