ラフィク・シャミ:著「夜の語り部」を読了。
大人のための上質な童話、堪能しました。
<あらすじ>
ダマスカスを舞台にした千夜一夜のようなお話です。
主人公のサリムは御者をしているんだけど、それはそれは話が上手で、彼の話を聞きたくて、サリムじいさんの馬車を利用するくらいの人気者。
そのサリムじいさんがある日、口がきけなくなってしまうんです。理由は、長年サリムについていた妖精が年で引退するから。
妖精は、妖精の王様に「自分の代わりに若い妖精をサリムに与えてください」と願い出ます。妖精の王様は「ある条件を満たせば願いを聞き入れてやる」と言います。
その条件は「サリムはあと二十一の言葉しか話すことはできない。二十一の言葉を話したら口がきけなくなってしまう。しかしあと三ヶ月の内に、七つの特別な贈物を手にすることができたら、若い妖精をそばにつけてやろう」というもの。
サリムには7人の男友だちがいます。年は似たようなものだけど、職業も性格もてんでバラバラ、その7人がサリムじいさんを心配して「七つの特別な贈物は何か」を必死で考えます。7人は、1人1つずつサリムじいさんに話を聞かせることなんじゃないかと思いたつんですが、さて7つの物語を三ヶ月の間に、サリムにプレゼントすることで、サリムはまた話が出来るようになるんでしょうか。
って話。
<感想>
童話のような、夢のような話だけれど、マダガスカルの人々の、色んな職業の様子や、物の考え方、風習が、生き生きと紹介されていきます。
友だちが全部、いい年の男だという設定も面白い。
全員が仲が良いかというと、そんなこともなく、サリムを中心に繋がっている、一癖も二癖もある男たちが一夜、一つずつ話をしていくという設定で、章だてされています。
サクサク読めてしまうようでもあり、もう一度読み直してもまた楽しいような、面白い作品でした。
<ラフィク・シャミという人>
シリアのダマスカス生まれ、71年に旧西ドイツに移住した著者は、この本を母国語 ( アラビア語 ) ではなく、ドイツ語で執筆しています。物語の多くは故郷ダマスカス周辺が舞台になっていますが、作品はドイツにおいてしばしばベストセラーになっています。
<この本を読むきっかけ>
ひょんなことですが、ネットでこの本の装幀を見て読みたくなりました。
ジャケ買いみたいなものです。
最近、西村書店という出版社の装幀や中身の作りが非常に手をかけていることを知り、手にとってみたくなりました。
この本も、こんな感じ。※ クリックすると大きくなります。
各章だてもロゴがデザインされていて、色もついている。
ページだって、飾り付。
紙も、凄く上質です。
古書が好きで、いつもはシミやヤケや擦り切れてるような字の本を読むことの方が多いので、
たまにこういう手の込んだ本を読むと、余計に感動が大きいです。
西村書店の新刊のように綺麗な本を読んでしまうと、
下のような印刷の古書に戻るのは大変かも。。。。
でも。
好きなんですよね、こういう古い書物も。。。
次に読もうと思っているのは「大川端」
一昨年、右のすりきれた本で読んだのですが、
再読にあたり、左を手に入れました。
嬉しい、こっちは挿絵入り (*´▽`*)
これもまた、たのしみ。。。