先日購入した雨の日文庫を読み始めました。
雨の日文庫か、ググッと来るネーミング。
雨の日は、たのしく読書しようというイメージなのかな。
今日は晴天だけど…読む。
【雨の日文庫について】
このシリーズは、昭和33年に麥書房 ( 現むぎ書房 ) から発行された文集で、低学年向けと高学年向けがあるらしい。
文芸メディア専攻・専任教授 内村和至先生がお書きになった『小中学校のころの読書』によると、「これは雨で体育の授業ができないような時に先生が教室で朗読してくれるもので、短時間で読み終われる作品ばかりを集めたものだった。」とのこと。
そうか、学校の雨の日の読み聞かせ用に作られたから『雨の日文庫』なのね。
薄い冊子が二〇数冊セットになっているのも意味があったワケだ。
先生の話は、こう続く。
「この『雨の日文庫』は麦書房というところが出していたが、共産党色だか教員組合色だかが強かったのであろうか、チェコだかポーランドだかのナチ抵抗文学も入っていて、ドン・ヤルタとかいった作家の作などは、ダイナマイトを爆発させてナチとともに自爆死する老夫婦の話で、たいへん後味が悪かった。~(中略)~これらは小学生に読ませるべきものではないような気がする。トラウマになりそうである。」
確かにこのラインナップは個性的です。
私が入手したいと思った理由も、珍しい作家の作品が多いことと、佐藤忠良さんの挿絵に惹かれたからです。
ちなみに、現在むぎ書房が販売している「雨の日文庫」は新編と言われるもので、
収録されている作品は、昭和33年のものと違うみたいです。
第一集 全25冊で1200円って。
昭和33年の大卒の初任給が13,467円だった当時の価格としては、かなり高額です。
平成20年の初任給が225,900円であることからザックリ計算して、20,000円位だもの。
一冊当たりで単純計算すれば800円。
高いですよね (;^_^A
【十六人の小人の冒険】
花の都に住んでいる、こびとたちは、背の高さがキウリくらい。どの家の周りにもヒナギクやカミツレ、タンポポなどの花が咲いている。こびとたちは、木の実を採るにも小さいから高い藪に這い上がらなければならないし、のこぎりで木の実を切らなければならない。そんな暮らしをしているこびとたちのなかの16人の男の子たちが、気球を作って旅に出るという話。
リーダー格は、ズナイカ ( 知っているという意味 ) という男の子。なんでも知っているので、ものしりズナイカと呼ばれてる。
ドクター・ヨードチンキは、色んな病気を治すお医者さん。機械技師のボルトと助手のナットは、腕の良い職人さん。シロップチクは、甘いシロップの入ったソーダ水が大好きで、もったいぶる男で、アマイ・シロップチクと姓名をきちんと呼ばれるのが好き。鉄砲を持っている子は、狩人のトリトルで、いつもかり犬のワンと一緒。
※ 写真はワンがカットされている www
絵描きのパレット。音楽家のドレミーハ。オッチョコはとてもせっかちで、ブツブツはいつも不平を言っている。だまりやのムッツリに、食いしん坊のパクパク、そこつもののチョコチョイ、それに、タブンとソーダロの兄弟。
なんといっても有名なのが、ネズナイカ。
ネズナイカとは、なにも知らないという意味で、一番最初に紹介したズナイカの反対なんだね。みんなから、とんまのネズナイカと呼ばれているらしい。
物語は、物知りズナイカが気球を考え出すところから始まって、皆で気球を作って冒険をしようというような話。
最初はズナイカが主人公だと思って読み進めたんですが、気球の中の空気が冷めてきて、気球からパラシュートで一番先に ( 模範的に ) 飛び出すのがズナイカでした。
ズナイカがいきなりのフェードアウトしてしまい、物語はどうなるかっていうと、気球の中では、誰がリーダーになるのかでもめ出します。みんなは勇気がなくて、ズナイカに続いてパラシュート脱出が出来ない。そうこうしているウチに、ネズナイカがとんまぶりを発揮して、結局気球は萎んでしまう。
「ネズナイカは、かごからほうりだされ、地面にくたばってしまいました。
空中旅行は、これで、おじゃんとなりました。」
という文章で終わる。
このお話、すごく乱暴な尻切れトンボで、大笑いしてしました。
この作品の魅力のひとつが、素晴らしい挿絵です。
しかし、本には挿絵作家の名前がありません。
色々と調べてみたところ、アレクセイ・ミハイロビッチ・ラープチェフという方が描かれたものだとわかりました。
また、偕成社から出版された『ネズナイカのぼうけん』 が、29章からなる長編小説だということも判明。
もしかしたら雨の日文庫の『十六人の小人の冒険』は、抜粋なんじゃないかしら。
だから結末がかなり乱暴な終わり方なのではないでしょうか。
その辺のところを知りたくて、『ネズナイカのぼうけん』を探しましたが絶版でした。
古書としては、かなりの高値がついているらしいんです。
じゃ、図書館だと思ったけど、案の定、渋谷区の図書館に蔵書がありません。
仕方ないので後日、川崎市高津の図書館まで、足を伸ばしてみようと思います。
ちなみに、翻訳家が違うと、名前もこんなに違ってくるみたい。
「ズナイカ」「ガンヤク先生」「コネジ」(機械技師)、「ヘソコゾウ」(その助手)、「サトウ・ミツシロップ」、「テッポウダマ」(狩人)、「チューブ」(絵描き)、「バララン」(音楽家)、「セカセカ」、「ブツブツ」、「ムッツリ」、「オダンゴ」、「ウッカリ」、「タブン」、「タイテイ」、「オンボロ」に「ネズナイカ」