【小学生の男の子にいじられるの巻】
雨上がりの坂道を登りきったところで、後から声をかけられた。
「すみませ~ん」
見ると小学校 3~4年生ぐらいの男の子が、追いかけてきた。
道を聞かれるのか? 私は自転車を降り、彼を待った。
「ヤクルトスワローズの関係者の方ですか?」
いきなりで何のことだか分らなかったが、
私が着ていたウィンドブレーカーを見てそう思ったようだ。
「あっ、これ? ただのファン。
ヤクルトのファンクラブで購入したグッズなの。」
「ああ、そうなんですか。てっきり僕はヤクルトの関係者の方かと思って。
いや~ヤクルト、いいですよね~。僕もファンなんですよ。だって僕、東京生まれだし。
東京のチームはヤクルトしかありませんからね。巨人が東京のチームだって勘違いしている人多いです
けど、巨人は全国区ですから東京のチームというわけじゃない。
いや~でもヤクルト最近勝てないですね~。たまに神宮も行くんですよ。
いいですよね~神宮は。やっぱりドームと雰囲気が違う。」
少年の熱弁は続く。
私はハァとか、そうですねぇとか、相槌を打つしかない。
ひとしきり喋った少年が、ふと黙ってこう言った。
「それでは僕は用があるので、この辺で失礼しますね。じゃっ」
「あっ、はい、さようなら」
・・・なんだか違う気もするが、まあ、いいか。
しかしまあ、なんとおっさんくさい口調なんだろう。
お父さんが、いつも家でこんな話をしているのだろうか。
【小学生の女の子にいじられるの巻】
道端に座って、にゃんこのご機嫌を取っていたら、すごく近くに気配を感じた。
ふと見ると、私にぴったりくっつく近距離に女の子が座り込み、猫と私を見比べていた。
「ねぇ、知り合いの猫なの?」
「えっ、別に知合いというんじゃなくて、今日初めて会ったんですけど・・・」
「じゃ何してるの?」
「えっ、何してるって…ねえ。『怖くないよ』って言って、仲良くなろうと思って・・・」
「ふうん、怖くないよって言うと仲良くなれるの?」
「そう、野良ちゃんは怖がりだから、いきなり手を出したりすると、逃げちゃうの。
だから時間をかけて少しずつ慣れてもらわないと駄目なの。」
「ふうん、時間がかかるんだ、大変だね、じゃっ頑張ってね」
「あっ、はい。さようなら。」
翌日自転車に乗っていたら、小学生に声をかけられた。
「ねえ、昨日会った人だよね!」
「えっ?、あっ、はい」
なんかおかしい。
最近、やたらと小学生に声をかけられるが、なぜ子供は上から目線なんだろう。
その時、私はなぜ丁寧語なんだろう。