千駄木の「島薗邸」を見学後、斜向かい ( 少し先 ) にあるという旧安田邸を訪問しました。
( 3/18・・・半年も前のお話です m(__)m )
旧安田邸、正確には「旧安田楠雄邸庭園」と言って東京都の指定名勝です。
島薗邸と同じ〔お宅拝見〕でもスケールが違う、とにかく でーーっかい のです。
全部あげたらキリがないほど、見どころ満載、広いんです。
入館料は一般500円ですが、優待割引もあるとのこと。
- 大人の休日倶楽部 ( JR東日本 ) 会員
- JAFカード会員
- To Me Card など。
待てよ、JAF会員だからカードあると思うの。えーとえーと。
私がごそごそ財布をひっかき回していると、受付の女性が覗き込んで(笑)
「これじゃないかしら?」
カード差しからはみ出ている柄を見て教えてくれました。
玄関横で、大きな荷物は預けます。
本日はリュック バックパックでしたから、それを渡します。
あらもう、入口の所で解説が始まってる。
ここでは何人か、まとまったところで解説 ツアーをするみたいです。
7~8人ほどのお客さんの最後尾にくっついて説明を聞きました。
最初の場所は聞きもらした。
解説は、日本ナショナルトラストのボランティアスタッフがしてくれます。
担当の方の説明はとてもわかりやすく、丁寧です。
調度品の仕組みを見せてくれたり、、、
暗くて、見にくい電灯の飾りの説明には、
こんな手作りの道具も駆使している。
パカンと開けてくれたのは、台所の床下収納の板。
すっごい、このコンクリート。
何十年も前にこんな堅牢な造りをしていたなんて。
2階の特等席からは、枝垂れ桜が目線に見えます。
ツアーは、40分くらいでしょうか。
一通り説明をしていただいてから、もう一度見回ると面白いです。
時間と興味があったらですけど w
二巡目スタート
まずここが、玄関から入ってすぐのところの応接間。
家具・調度品のほとんどは、
元の所有者から安田家に代わってからも大事に使われてきたそうです。
なんだかとても温かい。
応接間、、、といっても、家族も使われていたんじゃないかしら。
とても美しい、清らかな空間です。
ナショナルトラストが、保管・管理をしているから綺麗に保たれている
ということもあるでしょうが、
住んでいた方が大切に使われてきたからだと思うのです。
マントルピースにある、三匹の動物
猿、ふくろう、ウサギ?
どうしてこの動物なのか、わからないそうです。
暗くなりがちなマントルピースの横にも、素晴らしい窓がありました。
膠 ( にかわ ) を、混ぜているそうです。
ガラスに膠を混ぜると、ガラスが冷えて固まる段階で膠が収縮をする。
それがこういう柄になる。二つとして同じ柄はないですね。
入口で、荷物を預けたのは、
こういった「修復不可能な備品」の破損防止が理由でした。
ボランティアスタッフは、開館・閉館時の雨木戸の開け閉てもするそうです。
「貴重な建物ですから、
最初はおっかなびっくりやっていました。
何十枚もある雨木戸を引くのは、
とても時間がかかるんです。
でも、慣れてくるとシュッシュッと
出来るようになるんですよね」
わかります。実家も雨木戸だったから。
この手の雨木戸はとても重い。
ある程度 力を込めて押し出さないと、はかどらないんです。
これが ⤵ また曲者
鍵穴をさぐるのに、木の目地を傷つけてしまうことがある。
「そうなんですよね、うっかりさんがホラ」と、木に出来た傷を見せてくれました。
応接間から見る景色も素晴らしい。
サンルームの床が珍しい。
ピースはゴムのようです。
現在は、新しい素材のゴムで復元されています。
当時のゴムタイルは、硬くて壊れやすかったりしたんですって。
旧安田邸の調度品は、どれも凝っています。
電気のスイッチ
ドアノブも素敵。
ふすまの取っ手の意匠も、電灯の飾りも、部屋ごとに全部違うそうです。
廊下を抜けた先は和館になっていました。
それにしても広い。
間口 (通り) からは想像できないほど、奥行のある敷地。
見どころ多すぎ。
こういう木組みひとつ丁寧に見ていったら、一日中かかる楽しめる。
ここの縁側、凄い仕掛けがあるんですって。
畳み返し ( 忍者か ) にすると階段があって、、、
防空壕があるんだそうです。
毎年二回、この防空壕も公開されるそうです。行きたい!!!
一階の和室の床の間に、棟札が飾られていました。
棟梁の名とか、建てた年とか、施主名が書かれる。
施主「藤田好三郎」とあります。
上の写真は、左から安田楠雄氏、善四郎氏、善次郎氏。
(注) 安田善次郎氏 ( 右 ) は、安田講堂を作った人。
善四郎氏 ( 中 ) は、善次郎の三女-峰子の婿で、 ( 二代目 ) 善四郎となった人。
二代目-善四郎についての参考資料 ⤵
施主が藤田好三郎で、旧安田楠雄邸?
先ほど梁に施主名として藤田好三郎とありましたが、この家はもともと藤田好三郎氏が建てた家です。
藤田好三郎は、豊島園の開園者。
たいそう普請道楽だったそうです。
凄い響き、普請道楽だなんて。白須次郎のお父ちゃん以来、久しぶりに聞く言葉じゃ。
この家も大正7年に土地を取得し、邸宅を建てたと思えば、
大正12年には手放している。
移転した中野の家はこれより広いというから凄い。
この家が「旧藤田好三郎邸」ではなく「旧安田楠雄邸庭園」なのは、善四郎から長男-楠雄氏が相続し、楠雄氏ご逝去後に幸子未亡人から寄贈されたからです。
南北に抜ける良い間取りの和室
茶の間として使われていた和室、雪見障子がいいですね。
台所
手前の箱は冷蔵庫、奥の箪笥みたいなのは蠅帳です。
蠅帳って、ご存知ない方が多いでしょうね。
ギリギリ私は家にありましたが、説明してくれたボランティアスタッフの女性も、
見学者も誰一人、家にはなかった世代でした。
北側だというのに、家の中で一番明るいのが台所。
半端ない大きさの天窓ですね。
藤田氏が住んでいる頃は、ここはコンクリート貼りの土足仕様で、
お抱えのコックさんが使っていたそうです。
それを板張りになったのは、楠雄さんのお嫁さん ( 幸子 ) さんのためだったそうな。
二階
安田邸の階段は二か所あって、こちらは家族用だったようです。
現在は、こちらを見学者の上り用にして、
来客用に使われたこの階段が、今は下り用になっています。
(上り用 ) 階段の踊り場から見る景色
「この風景が、一番好きです」
解説してくれた女性スタッフの一押しアングルです。
二階の予備室は、織部床になっていました。
織部床は、千利休の弟子-古田織部が考案したという(簡易の) 床の間。
雲状の腰張 (白い和紙のところ) が、キリッとお洒落だなぁ。
二階は、客間として使われていたそうで、随所に創意工夫と高い技術がみられます。
その1 ) 網代天井
普通の網代はギチッと直角に組まれていますが、斜め織りされています。
腕の良い職人が織らなければ、グスグスになってしまうんだそうです。
その2 ) 畳床
スタッフに通されて、すぐ聞かれました。
「ここの畳、どこか違いませんか?」
フカフカしているのです。といっても安くて古くてしなっているのではない。
どこをどう踏んでも一定の弾力があるフカフカさ。
この畳床は、通常の何倍もの層の厚さなんだそうです。
安田邸は、様々な催しが企画実施されています。
4/1には、この客間で「しだれ桜と琵琶の夕べ」が催される。
このフカフカの畳に座して、枝垂れ桜をバックに、琵琶の音色に酔う。
興味深い企画です ( でした。もう終わってました m(__)m )
その3 ) 床の間
織部床があった予備室と背中合わせに位置するこの客間には、正式な床の間がありました。
正式も正式、こんなの見たことない。
床の間は一間半。
そうそう、この本柱も凄いものなんだって、
4面柾の栂柱っていうから、どんだけもこんだけも凄いらしい。
柾目というのは真っすぐな木目で、それが4面とも真っすぐだということは、
とても太い木から贅沢に切り取ったものということ。
希少なツガの木ともなれば、ホントにお高いものなんでしょう。
これが本当の書院というの? 独立しててこんなに広い。
床脇の違い棚は、大人し目かな。
天袋の意匠も、さりげない。
その4) 電灯
この電灯のガラス、
実は12畳の方と、8畳の方と違うんだそうで「見比べてみてください」と言われました。
左 ) 建築当初の職人の手によるもの 右 ) 復元の職人の手によるもの
おわかりになられますか? 拡大してみて
左は中のカーブがツルツルです。
現在の職人さんがどんなに頑張っても、当時の職人さんには敵わなかったそうです。
その5 ) 水洗トイレ
階下の家族用は、くみ取り式ですが、2階の客間は水洗トイレですって。
どうでしょう?
「THE 凄い」
当時の最先端と、職人の高い技術をこれほどまでもぶっこんで作ったお屋敷。
藤田好三郎という人物は、本当に普請道楽の限りを尽くした人ですな。
ふう。
二周りするだけで1時間半かかりました。
疲れたけど、とても楽しめました。
で。スタッフの女性を真似して「私が好きなアングル」を選んでみました。
私の好きなアングル 第3位
来客用の階段から客間に入る入口の欄間
私の好きなアングル 第2位
大廊下から見たサンルーム
私の好きなアングル 第1位
茶の間の雪見障子と庭
スタッフのこの景色も捨てがたいけどねぇ。
それに季節が代わったら、また違う景色が良く見えるかも。
旧安田楠雄邸も、島薗邸と同様、また違う季節に再訪したいお宅になりました。
運が良い私のおまけ
本日はお庭も見学できる期間でした。
でも、家を満喫しすぎて閉園までギリギリ。
最後に、面白いものを見つけました。
左は 安田家の家紋。右は 藤田家の家紋。
うーん、いいなあお庭の方も、でももう時間切れ。
門が閉められていますので、急いで退出。
ボランティアスタッフの皆さん。
ありがとうございました。
素晴らしい家を建てられた藤田翁に感謝。
その家を大切に住まわれ、寄贈してくださった安田家に感謝です。