Garadanikki

日々のことつれづれ Marcoのがらくた日記

還暦ですと 《伊豆栄》

 

還暦祝いに鈴本演芸場に行き、そのあと上野池之端の伊豆栄で鰻を食べることにしました。

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伊豆栄は老舗の鰻屋さん。

森鴎外、谷崎潤一郎、川口松太郎、小島政二郎などの文豪に愛された店。

 

 

伊豆栄については、

今読んでいる浅田次郎の「天切り松 闇がたり」にも度々登場します。

若い署長はあんぐりと開けたままの口をようやく噤んで、ごくりと咽を鳴らした。

「見たのか、とっつぁん」

「おお、見た、見た。あれァ奇術でも魔術でもねえ。大江戸の掏摸の奥義、秘伝中の秘伝てえ中抜きの一部始終を、この目でとくと拝ましてもらった俺は果報者だ。今もこうして瞼をとじりゃあ、あの日あの時の一瞬が、スローモーションみたえに目に灼きついて離れねえ」

「・・・スローモーション、モーション・・・かよ」

天切り松は署長を見据えたまま、白い無精髭の立った顎を撫でた。

「聞きてえか、若オヤジ」

「聞かせてくれよ」

「夕飯は伊豆栄の鰻だぜ。池之端までパトを飛ばしてくんない」

「わかった。伊豆栄だな」

「官の銭をケチるなよ。特上だぜ」

「わかったって。わかったから早く話してくれ」

おおし、と天切り松はソファの上に大胡坐をかくと、肩をそびやかして斜に構えた。

浅田次郎著『天切り松 闇がたり』第二巻 第三夜「目安の安吉」p.100より

「あいよ。こういうロマンチックな詐欺話だてえだけでもいちおう恰好はつくが、下げを聞かさずばにいさん方も寝付きが悪かろう。

 俺がこの話の、ここいらまでを耳にしたのァ、長雨のからりと晴れたお午どき、ところァ上野池之端は不忍池を見おろす伊豆栄の座敷だった。

 目細の安吉親分に特上の蒲焼をふるまいながら、風呂敷包みから分厚い被害調書を引っぱり出して読み聞かせたのァ、坊主落としの吉次てえ、本庁の名物 刑事(でか ) さ。

 のう親分、俺ァお上から十手捕り縄を預かって三十年、あんさんとは捕った捕られたは別にしたって、男同士のいい付き合いをさしてもらってきたつもりだぜ。

  ~中略~

 俺っちにしたってこんな 事件 ( やま ) は、はなったら調べる気もねえやる気もねえ

---- てな調子で、蓮池を渡って吹き寄せる風ん中で、坊主落としの吉次と安吉親分、そのかたわらに蒲焼のご相伴に預かった俺が、書生常の仕事っぷりを肴にしながら、妙に効きァがる昼日中のビールを差しつ差されつ、くみ交わしていたと思いねえ」

浅田次郎著『天切り松 闇がたり』第三巻 第二夜「共犯者」p.70より

 それから佐多稲子の「私の東京地図」にも、確か小島政二郎の「食いしん坊」にも出てきたような気がする。

そう思って本棚をひっくり返して探しましたが、ちょっと出てこないのでこの話はまたの機会に。。。

 

とにもかくにも、、、文豪にこよなく愛されたという老舗中の老舗の有名店「伊豆栄」に、初めておじゃますることになったんですが、

手前の本店の個室は満席とのことで、少し先にある不忍亭の方に行くことにしました。

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二階の席の、ふすまで間仕切りがされたテーブル席に落ち着きます。

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窓の外には、不忍池が見え、、、見えません。

ちょうど上野恩賜公園の野外ステージのドーム状の屋根があるから。。。

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いえまあ、不忍池が見えないからって子供じゃないから泣きませんけれど。

 

あら素敵なランチョンマット。

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お祭り小僧が高張提灯かついで走ってる (^^♪

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おお、白磁の取り皿も素敵。

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浮かしが入っています。

 

コップにもほれ、伊豆栄のマークにロゴです。

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さて、何を食べましょうか。

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板長さんのおすすめ「ハルピンキャベツ」

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鰻にキャベツってよく合います。

神田~きくかわでも、キャベジンというキャベツの漬物が人気ですが、

伊豆栄さんの「ハルピンキャベツ」って、にんにくを効かせたキャベツの漬物でした。

最初、にんにく風味にえっ?と思いましたが、これ意外と美味しい。

意外となんて失礼だけれど癖になる味。唐辛子も効いていて、お酒の肴に最高です。

 

お酒は、こんな飲み比べセットもありましたが、

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「お酒のプロが選んだ 鰻 蒲焼にピッタリの酒」というのにしてみよう。

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まろやかでいながら、すっきりしていて美味しいです。

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鰻重の前に、、、まずはコチラ うざく

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キリっとしたお酢に、ピンクに漬けた芽しょうがが目に鮮やか。

美味しい、、美味しいけど、これで1,290円は、、、、すごい

 

銀鱈の西京漬け

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鰻屋さんにきて西京漬けというのも何なんですが、私の好物を知りMOURI が注文。

美味しいさ、それは。

身がほどほどの弾力があり、白みその加減も最高。

脂がのっていて、今まで食べた銀鱈の西京漬けで一番美味しかったです。

 

ちょっと休憩して個室から出たところに、パンダがいました。

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8年前まで約100年使われていた火鉢台だそうです。

今はパンタさんが火加減をみています。

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お酒をもう一本追加しました。

今度はこちらでしか飲めない伊豆栄の大吟醸

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三重県の安達本家酒造さんの作った伊豆栄オリジナル

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さあお待ちかねの蒲焼

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うな重といえば、通常は松竹梅のうち、いっちゃんお高いランクは《松》ですけれど、

伊豆栄さんでは、梅竹松の順と逆さなんです。

何かワケがあるのか仲居さんに聞いてみましたが「別段意味はないようです」とのこと。

そうなんかなぁ、なんか意味あるんじゃないかと、、、疑ってごめんよ。

 

あと、ハルピンキャベツの名前の由来もお聞きしてみたんですが、こちらも分からないそうです。

てっきり私は板長さんのオリジナル料理だと思って聞いたんですが、

ハルピンキャベツというのは、そういう名前がもとからあるのだと後日ネットで知りました。

 

 

横道にそれた、蒲焼ですが、これは松です。

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梅 竹 松 の違いは、どこでもそうでしょうが鰻の大きさと量の違いです。

鰻の質ではないので、もっぱら小食になった私は迷わず松 ( いっちゃんお安い方 ) にする。

梅 ( いっちゃんお高い ) はこの鰻が横までびっしりのようです。

 

 

さて山椒の話をちょっと

皆さんは山椒をどのようにかけますか?

大抵うなぎの上に振りかけるでしょうが、

先日「鰻をめくってご飯と鰻の間に山椒をかけると旨い」と聞いて以来、

我が家では、ご飯と鰻の間に山椒をかけて食べています。

そうするとね、鰻を食べた時に、舌に最初に山椒があたってピリリと美味しいんです。

是非一度お試しください。

 

 

そんなこんなで豪勢な夕餉を終え、そろそろ引き上げる段になり

私たちのバカ話に付き合ってくれた仲居さんにMOURI がひとこと。

「今日はね、うちのカミサンの誕生日で来たんです」

カミさんだなんてさ、いくら落語の帰りだからって、可笑しくなりました。

 

で。

会計が済み、部屋を出ようとした時に大ボスの仲居さんスタスタスタっとやってきたかと思うと、

やおら私の手を取って何かを握らせました。

「お誕生日だそうで、おめでとうございまーす」

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パンダの飴ちゃん

 

60になって飴もろた

なんかすごくうれしい。

それから、私が「素敵」と言ったランチョンマットとコースターの新品のをくれました。

そういうの、とてもうれしい。

 

憧れの伊豆栄。

仲居さんも良くしてくださったし、

鰻もお酒も他のお料理も全部美味しかったです。

確かにワンランクもツーランクも高いけど、お高いだけのことはある。

 

落語を見て、伊豆栄で鰻だなんて本当に素晴らしい還暦祝いでした。

「そんなに頻繁には無理だけど、鰻うまかったしさ、また落語&伊豆栄来ようぜ」とのこと、

それってさいこうに、さいじょうきゅうにうれしい 

ありがとさんでした