みをつくし料理帖 特別巻「花だより」を読了。
「みをつくし」は、可哀そうな身の上の少女が料理人として頑張って精進していくお話です。
うわっ ベタな説明じゃ ⤴
主人公の澪は、料理作りを通して自分の運命を切り開いていくんですが、
それが健気というか清々しいというか、、、彼女の奮闘は胸をすくんですよ。
どんどんどんどん読んでいきたくなる作品で、10巻をあっという間に読んでしまいました。
彼女が生み出す頬っぺたの落ちるような料理は、回りの人を幸せにしていく。
でもそれは、彼女ひとりで出来たものじゃない。
一つの料理が完成させるには、情の深い素敵な大人たちの支えが必要で、
彼女もそれに感謝をして成長していくんです。
回りの人もそれぞれ問題や悩みを抱えていて、そんなひとりひとりが交わることで、
化学変化が起きるように絶品料理が完成していく。
シリーズは10年に渡り、10冊もの本になりました。
その集大成ともいわれるのが今回刊行した新作で、みをつくしはこれで最後になるそうです。
そんな特別巻は、
前作から4年後。
大阪で暮らすようになった澪たち大阪の人たちと、
江戸に残っている人たちとの暮らしの4本柱になっています。
一話目の主人公は、つる家の主人-種市。
二話目の主人公は、小野寺数馬とその奥さん。
三話目の主人公は、野江。
そして、、、四話目にしてやっと澪が主人公として登場します。
読み始めてみると、澪が出てこないし、
真似して作りたくなるような料理もありませんでした。
前作までは澪が、つる屋を舞台に新たな《美味しいもの》を作っていく様子が書かれていきました。
澪が、誰にどんな思いで食べさせたかったか、
それを食べた人がどう思ったかなどが丁寧に描かれていました。
巻末にはそのレシピも載っていたりして、真似して色々作ったものでした。
でも今回は。
出てくる料理で澪が作ったのは、最後の味噌だけでした。
あとは、
つる屋の主人-種市が澪に食べさせたいと作った浅利の佃煮。
小野寺が愛しい妻の為に、亡母の置き土産のレシピで作った蕨餅。
吉原に売られた野江に又次が作ってくれた唐汁。
と、澪以外の人たち作った料理でした。
そんな前作までとは違う趣向にとまどいつつ読み終えました。
作品としては流石、とてもよくまとまっている ( ←えらそうな言い方だったm(__)m ) し、
人間関係が繊細に描かれていて、それなりに読み応えはありました。
でも個人的には「作ってみたい」という衝動にかられる料理がなかったのが残念だったかな。
もう一度読んだら、
もしかしたら「浅利の佃煮」も「岡太夫 ( 蕨餅 ) 」も「唐汁」も作ってみたくなるかも知れません。
ただ、みんな手間がかかる料理だからなぁ。。。
興味をひかれたのは最後の「江戸の味噌」の話でした。
主人公の澪と一緒に大阪に渡り夫婦になった源斉が病に倒れ、
何も食べられなくなってしまい、澪が食の道をつけようと一生懸命彼の為に料理を作る話です。
しかし澪がどんなに頑張っても、夫の咽には何も通らない。
そんな夫が口にできたのが生まれ育った江戸の味噌だったんです。
味噌の味は土地土地で違います。
どんなに美味しい大阪の、澪の手料理をもってしても、
生まれ育った馴染みの味噌には叶わないという話に、うんうんと頷いてしまいました。
私にもある、好きな味噌の味
実は先日、好みにピッタリの味噌料理を食べました。
お菓子作家のKAYANOさんが作ってくれた「秋鮭ときのこの味噌バター焼き」でした。
バター焼きに使われた味噌はKAYANOさんの手作り。
KAYANOさんはプロの料理人ですが出身は東京ではありません。
だけど彼女が作る味噌は、号泣するくらいウマい、私のルーツの味でした。
ルーツの味噌は、みをつくしの永田源斉さんと同じ、大豆に米麹の江戸の赤味噌です。
《この味だ》という味噌に出会ったのが、この本を読み終わった直後だったので、
源斉さんの思いと重なり感動しました。
「女名前禁止」について
第三話に「女名前禁止」というキーワードが出てきました。
野江が「高麗橋淡路屋」の主となって三年、そろそろ決断しなければならないことが迫っていました。
誰ぞと結婚しなければならないのです。
理由は「女名前禁止」という掟。
当時の大阪は、女は家持ちにも店主にもなれなかったそうです。
澪が経営する大阪の料理屋も、表向きの店主は澪の夫 源斉ということになっていて、
野江も店を続ける以上、所帯を持ち旦那に店主になってもらうしかないのだそうな。
「女名前禁止」は、作者の高田郁さんの「あきない世傳」にも書かれていました。
商いに抜群のセンスを持つ女が「女名前禁止」という掟に振り回されながら奮闘する話でした。
それを読んで「大阪には、けったいな掟があるんだなぁ」と思ったものでした。
そんな「あきない世傳」と「みをつくし料理帖」は、私の知らない大阪を教えてくれた貴重な作品。
今でも、その二冊を教えてくれたマミーさんとよんばばさんに感謝しています。