Garadanikki

日々のことつれづれ Marcoのがらくた日記

『東京會舘とわたし』箸:辻村深月

 

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辻村深月さんの「東京會舘とわたし」を読了。

 

 

この本は、東京會舘の大改築 (三代目新本館 ) の完成に合わせて発売されたものです。

上巻は初代本館の話、下巻には二代目本館にまつわる話が収監されていて、

東京會舘で働く人、訪れた人のふたつの目線からつむがれたエッセーのような短編集です。

 

【感想】 

辻村さんは、多くの関係者に取材し、資料・文献も沢山読まれたのでしょう。

各章の主人公がいきいきと描かれているので、読んでいて、実体験している気分になりました。

 私はこういう実体験しているような心地にさせてくれる作品が大好きです。

 小説でもドラマでも、その世界にいるような錯覚にさせてくれるものに一番魅かれます。

 とまあ、私の好みはともあれ、

とにかく凄いのは、どの話も甲乙つけがたい仕上がりになっていることです。

これだけ並んだら、印象の薄い章や、強烈に心に残る章と差が出てもおかしくないだろうに。

( ※ 全部で十章、十人の主人公がいます ) 

 

第一話から魅了されました

第一話だけは、他とちょっと趣が違うようにも感じますが、私は一話から惹かれました。

主人公の気持ちの流れが丁寧に描かれていて、身につまされたから。 

 第一話の主人公は、作家になるという夢を中断し、志半ばで郷里に帰った青年。

 東京で作家を続ける仲間や、懇意にしてもらった編集者と段々疎遠になる。

 そんな中、クライスラーの演奏会の案内を貰い、久しぶりに上京した彼は、

 帝国劇場や東京會舘のまぶさしと、誘ってくれた編集者から聞く仲間の近況で、

 焦りと嫉妬を抱く。

⤴ こんな話で始まる「東京會舘とわたし」が、この先どうなっていくのか、ワクワクさせてくれました。

 

どの章も、主役の心理がひしひしと伝わる

どの章を読んでも、主人公と一緒にそこにいるような気分にさせてもらえました。

働く人々 ( 東京會舘を支えるスタッフ ) としては、

バーテンダー、菓子職人、玄関係、ホールスタッフなどが主人公です。

この人たちには実在のモデルがいて、彼らはみな《東京會舘の伝説の男たち》だそうです。

 

お客さんの話も、実際のエピソードに基づいているらしい。

東京會舘で結婚式を挙げた女性の話、東日本大地震で帰宅困難となり東京會舘で世話になったという女性の話、夫亡きあとひとりで思い出の東京會舘を訪れる女性の話など、どれもお客さんの立場や心境がよくわかる感動的なエピソードばかりでした。

 

 

映画化・ドラマ化を切に願う

感動するとすぐ思うのは「ドラマ化したら誰が似合うか」です。

 

働く者たちとして、絶対に出演して欲しいのがこのふたり。

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出典:NHK 「スカーレット」より

NHKの連続テレビ小説「スカーレット」で

十代田八郎役で好演している松下洸平さん ( 右 )と、 喜美子の幼馴染・信作役の林遣都さん。

ふたりの笑顔と純粋な眼差しが、東京會舘のスタッフにピッタリ!

 

 

お客さんには、ぜひともこのおふたりに 登場してほしい。

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出典:資生堂「プリオール」より

 

ああ、楽しみだなあ。

絶対にドラマ化ありますよね。

これに目をつけなかったらプロデューサーとして駄目ですったら。

 

 

 

話題は最初にもどりますが、本の最後は、直木賞にまつわる話でしまります。

芥川賞と直木賞の授賞式は、東京會舘で行われるのだそうですが、

最後の主人公だけは、架空の人物のようです。

 

最終章は、主人公の作家の若き頃の思い出と、彼の直木賞当日の様子から、

父と子、わかい客とホールスタッフの関わりが紡がれています。

これもまた心に響く話でした。

 

 

上下合わせて10人の話を読み終えて、私はこんな思いを抱きました。

「東京會舘には、関わった人の数だけ物語がある」と。

東京會舘は、ホテルでも お店でもありません。

 

二度の大震災で被災し、

二度、働くものたちの手から取り上げられた 数奇な運命を持つ施設です。【※1】

 

様々な変遷をたどった施設だからこそ、

関わった人たちにも、施設の変貌の数だけ違った経験があるのだと思います。

 

私の東京會舘

東京會舘といえば、私にも ちっぽけなエピソードがあります。

初めての東京會舘は20代後半の時でした。

BOSSのお供で行った《ロッシニテラス ( ティーラウンジ ) 》は、小僧の私には敷居が高かった。

コチコチになった記憶しかありません。

 

それから30年。

宝塚の関係者と打合わせする機会があり、先方から「東京會舘のティールーム」と指定されました。

私は《ロッシニテラス》だと疑いもせず、予定の15分前に到着。

ところが、東京會舘がない!

建物は跡形もなく、私の前には工事中の白い鉄壁がそびえ立っています。

2016年のことでした。

東京會舘は、二度目の建替えで取り壊されていたんです。

 

慌てて先方に電話すると、待合せ場所は、日比谷シャンテの1Fにある、

東京會舘直営のティールーム《カフェシャポー》だと判明。

「ごめんなさい。宝塚の人間なんで ( 対面の ) 日比谷シャンテのティールームがいいと思い、

 店名をはしょってしまいました。言葉足らずですみませーん。」

「こちらこそ」と、彼女に詫び、日比谷シャンテまでの500mひた走りました。

幸い、待合せ時間に遅刻することなく済みましたが、とても恥ずかったなぁ。

東京會舘の改築を知らぬなんて世事に疎く、粗忽まるだしですもの。

 

その時の《カフェシャポー》ももう閉店してありませんが、恥ずかしい私の東京會舘の話です。

 

 

印象的だった商品とエピソードをお話しして終わりにします

東京會舘のクッキー『パルミエ』と、スティックバイの『セサミ』は、父の土産でよく食べました。

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確かウチにも、紫のカトレアの絵がついた缶かんがあったと思います。

美味しかったなぁステックパイ。

何十年も変わらず、今でも販売されているらしいと聞き、また食べたくなりました。

 

 

クッキングスクールの話も感動的でした。

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出典:東京會舘のサイト「開校当時の写真」から

 

主人公の女性はクッキングスクールの卒業生でした。

スクールには母子で通う人もいるらしく、彼女も娘が入学すればいいと願っていました。

でも娘は興味がない様子。

そんなスクールの男性コースに、夫が通いたいと言い出します。

 

しかし夫は、教わった料理を家で作ろうとしない。

偶然、再開したスクールの先生 ( 現クッキングスクールの校長 ) に嘆くと、先生が言いました。

「そうですか、ご主人は今でも料理しませんか。

 実は 私たちが、男の生徒さんに必ず言うことがあります。

 お家で料理を作るなら、奥様にキチンとお願いしてください。

 許可がおりたら敬意をはらって使ってください。

 あるべき調理器具の場所を勝手に変えたりしたら駄目です。

 なぜならそこは奥様の場所だから」

 

うる覚えなので正確なセリフでないことをお許しください。

そして、結末は、、、

是非、本をとって楽しんでください。

東京會舘の人々の、建物や人や物に対する敬意に溢れたエピソードのひとつひとつに、

きっと感動されるはずです。

 

終わりにしますといいながら、もうひとつ <(_ _)>

2019年1月8日、東京會舘新本館 ( 三代目 ) が開業しましたが、

「前の建物の方が良かった」という声も多く聞くことでしょう。

 

本の中でも、旧館をしのぶ人、新館の取り壊しを嘆く人の描写が出てきます。

今度出来る新本館も、昔のシャンデリアや壁の意匠を重んじて残したりしているらしい。

でも、新しい施設には、そこに新しく関わる人の、新しい思い出が出来るはず。

建物が生まれ変わる度に、どんどん新たな思い出が増えていけばそれでいいのではないでしょうか。

建物の新旧にどう折り合いをつけていくのには長い時間が必要なのだと思いました。

 

 

実は『東京會舘と私』と同時期に、隈研吾さんに『建築家、走る』を読みました。

隈研吾さんは、2013年に歌舞伎座を建替え、この程 国立競技場を建替えた人ですが、

本の中でこう言っています。

「新しい建物は褒められない法則」があるのだと。

歌舞伎座や国立競技場を手掛けた当事者の意見として、説得力のある話でした。

 

ご興味があればこちらを⤵

歌舞伎座を建替えるという時、交流のある作家の林真理子さんが、「隈さんが勝手なことをやるんじゃないか」と心配している、などという噂が聞こえてきました。日本文化に関心がある人なら、次の歌舞伎座はどうなるかは、次の日本がどういう方向に行くかというぐらいに大切な話です。とにかく、ダメ出しされたら怖い方々ばかりだった  (笑)。

~中略~ 

さらに、街になじんだ建築の建替えというもう一つの困難も、そこにはありました。歴史のある文化施設のリニューアルでいえば、東京・南青山の「根津美術館」を手がけましたが、そのときに大変な緊張感で取り組んだことを思い出しました。

昔の建物に馴染んだ人は新しい建築を絶対に認めない、という法則があります。みんな「昔はよかった」なんです。

~中略~

その人間界の法則を十分に知りながら、新しい建築に挑まなければならない。勇気が要りますし、打たれ強くなければ、やっていけない。目の前の批評や評価にさらされても、びくともしない、長い射程のある歴史観、歴史哲学を自分の中に持っていなければならない。ましてや歌舞伎座という、日本人みんなのものといえる建築の建替えといったら、そのプレッシャーは何倍にもなります。

隈研吾著『建築家、走る』p.58より

 

建物ができたときに、みんなからいわれる悪口については、ぼくはある程度までは割り切っています。

第一、完成したときに絶賛される建物というものは、世の中にはほとんどありません。新しい建物とは都市の中で異物である宿命を背負います。

古い歌舞伎座を見慣れている人は、老朽化した建物の危険ではなく、年月が経た薄暗さや汚れにこそ親近感を持っていますから、新しい材料で明るく照明がついただけで、「これは歌舞伎座じゃない」と拒否反応を示すでしょう。

~中略~

でも、それでいいんです。建築とはそういうものですし、都市だったそういうものです。なぜなら、都市を作っているのが、人間という生き物だからです。生き物は、どんなに長い目で物を見ようとしても、結局は自分の生きられる短い時間のことしか考えられない弱い存在です。その短い時間を基準にして、いいとか悪いとかを、つぶやく。それが自分自身を含めての、生き物の宿命です。

隈研吾著『建築家、走る』p.76より

 

備考と資料 )

【※1】

大正11年に完成。

翌年 ( 大正12年 ) 関東大震災が起き、建物が完成してわずか一年で被災。

正確には十か月の被災だが、東京會舘は、大正12年の関東大震災と、

平成23年の東日本大地震と、二度の大震災を経験したことになる。

 

戦争に伴って東京會舘の建物は二度、働くものたちの手から取り上げられている。

一度目は、太平洋戦争前、大政翼賛会の本部になったこと。

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東京會舘旧本館は、1942年から1945年まで大東亜会館と名前も変えられている。

大政翼賛会は、近衛文麿が初代総裁を務め、東条英機がその後を継いだ公事結社。

発足は昭和15年 ( 1940年 ) 、日本はそこから太平洋戦争に突入していく。 

 

二度目は、終戦後、GHQに接収された。

GHQ接収時代の會舘の名前は “ アメリカン・クラブ・オブ・トーキョー ” 

 

GHQ関連⤵


クライスラー関連⤵

 

東京會舘のブログ⤵

 

東京會舘の古い写真⤵

 

 

とじ込みは例の、個人的な、つまらないカロリーです

【朝食 645kcal】

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五目かた焼きそば 645kcal

1290kcal ( かた焼きそばソース付き162g…586kcal、冷凍あさり50g…12.5kcal、冷凍いか66g…58.1kcal、冷凍えび47g…23kcal、牛肉111g…294.2kcal、ちくわ48g…58.1kcal、キャベツ212g…48.8kcal、玉ねぎ228g…84.4kcal、青梗菜177g…15.9kcal、しめじ46g…8.3kcal、いんげん38g…8.7kcal、油5g…45kcal、ラード5g…47kcal  ) の50%

付属ソースと相殺した調味料 57.6kcal

115.1kcal ( 片栗粉12g…39.6kcal、ウェイパー10g…40.5kcal、みりん5g…11.3kcal、オイスターソース7g…7.5kcal、牡蛎だし醤油5g…3.5kcal、紹興酒10g…12.7kcal ) の50%

 

【夕食 683kcal】

白飯 1.68kcal×180g…302kcal 

春巻き 381kcal

 

【その他 18kcal】

コーヒー ( 6kcal ) × 3杯…18kcal

 

【総摂取カロリー】 1346kcal

【運動消費カロリー】310kcal

【基礎代謝】 1342kcal

 

1346kcal-310kcal-1342kcal=★306 昨日★2♡3477+本日★306 =★2♡3783