有川著「アンマーとぼくら」を読みました。
有川さんの本を読むのは実に6年ぶり。
自衛隊シリーズ、図書館シリーズ、三匹のおっさん、シアター! 阪急電車などなど
殆どすべての作品を愛読してきましたが、久しぶりです。
久しぶりの有川ワールドに震え、感涙しました。
この本は、休暇で沖縄に帰省したリョウが、「おかあさん」と3日間島内を観光するお話です。
しかし。
読み進む内「おかあさん」は継母で、実母は北海道で亡くなっていたことが分かってきます。
「お母さん」と過ごすリョウの3日間には、回想と夢とが複雑にからみあって紡がれています。
有川さんの筆を通すと「人とはこんなにも愛おしいものだ」と、いつも感動させられます。
そして今回もまた、有川ワールドの可笑しさと暖かさでその感動を存分に味あわせて貰えました。
《ざっくりあらすじ》
リョウの父-カメラマンの坂本克己は、妻の死を受け止められず、撮影旅行で家を空けるようになり、
死後一年も経たないうちに「晴子さん」に恋をします。
晴子さんは、沖縄で撮影ロケ地のガイドをしてくれた人でした。
父は息子のリョウを連れて沖縄に渡り、晴子さんと再婚を決意。
しかしリョウは沖縄に馴染めずにいます。父が北海道や亡母のことを忘れろと言うからでした。
父が北海道を邪険に言えば言うほど、父子の溝は深まりました。
「お父さんを許してあげてね、お父さんは子供なだけ」
それは死んだ母がリョウに残した言葉でした。
やがてリョウは、実母を「お母さん」継母を「おかあさん」と呼んで折り合いをつけるようになります。
そうして4年、父が亡くなります。台風の中、カメラマンの父は引き止めるおかあさんの言葉を軽視し、 こっそり出掛けて命を落とすのです。残される者のことも考えず、最後まで勝手な人でした。そんなしょうもない父でしたが、女を見る目だけはあったなとリョウは 思いました。
実母を亡くし父をも失ったリョウは、「おかあさん」を残して東京で自立の道を選びます。
冒頭の《おかあさんとの旅行》は、そんなリョウが晴子さんと過ごした3日間です。
これは神の島-沖縄で暮らした、ダメ父と晴子さんとリョウの愛のファンタジーです。
私は沖縄に行ったことがありません。
沖縄の、うだるような暑さも、透き通るような海も、抜けるような空の青さも、恐ろしい台風も、ドラマやテレビで知るばかり。本作からも沖縄の素晴らしさが伝わってきました。これを読んで実際に訪れてみたくなりました。晴子さんのガイドが見事だったから。
辻々の石敢當を探し、
鍾乳洞を散策し、
シーサー造りをし、
北谷町のベーコンチーズデラックスバーガーを食べ、
勝連城の石垣をよじ登ってみたい。
本のカバーも、沖縄を象徴する魅力的なものでした。
そして、、、カバーをはずして驚きました。
もうひとつの沖縄がそこにあったから。
移住した当時のリョウが、沖縄のことを語るこの一節が妙に印象に残ります。( p.40)
当時のぼくは沖縄の何もかもが気に入らなかった。
開けっぴろげに輝く太陽も、海風が連れてくる湿気も、スコールのような強い雨も、ピリッと辛い島らっきょうも、苦いゴーヤも、ツンと癖のあるにおいがする市場の雑多な喧騒も、市場に当たり前のように並んでいる豚の頭の皮も、これを食べるなんて信じられないようなカラフルな色の魚も。
見事に端的に、リョウの心境を表している、こんなところにも有川さんの筆力を感じます。
また、父親がどんなにか子供っぽいかという数々のエピソードも笑えます。
とにかくダメ父っぷりが満載なのです。
ストレスたっぷりの今だから余計に、この本に描かれた突き抜ける明るさと、人への思いやりと情の深さにノックアウトされました。
ただ明るいだけではなく、しんみりとじわーっと心を揺さぶる作品でもありました。
作者は「アンマーとぼくら」を書くにあたり、かりゆし58のこの曲から着想を得たそうです。
読了後、それを聞いてみるのも一興かと。
本日の夜ごはん
新玉ねぎとトマトのサラダ、栃尾揚げ、ジンギスカン、春菊
春菊って、しぼるとこんなんなる。
もっと広げて味わえばよかったにーーーっ
ジンギスカンには、いつもレタスとかサラダ菜とかの上に乗せるのに、、、雑。
味も色合いもひと工夫ないと寂しいものぞ。