Garadanikki

日々のことつれづれ Marcoのがらくた日記

空飛ぶ馬 織部の霊、砂糖合戦

 

北村薫著『空飛ぶ馬』を貪るように読んでいます。

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昨日は、織部の霊。

今朝は、砂糖合戦を読了。

 

この作品は落語家 円紫さんと女子大生の「私」が、日常のさりげない状況の中から、

隠れた真実を探り出していくという短篇集です。

ミステリーといっても、殺人事件もない、ただただほんわかした世界感がいいのです。

 

一番の魅力は、

二人の会話に出て来る本や史実や芸能 ( 主に落語 ) の演目がポンポン飛び出していくところ。

円紫さんの博学さも凄いが、女子大生の「私」の読書量も向学心も素晴らしく感性の豊かさも素敵。

「私」のような女子大生が話相手だったら、師匠も愉しかろうと思います。

 

 

「私」は、円紫さんの大ファンなので、師匠の噺も沢山聞いていてキチンと感想も語れます。

その感想は滅茶苦茶 具体的です。

例えば、最初に会ったキッカケの座談会で、「私」はこんなことを言い出します。

「円紫さんは『樟脳玉』もおやりになりますね」

「はい」

「ということは、あのお話しもお好きなんでしょう」

「そうですね」

「『夢の酒』と同じですわよね、ある意味では」

    ~中略~

円紫さんは、ちょっと黙っていたが、それから何だか寂しいような笑いを見せると、ゆっくり頷いた。

「あの捻兵衛(ねじべえ)と『夢の酒』の女房は、確かに同じ人間ですね」

手放しの愛情、己れを虚しゅうするようなそれは、渇仰(かつごう)されるべき一つの境地のような気がする。

「泉鏡花は好きな作家の一人なんですけれど」

いかにも文学少女めくけれど本当に思っていることなんだからいいだろう、と私は切り出した。

「『天守物語』というのがありますよね」

「玉三郎のを観ました。あの頃、あなたはいくつなのかな」

ちょっと記憶にない。

「あなたは本ですね」

「ええ、私はこの間、読んだんです。最後に主人公達がこの世の俗悪なるものに圧し潰されそうになったところで、出て来る人がいましね」

近江之氶桃六(おうみのじょうとうろく)、僕が日生で観た時は小沢栄太郎がやってました」

「あの人が、《泣くな、泣くな、美しい人たち、泣くな》といって出て来るところで、円紫さんのことを思ったんです」

「ほう」

円紫さんはこっちがどきりとするぐらい真面目な顔で、私を見た。

「この言葉にこめられたような気持ちで『夢の酒』や『樟脳玉』をやってらっしゃるんだろう、って思ったんです」

 

私ごとですが、30年も昔の、あることを思い出しました。

ある演劇の稽古場にお邪魔する機会がありまして、稽古を見学出来たんですが。

演出家は、一つ年上の外国人男性でとてもフランクな人でした。

通訳 を介して彼は私に感想を求めました。

私は、こんなことを。。。

「義娘のヒルデが海の方を向いて立ちつくす、あの後姿が印象的でした。

 エリーダとリンクして見えました。

 エリーダの未来を 想像しちゃいました。

 彼女たちはここから出て行けないんだな、っていう《もどかしさ》みたいなものを、

 見せつけられたような気がしてドキっとしました」

 

とりとめのない私の話に、演出家の顔が少し変わった気がしました。

前述の《円紫さんはこっちがどきりとするぐらい真面目な顔で、私を見た》みたいに。

演出家も噺家も、作品に独自の工夫や解釈を盛り込みます。

もちろんそこに《気づきました》という感想は、彼らをひどく喜ばせるでしょう。

しかしその時の顔は、ふいを衝かれたという顔でした。

無意識に演出した役者の立ち位置や何気ない演出に触れられた時の顔だったのかな、と思いました。

 

 

 

噺家も演出家も含めてモノづくりをする人は、外部からの刺激を求めているのでしょう。

アンテナをピンと張っていたり、観察力が鋭いはずです。

この本の謎解きは、円紫さんの観察力のなせる業ですが、「私」の動作や話も一役買ってます。

なんたって「私」と会話している時の円紫さんは御機嫌で楽しそう。

他愛ない「私」とのやりとりから円紫さんは多くの刺激を受けているのが読み取れます。

もしかしたら「私」の存在が、円紫落語にもいいエッセンスになっているのかも知れません。

 

そんな「私」の可愛げも、魅力的

知ったかぶりをしない。知らないものにはちゃんと知らないという。

そうすると円紫さんも、大学教授も喜ぶわけです、教えてあげたくなる。

そこがシリーズの二人の長い付き合いの秘訣ではないかと、

あらやだ。

まだ最初の一冊の二つの短編しか読んでないのに、「何を言い出すことか」ですよね。

m(__)m

 

 

とにかくこの本、面白くて、とまりません。

作品には、本や史実や人物や落語の演目がポンポン出てきます。

もしそれらが知らないものだらけだったら、流石に置いてかれた感があってつまらないでしょう。

全部知っているなんて人はいないでしょうが、知ってるか知らないかくらいの絶妙な量が、

人の心をくすぐるのではないでしょうか。

その知ってるvs知らないの量の丁度よさが心地よい気がします。

 

ちょっと知ってること ( 本 ) があると、おっと驚き。

 天守物語、外科室

それが凄く好きなこと ( 本 ) だと、うんと感動し。

 マクベス きれいはきたない きたないはきれいに小躍り

 三島霜川 解剖室におおっとのけぞり

 文七元結ときいて、円紫さんてどんな顔なの?と想像

知らないこと ( 本 ) だと、興味がつのる。

 

そうして私はドツボにハマるのです 

 

とりあえず今、気になるのは、落語の『樟脳玉』と、

 

 

フリードリッヒ・デュレンマットの『ロムルス大帝』です。

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本日の夜ごはん

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たことブロッコリーとカマンベールチーズのアヒージョ

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得意になって作ったのだけれど、なんか変。

「何か足りないんじゃない?」と言われてから気がついた。

最も大事なものを忘れていた。

にんにく・・・

何たる失態  _| ̄|○

これはただの油煮

 

 

 

気を取り直して〆です

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スペイン産 イベリコ豚肩ロース焼肉用。

これで853円とは、八百幸、おそるべし。


焼いてみんべ

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あえて切らずに食べます

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おいすいーーーー悶絶しそうだ

 

この焼肉プレートのためにあるような食材

サイズもぴったり

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脂が甘くておいしいのです。

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そうなったらやっぱりごはんでしょう

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新米の時期だし、美味しいのはわかってる。

でも、今年の焼肉の頻度はヤバ過ぎるでしょう。