『一億円のさようなら』を読了しました。
丁度、NHKでドラマ化されていたからか、図書館の順番待ちは大変なものでした。
順番が回ってきた本は、小口の中央が盛り上がってしまい、グズグズ。
人気の本だったのがわかります。
加能鉄平は妻・夏代の驚きの秘密を知る。
30年間、夏代は伯母の巨額遺産を相続、そしてそれは今日まで手つかずのまま銀行にあるというのだ。その額、48億円。結婚して20年。なぜ妻は隠していたのか。日常が静かに狂いだす。もう誰も信じられない。鉄平はひとつの決断をする。人生を取り戻すために大きな決断を。夫婦とは、家族とは、お金とは。
上は、徳間文庫の表紙に書かれていたもの。
内容を端的に表わしているので引用しました。
この本は、読んでいる間に色々な感情を呼び起こさせてくれました。
鉄平に対する同情。夏代をはじめとする家族への憤慨。
新天地での鉄平の奮闘に対する爽快感。そして最後に驚愕と呆然。
読んでいるうちは面白かったのですが、読了後に何ともいえぬ後味の悪さを感じました。
それが狙いなのかも、読者にそう思わせることは成功なのかも知れません。
加能鉄平は、社会からも理不尽な目に合いまくります。
最初に勤めていた会社から理不尽なリストラに合い、地元・福岡に戻って化学製品総合メーカーに勤務して七年。会社は祖父が創業し、先代社長は叔父、現社長は従弟が勤めているんですが、親族である鉄平は社長から邪魔者扱いされています。
会社からも家庭からも、鉄平は蔑ろにされます。
大学生の子供たちは自分のことで精いっぱいで、親の援助に対する感謝の念は持てない。
著者の白石さんは、これに関連して面白いことを言ってらっしゃいました。
「妻は、家族という会社の経営者です」と題して
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
「父親って、子育てが終わりに近づいても達成感が余りないんですよ。
サンタクロースのプレゼントを買うのは自分でも、それを子供たちに配るのはぜんぶ妻だという根っからのひがみもありますから ( 苦笑 )。そういう時に家族から邪険にされたり除け者にされたりすれば、どうしたってやけっぱちになっちゃう。
この小説でも、問題を起こして鹿児島に逃げた長男に、家族会議をやるならスカイプにしようと言われて、その瞬間、彼は気持ちがプツンと切れる音を聞いてしまうんです」
女性ながら私は、夫・鉄平の立場でこの小説を読みました。
「そうそう、そうだよなぁ女って」と。
この作品では読者は男女を問わず、鉄平の方に感情移入するかも知れませんが、
同時に私は夏代が嫌いになりました。
なんて嫌な女だろうと思ってしまいました。
自分の悪いところは差し置いて、専ら自分の論理でモノを進める。
悪かったと非は認めても「後悔してるわ、もう一回チャンスを頂戴」と、当然のようにシャラッと言う。
そんな妻への信頼が失せ、家を飛び出した鉄平は新天地が活躍しますが、
そこにも夏代はやって来て、戻っていかなければならないようなことになる。
※ 物語は、鉄平と夏代がこの先どうなるかの前で終わっています。
白石さんは「妻は家庭の経営者」とおっしゃったが、
私は「妻が飼い主で、夫が犬のようだ」と感じます。
夫が家出をしても、それは妻が犬のリードを長く伸ばしただけ。
「もういいでしょう?」とでもいうように、リードはシュルシュルっと縮められてしまう。
読了後、呆然としたのは、そんなイメージを持ったからです。
夏代と鉄平は愛し合っていたのだろうと思います。
最後の鉄平の台詞からも、彼は本当に夏代が好きなんだと思う。
しかし私は、そもそも何であんな女に惚れたのか、そこんところから理解できないのです。
処女性を云々するつもりはないが、初めて出会った時、夏代は鉄平の営業先のドクターの愛人だった。
鉄平は、ドクターから不倫のアリバイ作りをさせられていた。
そのドクターの愛人を鉄平は好きになり、夏代の方もさっさと鉄平に乗り換えている。
夏代のしたたかさを考えれば、彼女が「後悔しているわ、戻ってきて」と言っても、
信用しちゃいかんのではないだろうか。
ドラマではそんな夏代を、 安田成美が好演しています。
安田成美の、笑顔の裏にどんな感情を持っているのかわからないような感じがピッタリです。
恐ろしいなぁと感じさせてくれました。
※ 一話だけを見て、残りは本を読んでからと思って中断してます。
「ありえへんやろー」と思うこと
読み始めて、こんなことはありえないだろうと、しばしストーリーに乗れなかった問題があります。
弁護士さんの件です
鉄平が風邪で会社を休み、自宅にいると弁護士から電話がかかってくる。
夏代の相続した財産を管理していた弁護士が亡くなり、新任だという弁護士からなんですが、その弁護士は鉄平にペラペラと財産の額まで話してしまいます。
夏代の相続した遺産は、鉄平と結婚する以前のもので、夏代の個人資産です。
夫婦といえども、妻の承諾なしに夫に話ししてしまう弁護士はいるのだろうか。
普通に考えて、ありえへんと思うのですが、法律的にはアリなんでしょうかしらねぇ。
本日の夜ごはん
MOURI が口の中を噛んだとかで、ずっと痛ぇ、痛ぇが続いていて、
硬いもの、塩分・スパイスが無理というので、すいとんにしました。
野菜もやわらかめにしてあります。
もう5日も痛がってまして、昨日やっと口内炎の痛み止めの薬を買ってきました。
喋るのも辛いとかで、何日か大人しいこと。
彼が喋らないことで、いつもはどんなに話をしあっているかに気づきました。