Garadanikki

日々のことつれづれ Marcoのがらくた日記

門井慶喜 著『家康、江戸を建てる』

 

門井慶喜 著『家康、江戸を建てる』を読んでいます。

f:id:garadanikki:20211106153036j:plain

秀吉から国替えを促された家康は、秀吉に駿河、遠江、三河、甲斐、信濃を渡し、

関八州をもらって江戸の町づくりを始めた。

太田道灌が築いた江戸城は、道灌が根城にしたころには関東の名城と呼ばれたこともあったらしいが、

家康が入城を決めた頃には荒れ寺のようなものだった。

 

そんな江戸の町を、家康が整備していく様子が、五つのエピソードでつづられます。

 

  • 第一話 流れを変える
  • 第二話 金貨を延べる
  • 第三話 飲み水を引く
  • 第四話 石垣を積む
  • 第五話 天守を起こす

 

それぞれの章で、家康から命を受けた男たちが奮闘します。

第一話は、水浸しの沼地だった江戸城下に人が住めるように、利根川を曲げる大工事をする話。

第二話は、秀吉が作っていた十両大判の代りに、万人が普通に使える一両小判を作らせる話。

第三話は、江戸の人々の飲料水をまかなう為、神田上水を整備をする話。

 

とあり、四~五話と続きますが、ひとまずここで足を止め、この記事を書いています。

 

第三話の上水の話が、前に調べていた玉川上水とリンクして面白かったからです。

玉川上水は、初代庄右衛門・清右衛門という地主の百姓が取り立てられます。

彼らは玉川上水を完成させた功績により玉川の苗字と帯刀を許されます。

そして水元の「永代御役」になっています。

 

それと同じことが、神田上水でも既に、されていたのです。

本書では、神田上水を引いたのは「地元の名主・内田六次郎」としています。

つまり玉川上水の二人と同じように、百姓が起用され出世したのです。

ところが、玉川上水の初代庄右衛門・清右衛門らの子孫も、神田上水の内田六次郎の子孫も、

後に「永代御役」を罷免されています。

 

用水路を作るには、水源となる地元の同意が不可欠。

上水完成後の水質管理においても、そこで身投げが出ないように、生活排水でよごさないように、地域ぐるみで監視する必要がある。そうなると遠方からやってきた武士よりも、《地元の顔役》に担わせる方がいい。

 

そんな理由で、彼らは任命されたのでしょうが、完成したあかつきには「百姓ふぜいがそんな役職につきおって」という武士の嫉妬にあったのではないか。

当時のパワーバランスは、身分制度もあり現在より遙かに厳しいものだった。

徳川家康はそんな階級差別をとっぱらい、人々の競争意識を煽って仕事させたのでしょう。

 

 

因みにこの本は、ドラマ化されていたようです。

f:id:garadanikki:20211107094958j:plain

ちょっと面白そう。

是非、NHKオンデマンドで観てみよう!

 

 

さて。

当時の上水制度のことを詳しく調べていらっしゃる方の記事を見つけました。

『江戸と座敷鷹』のMIZUKI さんの調べによると、

神田上水は《何時、誰がした》という件には「二説ある」らしい。

 

sito.ehoh.net

sito.ehoh.net

 

MIZUKI さんの調べでは、

三鷹の地に訪れて神田上水を命じたのには、

三代将軍徳川家光」という説と「家光ではなく家康」という説があるとのこと。

また、実際に関わった人物には、

家康が関東に入国した天正18年 ( 1590 ) に大久保藤五郎に命じたという説と、

家光が将軍職にあった寛永年間に内田六次郎が開設したという説という二説があるとのこと。

古文書なと昔の資料が消失していて、今となっては何が正しいかわからないそうです。

 

因みに本書『家康、江戸を建てる』では、

大久保藤五郎・内田六次郎の両名をうち揃えて登場させています。

藤五郎は溜池から水を引かせたことにし、六次郎に神田上水から水を引かせたことにし、仕上げの工事に春日与右衛門という技術者を登場させています。

 

春日与右衛門は、年配の藤五郎にも、百姓あがりの六次郎にも丁重な態度で接し、

「おふたりには、味見をしていただきます」と言い、両名に花を持たせます。

江戸に到着するまで上水の水はいろいろな環境にさらされる、水質そのものに何らかの変化があるかを試飲して欲しいというのです。

 

六次郎は腕をまくりあげて、「そんなら、わしにまかせろ。七井の池の水だったら赤んぼうのときから舌に味がしみついてる。ちょっとの差もすぐわかるべ」

「牡丹餅と羽二重餅の区別もつかぬ男が、何をぬかす」

藤五郎は舌打ちをした。六次郎は、

「おぬしは菓子をこしらえておれ」

「菓子の調整にこそ水の味ききは必須なのじゃ、おぬしこそ牟礼で米でもつくっていろ」

「米は万穀の基だべ」

「おぬしの米は万難の種じゃ」

口論しつつ、しかしふたりとも顔はおだやかだった。一種のスポーツをたのしむ感じか。新時代の平和の風にそまったというよりは、仕事をおりた者どうし、相通じるものを見いだしたのだろう。

 

なんとも、可愛らしい男たち。

『家康、江戸を建てる』引き続き第四、第五話も読んでいきますが、

読み終えてしまうのが勿体ないような楽しい物語です。

 

 

 

本日の昼ごはん

金ちゃんラーメン

f:id:garadanikki:20211104080026j:plain

 

 

本日の夜ごはん

ウクレレレッスンで遅く帰宅したMOURI の為に、肉豆腐

f:id:garadanikki:20211104224308j:plain

22時過ぎの酒のつまみなので、温かくて消化の良さそうなものにしました。

f:id:garadanikki:20211104224304j:plain