図書館から借りた吉田修一さんの本が驚くほど厚いので超大作なのかと頁をめくると、
長編小説ではなく、全集の4巻目だった。

昭和の作家のものはあるが、昨今の流行作家の全集は珍しい。

第四巻「長崎」

吉田修一さんの出身が長崎なので、長崎にまつわる小説が集められているのだろう。
吉田さんの本として私が初めて読んだ『横道世之介』も収蔵されていた。
「破片」「flowers」「キャンセルされた街の案内」と読み進み、
「台北迷路」という作品に目がとまる。
【内容】
作家の道彦と泉は付き合い始めてそろそろ一年、一緒に暮らすようになって半年になるが、香港、パリと一緒に旅行し、今回訪れたのは台北だった。
二人は、饒河街夜市(ラオホアジエイエスー)を訪れるが、泉が知人らしき台湾人男性と遭遇。
泉は道彦をその場に残し、台湾人男性のもとに歩み寄り会話を交わす。
その後すぐに戻ってきたのだが、男性についての説明が泉からなく、タクシーに乗り込んだ。
道彦が「夜市であった男性は誰か」と尋ねると、泉は「昔の恋人って言ったら、驚く?」と意味深な発言をする。
泉と台湾人男性は5年前に台北で5日間だけ過ごしただけの関係という。
その後2人は、台北で24時間やっている書店に行く。
書店についても道彦はまだ泉と台湾人男性のことにこだわって彼女と口論になってしまう。
書店には道彦が書いた小説の初の翻訳本が並んでいる。
本を開くと漢字の羅列で「泉凝望著那個男子漢字好長時間,突然間男子倏地擡起頭來。」と書かれている。
道彦は自分の書いた本を一文字一文字目で追うが、自分が迷路に迷い込んだような気持ちになり、本を閉じた。
この作品の初出は2004年12月で、先日読んだ『路』の初出より5年前のものだった。
つまり作者は、泉という日本人女性と台湾人男性が過ごした5日間の設定を、
『路』に活かしたではないだろうか。
『台北迷路』のような経験が著者に実際にあったかどうかはさておき、
『路』でいうなら、春香の恋人側から物語がつづられていることが興味深い。
先日『路』の感想文で「春香の仕事が腑に落ちない」というようなことを書いたが、
それは彼女の仕事を商社マンにしたことに無理を感じただけで、春香が、エリック ( 台湾人の青年 ) と日本人の恋人・繁之との間で悩む部分はよく描かれていたと思う。
『路』の登場人物の中でも、新幹線と直接つながりのない葉山勝一郎という人物のエピソードは感動的だったから、やはり小説の内容を新幹線に寄せていくのが難しかったのではないかと思った。
因みに『台北迷路』は単行本にはなっておらず、「エソラ」という雑誌の第一号に収刊されている。

追記・
小説の最期に書かれていた「泉凝望著那個男子漢字好長時間,突然間男子倏地擡起頭來。」の意味が気になって調べていたら、このことに言及されていた方のサイトを見つけた。
上記を運営されている「ユウ」さんのお話によると、
「泉凝望著那個男子漢字好長時間,突然間男子倏地擡起頭來。」を日本語に訳すと、
「かなり長い間、泉がじっと見つめていた男が、やっとこちらに目を向けた。」という意味で、『台北迷路』の冒頭文と一致するのだそうです。
本日の昼ごはん
ざるうどん

本日の夜ごはん

トマトは紅茶葉で和えたサラダ

味噌汁は甘えびの殻でとったもの、今回はネギを散らしました
