バロネス・オルツィ 著『紅はこべ』読了
【あらすじ】
1792年のフランス革命真っただ中のフランスは、ただ貴族や聖職者だと言うだけでギロチンにかけられる毎日だった。
そんな中、鮮やかな手口で貴族を救い出しイギリスに亡命させる謎の一団が現れる。革命政府は捕えようと躍起になるが、彼らは政府の追跡を逃れ貴族と共に逃げ去ってしまう。残された紋章からいつしかその一団は「紅はこべ」と呼ばれるようになる。
「紅はこべ」のリーダは、ごく少数のメンバー以外に正体も知らなかった。
「紅はこべ」がイギリス貴族らしいとめぼしをつけた革命政府はその撲滅に乗り出し、全権大使の名目でショーブランを英国に派遣する。ショーブラン一派は、まずアンドリュー卿とアントニー候を襲撃し、二人が「紅はこべ」のリーダーと接触する状況を作為する。
さらに、ショーブランは英国社交界の花と謳われるマルグリート・ブレイクニーに接近し彼女に取引をもち掛ける。マルグリートの兄・アルマン・サンジュストが革命政府に対して批判的な意見をつづった「手紙」を入手した、この手紙を無かったことにして欲しければ「紅はこべ」捜索を手伝えと脅迫したのだった。
兄の命がかかっているマルグリートはやむなくショーブランに従い、舞踏会に参加した折、アンドリューの手紙 ( 指令が書かれたもの ) を盗み読み、リーダーとの接触の時刻・場所をショーブランに教える。だがその時刻その場所で居眠りをしていたのは彼女の夫で愚鈍なパーシー・ブレイクニー卿だけだった。
崇拝する「紅はこべ」を窮地に陥れてしまったことを後悔するマルグリートは、夫の馬車で邸宅に戻る。ブレイクニー夫妻の間には冷たい溝があったが、この夜、夫妻は話し合いの機会を持ちマルグリートは夫への愛を確信する。そして兄を救うため「紅はこべ」のリーダーの情報をショーブランに教えてしまったことを夫に相談する。パーシー卿は彼女の兄の救出を約束するが、急用で北部の領地に出かけてしまう。
翌朝、マルグリートはたまたま開いていた夫の書斎に立ち入り、夫が「紅はこべ」のリーダーであることを知る。自分の愚かさを恥じたマルグリートは急いでロンドンに急行し、アンドリューと面会して事情を説明、二人はドーヴァーから英仏海峡を越え、カレーに向かう。
と、こーんな感じで、フランスの革命政府のショーブランと、イギリス貴族で実は「紅はこべ」のリーダーであるパーシー卿との追いつ追われつの戦いが続いていく。
パーシー卿は、変装したり大胆な知力を持って危険を回避していく。
このスリルあふれる痛快なストーリーが人気となり続編も出版され、舞台化・映画化もされている。
翻訳は江戸川乱歩さん
この本の翻訳者は江戸川乱歩さんだった。
文体には随所に乱歩節が散りばめられ、まるで乱歩作品を読んでいる錯覚に陥った。
それはそれで面白かったが、有名な村岡花子版でも読んでみたくなった。
強く感じたこと
この本を読んで一番に感じいったのは、
《小学生の時に読んでいたら、物事を多方面から捉える良い訓練になっただろう》
ということだった。
歴史 ( 特に世界史 ) に不勉強な私にとってフランス革命は、肯定的な印象しかなかった。
フランス革命とは旧支配者 ( 宗教家や君主、貴族 ) から弾圧された国民が立ち上がり自由を勝ち取った出来事で、資本主義が確立したわけだし、法の下の平等を勝ち得た善行だと思っていた。
だがその後に起きたのは、長年迫害を受けてきた民衆が過激化し、貴族とみれば罪があるなしに関わらず血祭にあげることに快感を覚えるような恐ろしい世界だった。つまり本作ではフランス革命を悪としてもとらえている。
本の背景には、異常な心理状態に陥ってしまった当時のフランス国民を皮肉っている部分もあり、民衆暴力の残虐性や恐ろしさもある。私はこの本からは「物にはいろいろな見方がある」ということを気づかされた。
作者について
作者のオルツィは、ハンガリーの由緒ある男爵家の出で、一家は小作人の反乱によりブタペストに移り、後に彼女はブリュッセルやパリで教育を受け、ロンドンに移りイギリス国籍を取得した女性だ。
そんな経歴の彼女が、110年前のフランス革命を題材にしたのは、民衆に対する複雑な想いもあり、貴族の目線で物を書きたかったのではないかだろうか。
それは本作品の冒頭部分に如実に現れているように思った。
きょうも、この首切り台の上で百人以上の貴族たちが、首を切られて、死んでいったのである。
広場をうずめつくして人々は、この恐ろしい死刑の様子を見て、すっかり興奮し、まるで気が狂ったように口々にわめき叫んでいた。
平和ないこいの場所であったパリの町の広場が、血なまぐさい死刑場になってしまったのはフランスに大革命が起こり、政治のしくみが、がらりと変わったためである。
それは、今から170年あまり前の1793年9月、当時の国王や貴族、金持ちによって占められた世の中に、多くの人民の不満が爆発した、フランス革命の中でも、もっとも恐ろしい時代のできごとであった。
国王ルイ16世は、すでに革命派の人びとによって殺され、つづいて、これまで国王に仕えてフランスの政治を動かしていた貴族たちは、かたっぱしから捕らえられ、こうして毎日のように殺されていったのである。
革命派の人びとは貴族たちを《人民の敵》と呼び、あらゆる悪口をならべたてたので、国民は貴族の顔を見ただけで、
「死刑にしろ、ギロチンにかけろ」と、わめきたてるようになった。
~中略~
こうして、毎日血なまぐさい死刑を見物しているうちに、人びとの気持ちは、しだいにすさんできて、人間としての暖かい思いやりの心を失い、良いことと悪いこととのけじめもつかなくなってきた。
人びとは、毎日、男、女、老人、子どもの区別もなく、貴族が殺されるのを、まるで見世物でも見るように面白がって見物し、興奮するのだった
p.12
本日の昼ごはん
オムライス 私のと彼の盛りが微妙に違う
本日の夜ごはん
鶏だしスープに、もずく酢とトマトでちょっと酸味の効いた味
沼津のお通しを真似た最終系
最近、三品盛の真ん中の みょうがとなるとが気に入っている
カリフラワーは REALマヨネーズで💛
全体図
メインは鶏カツです
どう見ても二人分ではないな (;^_^A