Garadanikki

日々のことつれづれ Marcoのがらくた日記

読み比べ

 

『巌窟王』を読み比べて、楽しんでいる。

最初のは、小学館名作文庫 ( 児童書 ) 西條八十 訳。

後の方は、創元社 世界大ロマン全集 木村庄三郎 訳。

 

 

 

二つを読み比べてみると、意外にも西條さんの方がかなり入念に書き込んでいる。

冒頭の部分だから丁寧に主人公の様子や船の状況を説明したかったのだと思われる。

原書は18巻からなるものなので、どちらの日本語版も全部の情報は収めきれない。

よって訳者や出版社が取捨選択して話の筋をまとめなければならないはずだ。

どこを切って、どこを生かすかが見せ所か。

 

どちらが読みやすいかではなく好みの問題になろうが、

私は最初に小学館名作文庫を読んだので、導入部分の丁寧さが、話の出だしとしてわかりやすくて助けになったと思う。

 

 

小学館名作文庫 西條八十 訳

 1815年2月14日のその朝のこと。⸻⸻地中海にのぞむ南フランスのマルセイユ港の空は、まぶしいほど美しいコバルト色に晴れわたっていた。白いちぎれ雲がいくつも、冷たい風にふかれて、青空にハンケチをまいたようにひるがえっている。

 いましも、気味が悪いほどのろのろとして船足で港にはいって来たのは、三本マストの大型はん船ファラオン号である。これはマルセイユ港でも指おりの大型ごうか船で、遠路はるばるたくさんの荷物を乗せて、ようやくふるさとへたどり着いたところであった。

「ファラオン号の様子がおかしいぞ。ばかに元気がないぜ。」

「うん、いくらつかれているといっても、じぶんの港だ。もっといせいよく、はいってこなくちゃあね。」

 岸ぺきに出むかえた群衆の中に、こんなひそひそ声のささやきがきかれた。

 それをそばで聞いていたのはファラオン号の持ち主、モレル氏だった。はげあがった額に、人のよさそうな細い目が、ぱちぱちとまばたいていた。いまさら他人にいわれなくても、船のすがたをみとめたときから、いちはやく船の不安な様子に感づいていた。

「なにか、いやなことでも起こったのではなかろうか。もしや、商売にひびくことだったら・・・。」

と、モレル氏は、もうそこにじっとしていられない気持ちであった。モレル氏は身をひるがえして群衆からはなれると、小走りに岸ぺきをくだっていった。そして海岸にていはくしている一そうの小船に飛びこむなり、

「おい、ファラオン号へやってくれ。大至急だ。」とさけんだ。

 モレル氏を乗せた小船は、ファラオン号めざして、やのようにすべり出した。すでにそのころ、ファラオン号は、もう港のまん中へんまで来ていた。

 その船首で、さっそうと水夫たちを指きしているのは年のころ十八、九さいの青年であった。せいはすらりと高く、黒ビロードのように美しいつやつやとしてまなざしを持ち、かみはまっくろである。体格もりっぱであり、ひとめにも、そのすがたには、子どものころからき険と戦うのになれきった人だけに見うける様子がただよっていた。その人こそファラオン号の一等運転手、船長代理のダンテスであった。

 たちまちモレル氏の小船は、ファラオン号に近づいた。

「おうい、ダンテス君、どうかしたのかね。船の動きがとてものろのろしていて元気がないね。」

 ダンテスは礼ぎ正しく、モレル氏に敬礼してから、はきはきして声で、

「船主さん。取返しのつかないことが起りました。チビタ・ベキアのおきあいで、あの勇かんなルクレール船長がなくなったんです。」

 

創元社 世界大ロマン全集 木村庄三郎 訳

 1815年2月28日午前、三本マストの帆船、ファラオン号が、マルセイユ港の狭い入口をはいって来るのを、波止場の群衆にまじって、じっと眺めていた一人の男は、やがて、もう待ちきれなくなったというように、小舟に飛び乗ると、二人の水夫に命じ、全速力で、ファラオン号めざして漕いで行かせた。

 ファラオン号のへさきには、一人の青年が立って、船の針路を見守ったり、水夫たちに命令したりしていた。年のころは十九か二十か、背のすらりと高い美丈夫で、その、りりしい面差しには、不断に危険と戦う決意と沈着とが現れていた。

 青年は、矢のように漕ぎ寄せて来る小舟を認めると帽子をとり、甲板のはしに近づいて身を乗り出した。

「やあ、ダンテスか!」小舟の中の男は、青年を見あげながら叫んだ。「なにも変わったことはなかったか?」

「ああ、モレルさん、取返しのつかないことが起りました。ルクレール船長がなくなられました。チヴィタ・ヴェッキアの沖合で・・・」

 

 

 

 

本日の昼ごはん 2024年12月20日

ナポリタン

 

 

本日の夜ごはん 2024年12月20日

骨付き鶏肉の鍋

鶏肉はいつも、練馬IMAの神田染谷で調達するのだが、最近骨付き鶏肉が売り切れている。

お店の方に聞くと、火・木・土の午前中にしか入荷出来ていないので、

それ以外の日には品切れになってしまうらしい。

 

ということで今回も入手できず、今日の鶏鍋は他店のもの。

あらーざんねん 少し鶏臭さがある。

やっぱり鶏の、特に骨付きは神田染谷がよろしいようだ。

 

MOURI は、べったら漬けが好きなようです。

なにげになぽりたん・・