昨年から、巌窟王の翻訳の読み比べを愉しんでいる。

最初に読んだ小学館版 ( 西條八十 訳 ) でこの作品に魅了されたが、ところどころ話が飛んでいることに気づき、創元社版 ( 木村庄三郎 訳 ) を読んでみた。
創元社版は、小学館版と違ったところがふくらんでいることがわかり、原作はどうなっているのか気になり出した。
原作はもっと長い話らしい。
1844年から1846年にかけて、フランスの当時の大手新聞のJournal des débats(ジュルナル・デ・デバ、議論日報)に連載され、同じく1844年から1846年にかけて18巻本として出版された、壮大な復讐の物語である。
Wikipediaより
小学館版も創元社版もダイジェスト版だったわけだ。
「それでは」と、日本で翻訳されている中で一番冊数の多いもの---岩波書店版 ( 山内義雄 訳 ) を借りてきた。
岩波版の初版は1956年で、私が借りてきたのは1988版の第40刷のものなので、活字は古い。

内容はその章 その章が細部まで書きこまれているので、それぞれの人物がどういう状況におかれていたかが、よくわかる。
例えば、私が一番不可解に思った人物に《カドルッス》という男がいる。
小学館版で彼はかなり割愛されている為、主人公の敵なのか味方なのかわからないところがあったが、岩波版で読むと〈飲んだくれでいい加減〉なところもあるが敵ではないとわかった。
前半、会計士と婚約者の従兄 ( ←二人は悪者 ) が、策略をめぐらすシーンに同席しているので、カドルッスも悪だくみに加担しているのだと感じていたが、岩波版で ただの酔っぱらいだとわかった。会計士が書いた告発状 ( 主人公をはめる道具 ) を横から見て「駄目だそんなの、あいつは俺の友だちだ、そんなこと俺は許さんぞー」みたいな感じで反対している。
会計士はカドルッスが酔って寝込んでいるすきにカドルッスの目を盗んで話をすすめている。
こういうハラハラドキドキの細かいやり取りが書かれているから余計に、会計士が小ズルい人物になっている。
また三人目の悪者である検事も、自分がおかれている立場 ( 社会情勢や自身の結婚問題など ) がキチンと描かれている。それによって主人公の敵のひとりではあるが、会計士とは別の理由で主人公を貶めざるを得なかったことがわかる。
主人公は、三人の男から別々の理由で罪をなすり付けられた気の毒な男で、その関係性がハッキリわかるからこそ、復讐劇にも厚みが増す。そんなところがこの長編復讐劇の凄さで人気の秘訣なのだろう。
岩波文庫版は細かい分だけ、先に読んだダイジェスト版では得られぬ面白さを味わえた。
当時のナポレオンのことが、市民の生活や人生にどんな影響を与えていたのかも、この本で知ることが出来た、ありがたい読書となった。
本日の昼ごはん 2025年01月11日
参鶏湯のスープで作ったラーメン

今日はジムに行かないというので、にんにくが入っています

本日の夜ごはん 2025年01月11日

冷凍庫に瀕死の豚バラ肉があったので、八角を入れて豚の角煮風にした。

あくまでも豚の角煮風

〆はペペロンチーノ

参考資料