Garadanikki

日々のことつれづれ Marcoのがらくた日記

佐藤賢一『黒い悪魔』

 

佐藤賢一 著『黒い悪魔』読了

この作品は『モンテクリスト伯』の作者アレクサンドル・デュマの父親-デュマ将軍の生涯を描いたものだが、佐藤さんはフィクションをいくつか使い物語に厚みを出していた。

 

内容的には、ナポレオンと同時期に軍人となったデュマ将軍が、出世レースでナポレオンに負け、ナポレオンから冷遇され不遇な晩年を送るといった流れは史実と同じだが、デュマ将軍の性格を、気短かで怒りっぽい一面があるよう描いているのが愉快だった。

 

『ナポレオンに背いた黒い将軍』は史実を調べて書かれていて、息子の大デュマが書いた「父親の自叙伝」も参考文献になっているので、デュマ将軍を英雄視している部分が大きい。

だがこの小説は、彼の困った一面もあますところなく盛り込むことで、ユニークで人間性豊かな人物に仕立てている。

 

また、脚色している二点も効果的になっていた。

ひとつは、ナポレオンの妻ジョセフィーヌについてなのだが、佐藤さんはデュマ将軍とジョセフィーヌが知り合いで、このことがナポレオンがデュマを冷遇した理由のひつとにもなっている。

 

また、デュマ将軍の妹を登場させていることも良かった。

デュマ将軍には姉 ( もしくは妹 ) がいることは以前の調べてわかっていたが、私は彼の父親が長男 ( デュマ将軍 ) だけをフランスに引き取り、妻 ( デュマ将軍の母親 ) や、他の子どもたちを捨ててきたことが気にかかっていた。

「非道な父はともかく、デュマ将軍本人が兄弟のことをなんとも思わないで生きてきたのか」と気になったのだ。

佐藤さんはその点をフィクションとして利用している。

彼の妹が解放奴隷となり結婚をした相手を下僕として登場させているのだ。

妹の夫-イッポリートはデュマ将軍を頼ってフランスに渡り、下僕として仕えるのだが、将軍に故郷サン・ドマング島の黒人の為闘って欲しいと懇願する。

デュマ将軍は直接的支援は断るものの、間接的に彼らを支援することを約束する。

「が、断らせてもらう」

それでもデュマ将軍はこう言った。

「それでも、このまま引き下がるわけにはいかない」

カリブ海には渡れない、が、指令だけなら、ここからでも出すことはできる。

「それをイッポリート、おまえがサン・ドマング島に伝言してくれ」

「それで勝てますか」

「勝てるさ。まずは自前で調達できる武器を思い出すことだ」

「武器ですか。目下はマスケット銃さえ行き渡らない」

「なんな頼りないものではない」

暑さだ、とデュマは明かした。カリブ海の灼熱の太陽が我等の武器だ。農場で働かされていた頃を思い出してみろ。白人の旦那は屋敷で寝転んでいるばかりだったろう。あの熱帯ではフランス人など、まともに動くこともできない。

「しかし、相手は屈強な兵隊です」

「なおのこと、ちょろい。すぐにバテるさ」

デュマが言葉を重ねるにつれ、最初はあきれ顔だったイッポリートも、だんだんと前かがみになっていった。

「加えるに蚊だ」

「蚊ですか」

よく思い出してみろ。白人の旦那は蚊に刺されると黄熱病にやられて、バタバタ倒れていったじゃないか。黒人には免疫がある。黒人には感染しない。黄熱病は白人だけを選んで殺してくれるのだ。

「だから、フランス軍の野営近くに砂糖をばらまけ。蚊の大好物だろう」

将軍の予想は的中する。

1804年カリブ海の植民地サン・ドマング島が「ハイチ共和国」として独立した。ナポレオンが派遣した軍勢は、熱帯の暑さと黄熱病と現地の執拗なゲリラ活動に辟易して、遂に撤退を余儀なくされたのである。

 

これを読んで、佐藤賢一さんも私と同じに、残された兄弟のことが気にかかっていたのではないだろうか。それをナポレオンへの報復手段に使っているのが小気味よい読後感をもたらしてくれた。

 

 

 

本日の昼ごはん 2025年02月28日

サンドイッチ MOURI の分

 

サンドイッチ 私の分

 

中身はたまご、ハムと薄切りキュウリ、チーズと海苔の三種

 

 

 

本日の夜ごはん 2025年02月28日

練馬の魚力で購入した スルメイカ、サバ、ちくわ

 

スルメイカは輪切りにして煮付けた

 

サバか半分に切り、尾の部分は塩焼きにした。

( 残りは明日 味噌煮にして食べる予定 ) 

 

デザートの苺は、Oさんからいただいたもの。

先日のとちあいかとは違うが、これも甘くて美味しかった