佐藤正午 著『永遠の1/2』読了

【内容】
失業したとたんにツキがまわってきた。
年の暮れに会社をやめた。
大晦日の朝 婚約者から速達が届き、結婚の話は御破算にしたいといわれた。
年が明けると競輪は負け知らずで、失業保険も手付かずのまま懐の心配はない。
競輪場では色白で脚の長い女をモノにした。
だがその頃から たびたび別人と間違われたり、厄介な相手にからまれたり、女子高生に泣きつかれたりした。
この街にはぼく ( 田村宏 ) と瓜二つの男が住んでいて色々とやらかしているらしい。
1983年の第7回すばる文学賞を受賞した佐藤正午のデビュー作。
長崎県西海市 ( 佐藤の出身地・居住地である佐世保市をモデルとして架空の市※1 ) を舞台に、28歳の独身男性を主人公として一人称で進行するミステリータッチの長編小説。
この本を読むキッカケは、机上の『冬に子供が生まれる』を見たMOURI の一言だった。
「へえ、佐藤正午を読んでいるんだ。昔読んだな『永遠の1/2』とか・・・」
佐藤正午さんの本は『冬に子供が生まれる』が初めてだったのであと二~三冊読んでみたいと思い、どうせならMOURI も読んだというデビュー作をと手にとった。
超長編小説
文庫の解説をされている佐伯彰一さんのお話では、氏が「すばる文学賞」の選考をひき受け、この作品を手にした時、異例の長さに少々気重く読み始めたという。
以下は解説の部分を割愛したもの
ところがたちまち釣りこまれて、一気に読まされてしまった。「これはいけるぞ、受賞確実」とその場で心嬉しく呟いた。
だがこの長さが選考会で問題になった。
応募規定によると「二百五十枚前後」とあり『永遠の1/2』は大幅に上回っていた。これでは、きちんと規定を守った応募者に対してアンフェアになりはしないかという意見も出て、これは一つの正論で、中編ばかりが勢ぞろいした中へ、長編小説が割り込めば、重量感と厚みにおいて、おのずと抜きんでることになるのは自然に勢いだろうと。しかし、選考会でしばらくもみ合った後、「いいではないか、出来栄えが群をぬいているのだから」ということに相成った。いや、むしろ規定の方こそ問題で、今後これをゆるめたらという意見まで出てきたのは、佐藤君の実績がおのずとものを言ったのだ、と認めてもよい。
その位 長い。
一冊の文庫におさめようと思うと、行もキッチキチだった。

佐伯氏は「一気に読んでしまった」とあるが、私は かなり手こずった。
文体は軽快で読みやすかったが、主人公 ( 1983年当時28歳 ) の生活状況に共感しにくいものがあったからだ。年齢を考えれば当時私も25歳だったのだから、同年代として共感できるはずなのだが、読んだのが60過ぎてだったからか柔軟な気持ちで男の子の心理をおもんぱかるのが難しかった。もしこれをリアルタイムで読んでいたら、もう少し寄り添えたのかも知れないが。
28~9の男なんてそんなもの?
主人公はいい恋愛をしていない。
例えば冒頭で別れを告げられる婚約者についてもこう書かれている。
いま思えば不思議な気さえするけれど、ぼくは、一年近く続いた女との関係をたったの二時間で清算できたことになる。しかも結婚はしない、殺人も犯さない、涙の一滴だって女の目からはこぼれないというのだから、離れ業だ。と、そんなふうに、じつは以前からぼくは考えていて、この一件までがどうやらツキのなかに繰り込めそうな気がする。
ところが、高校時代からの友人で伊藤公という男は、この話を聞いたとき、即座に、駄目だと言った。ふられた男の負け惜しみと決めつけたのである。
「しかし一年つづいたということは」とぼくは考え考え反論した。
「少なくとも五十回は寝た勘定になる。それは判るな?」
「わかるさ。すくなくとも五十回のファックだろが」
~中略~
「じゃあ聴くけど、五十回もファックした女とそのうえ結婚したいと思うか?」
p.9
次に知り合う、足の長い白々の女-良子に対しても〈ぼく〉は煮え切らない。
良子が処女なのかと思ったり、そうではなく離婚したての女であるとわかると、途端に気後れする。
新婚三か月の若妻がまだ生娘から抜けきっていないとすれば、離婚三か月の出戻りもまだ多少は人妻だろう。出戻りと人妻とをいっぺんに経験できる男なんてめったにいるもんじゃない。おまけに、その女には当然だが両親がいて、祖母もいて、口を開けばこの先どうやって暮らしてゆくのかという話になり、それとなく再婚を匂わせる。
~中略~
気疲れしてかなわない。長く付き合っていくにはわずらわしすぎる。そう考えていたら、むこうの方からもう会いたくないと宣言された。ついてるとしか言いようがない。
p.64
この本を読んでいて戸惑ったのは、良子を始めとする女性とのことを書きたいのか、自分にそっくりの男が色々やらかして迷惑をかけられていることについてのミステリーを書きたいのかわからなかった。
主人公は競輪や賭博でつきまくり、仕事をしないでも生活できる暮らしが一年続く。
良子には「新聞の求人欄を見てばかりいて、これは出来ないあれは違うといって、君は仕事をしたくないだけだろう」と意見をして怒らせる。そのくせ自分は働かないで競輪にうつつを抜かしている。まあ20代の男性だからそういう時期もあるのだろうが、それなら石川達三の『青春の蹉跌』の方がよくわかる。
だが、この本はいきなりミステリーの方に舵をきる。
バーで、競輪場で、道を歩いていて、〈ぼく〉は野口という男に間違われる。
次第に〈ぼく〉は、野口と会いたくなり彼を追い求めていくのだが、こちらの方にもう少し重きをおいても良かったのではないかと思った。
最後までタイトルの「永遠の1/2」の意味がつかめないままの読書だった。
※1 西海市について
佐藤氏がこの小説を刊行した1983年の段階では〈西海市〉という名称の自治体はなく、本書においては架空の市だったが、その後 ( 2005年 ) の平成の大合併により、大瀬戸町、西彼町、西海町、大島町、崎戸町が合併し〈西海市〉が発足した。
本日の朝ごはん 2025年04月17日
味噌煮込みうどんの賞味期限が切れそうというので、頑張っている

本日の昼すぎごはん 2025年04月17日
MOURI がウクレレの日なので出かける前に、たんとご飯

「男子ごはん」でしんぺいちゃんが作っていた五目そぼろ

えのきを細かく切って加えたら旨味が増して美味しい。
ごはんにかけていただくと、さいこうに美味しい!

本日の夜食 2025年04月17日

久々のマーブルサラダ

マーブルとは、じゃがいもとさつまいもを別々にマッシュしたものを合わせたもの。
生クリームも入ってじゃがいもの方はクリーミーに。
さつまいもの方には少しハチミツとレモンを加えて味に変化をつけてある。
トッピングの砕いた胡桃はマストです。
ヘンな組み合わせ
