Garadanikki

日々のことつれづれ Marcoのがらくた日記

桜木紫乃『青い絵本』

 

桜木紫乃さんの短編『青い絵本』を読んだ。

本当はこちらを借りて読みたかったのだが、予約待ちの為

 

表題の「青い絵本」という作品だけ収監されているアンソロジー本にて読了。

「短編 ホテル」はまだ全部読み終えていないので、またの機会にして

今日は『青い絵本』の話だけ。

 

【内容】

「最後の絵本なの。手伝ってくれないかしら」

絵本作家として活躍する高城好子はかつて美弥子の継母だった。

漫画家のアシスタントを生業とする美弥子は、旅の誘いを受けて再会した好子が余命幾ばくもないと悟る。共同制作したいという好子の望みを叶えるため、“母”と“娘”は湖畔のホテルで絵本『あお』の構想を深め合う... 

主人公の美弥子は45歳になるが、漫画家として一本立ちをすることは敵わず人気漫画家の背景画家として収入を得る暮らしをしている。

そんな中、絵本作家のたかしろこうこから連絡が入る。

 

「今日はお誘いのメールです。

 少しぼんやりしたいので、北海道に行きます。

 いい温泉宿を紹介してもらったので、二泊三日、わたしに時間をちょうだい」

 

高城好子は十歳から三年間、美弥子の三番目の母親だった人だ。

父と好子との結婚は三年で破綻したが、好子と美弥子は母娘の関係でなくなってからもずっと交流が続いていた。

美弥子は父と確執があり、むしろ義母だった好子の方が愛しい存在だった。

 

札幌空港に降り立った好子は、ひとまわりも小さくやつれていて、余命いくばくもないことが察せられた。だが美弥子はそれ以上詳しく聞くことはできなかった。

 

「ほら見て」

車が支笏湖のそばへとやってきたときに好子が言った。

「このブルーを見に来たの。ミヤちゃんと、ここの景色のなかで美味しいものをいただいて、ぼんやりしたかったのよね」

 

美弥子たちが降り立ったのは温泉旅館というよりは、大衆を拒むようなヴィラだった。

「いちばん眺めのいいお部屋をお願いしたの」

「このお部屋、うちのマンションより大きいよ、好子さん」

高いよ、と言いそうになり慌てた。

「しばしの贅沢よ。たくさん話しましょう」

 

 

「最後の絵本になるの。手伝ってくれないかしら」

好子が美弥子をこの場所に誘ったのには理由があった。

絵本のタイトルは《あお》。

好子は、部屋から見える支笏湖と空の〈青〉を美弥子の目に焼き付けたかったようだ。

 

 

 

 

 

この本を読みたかったのは、いつものようにつるひめさんの記事を読んだからだった。

tsuruhime-beat.hatenablog.com

つるひめさんも書いていらっしゃるように、この本には無数の青の描写があった。

 

支笏湖は、『碧色』が美しい。空と水が力を合わせないとこんな色にはならないの。

 

ひとの心はいつだってブルー。華やかなブルーもあれば、重たく沈むぶルーもある。心が晴れやかなときのブルーには、どんな暖色も真似のできない輝きがあると思うの。」 

 

上の二つは、つるひめさんが魅了されたとおっしゃる好子のセリフである。

私は、こんな文章にも魅了された。

 

木々の合間に見える湖は、晴れ上がった空の色を吸い取り、青を溜めていた。

 

支笏湖の碧

 

碧の座

物語に登場する旅館は驚くことに実在するヴィラだった。

これからお読みになる方は公式HPを見ない方が良いと思うけれど、

読まれたあとにいかがという意味で、一応リンクする。

www.aonoza.com

おそらく、一泊すれば美弥子の住むマンションの一ヶ月分の家賃が飛ぶ。

と書かれているように、とんでもないラグジュアリースイートだ。

私とて、一生縁のない世界である。もう、ため息しかでない宿である。

 

 

最期に、父親のことを

美弥子の父親の意味深すぎる描写が気になってしまった。

実在する有名な脚本家を連想してしまったからだ。

その方は、やはり強いキャラクターではあるが、ご夫婦仲は良好でお子さんはいらっゃらない。

( ※養女の方はいる )

その方にしてみれば、こんな酷似した描写はえらく迷惑だろうな、

烈火のごとく怒るか、、、いや、こんなことで怒るほど小物ではないか、、、

 

あまりに寄せて書かれているのが私的にはちょっと不快。

これを読んで、あの人物を連想してしまったのは私だけなのだろうか。

美弥子の父は、脚本家と役者という二足の草鞋を履いていたが、生来の頑固さが災いしてか人間関係に複数のトラブルを抱え、妻と別れたところで結局北海道に戻ってきた。

三歳の美弥子を連れての再出発は、北海道に演劇集団を立ち上げるところから始まった。弟子たちとともに自給自足の生活を送り、王国を治めることで、中央主体への反旗を翻したのだった。

王になる場所さえ確保してしまえば、太陽はその集団を明るく照らす。街おこしという名で肥大していった王国は、いつしか彼のハーレムになった。

 

基準は父だった。人生塾に集まってきた若者の時間を農作業と説教と稽古で埋めた王は、彼らのいったい何を欲しかったんだろう。無給と無報酬は無農薬と無添加という言葉に変換されたが、王は決してそれらを自分の口に入れなかった。

 

 

 

 

本日の昼ごはん 2025年04月29日

トマトラーメン

卵パッカーン

 

 

 

本日の夜ごはん 2025年04月29日

今日は麻婆豆腐です

 

麻婆豆腐は、いつもの「中華街の麻婆豆腐がつくれるソース」広東式がなかったので、違うメーカーのもので作った。

うーん辛すぎる割に深みと旨味がない。

 

やはり私はこれが好き⤵

daihanten.shop-pro.jp