藤崎翔『お梅は呪いたい』

藤崎翔著『お梅は呪いたい』読了

古民家の解体中に発見された謎の日本人形。

それはかつて戦国大名を滅亡させた呪いの人形お梅だった！

興味本位の底辺ユーチューバーに引き取られたお梅は、早速彼を呪い殺そうとするが、

500年のブランクは長すぎた！？

呪いが効かないどころか、お梅の心霊動画がバズってしまい・・・

果たしてお梅は無事に現代人を呪い殺せるのか。

笑いと涙のオカルトハートフルコメディ！

祥伝社文庫　解説より

とにかく軽くて、明るくて、さくさく読めてしまった。

お梅が色々と試行錯誤し呪いをかけようとするが、それが逆に人を幸せにしてしまうという、

ひとつひとつのエピソードがよく出来ている。

調子のでないお梅

500年木箱に封じ込められていたお梅人形は、解体業者の人の手で外に出られたのだが、いざ本領発揮《呪おう》と思っても、なかなかうまくいかない。

現代の言葉もわからず、ゆふちゅふばあなるものとは何者ぞ？　なぜ箱の中で人が動くのだ。車は自動で走るようになっている、じゃ《自動車》と名付けよう、なんてピタリ賞もあったりするのも可笑しかった。

お梅が瘴気を発すると、戦国時代の人間は病んで死んでいくのに、現代人には全く効かず何故かテレビがついてしまう。

Eテレでお勉強

お梅は人間が留守の間にテレビをつけて現代の世の中を学ぶことにした。一番役に立つのが「えねゑちけゑ　いゐてれ」と読むらしい集団だ。集団というのは「てれび局」とか「ちゃんねる」とかいうらしい。「えねゑちけゑ　いゐてれ」は、他のてれび局と違って、昼間から日本の歴史についての番組を放送している。

お梅は犬や猫が苦手だった

あいつらはわたしをかじったり振り回したりする。猫には小枝を振り回して瘴気を発してみたが、猫は動く枝が気に入ったようで、じゃれついてくる。仕方ないので、人間が見ていない隙を狙ってとっとと逃げてしまおう。

お梅はユーチューバーから始まり「こいつは駄目だ」と思うと人間に見つからないようにと違う家に移っていくのだが、登場人物が「あの人は、あの人の〇〇だったのか」とつながっていくのも愉快な仕掛けだった。