『舟を編む』の原作を読み、ドラマの脚本がいかに素晴らしいかに感動した。
今回のNHKのドラマ化『舟を編む~私、辞書つくります』は、
原作の後半に出て来る岸辺みどりをフィーチャリングしている。

副題に「私、辞書つくつります」とあるように、岸辺みどり ( 池田エライザ ) と
馬締光也 ( 野田洋次郎 ) がダブル主役の形になっている。
物語は、馬締が辞書編集部の主任になって13年経ったところに、
岸辺みどりが、ファッション誌から配属されたところから始まる。
つまり原作でいうところの後半部分から始まるのである。
エピソードは、主にみどりが主軸で描かれる
第一話には、みどりが恋人と別れる理由のひとつが《みどりの口癖が原因》という話がある。
みどりの口癖 「・・・なんて」
「私なんて」「カメラなんて」「夕陽の見える海なんて」「ご飯なんて」とみどりは連発する。
「私なんて」はともかく、あとの三つは恋人が大切にしているものに対する軽視の発言。みどりは軽率に《なんて》を多用し恋人を傷つけていたのである。
彼女はそれを辞書編集作業に携わることで気がつき、言葉のもつ意味を深く考えるようになる。
第二話でみどりは、『恋愛』の語釈に違和感を感じる。
多くの辞書の『恋愛』の語釈には「特定の異性~」と書かれている。

それを読んだみどりは、恋愛対象を《異性》と限定することに強い違和感を感じ、
「なんで異性なんですか、異性同士だけではないですよね恋愛って」と、疑問を投げかける。
それに対して馬締は言う。
「( 恋愛の語釈に関しては ) 編集会議で何度も議題にあがりました。その上で『大渡海』の語釈には、現状《異性》という言葉を残しているんです。辞書の語釈には、『典型的例』が必要だからです」

典型的例とは
この典型的例の説明で、こんなやりとりがあった。
馬締「みなさんちょっとすみません。うさぎの絵を描いてみてください。
あと、うさぎの特徴を表す動詞をひとつ」
馬締「岸辺さん、すべての絵の共通点は何でしょう」
みどり「えっ・・・耳が長い」
馬締「はい、では、辞書でうさぎを引いてみてください」
みどり「耳の長い小型の生き物で、後ろ足が長く跳ねる」
馬締「耳が短いうさぎもいますし、跳ねないうさぎもいるかも知れませんよね。
でもやっぱりうさぎといったら多くの人が、耳の長いぴょんぴょん跳ねる
うさぎをイメージするんです。これが『典型的例』です」
みどり「でも、違いますよね。違いませんか?うさぎと人間」
馬締「詳しく」
みどり「えっだって、うさぎは引かないじゃないですか辞書。
耳が短いうさぎが、辞書引いて『えっ?耳が長くないとうさぎじゃないんだ』
とか傷つくことはない」
みつる「何言ってんだよ、そういうことじゃねーから」
馬締「岸辺さん、続けてください」
みどり「うまく言えなくて」
馬締「うまくなくていいです、それでも言葉にしてください。
今、あなたの中に灯っているのはあなたが言葉にしてくれないと消えてしまう光なんです」
私はこの、うさぎのシーンにえらく感動した。
実はこの《恋愛》や《うさぎ》のエピソードは原作にはない。
原作に《恋愛》の語釈について馬締が軽く抵抗を示す文章はあったが、
このようなやりとりは一切なかったのだ。
今回のNHKドラマで私が驚いたのは、原作に無いこのようなエピソードを駆使したことだった。
6/25「舟を編む~私、辞書つくります」の記事に書いた、みどりの失恋エピソードにある「あきらめて あきらめて あきらめてください」のセリフも、うさぎと同様、ドラマのオリジナルのセリフのようだ。garadanikki.hatenablog.com
このように、原作にはないドラマオリジナルのセリフやシーンを付け加えるのは非常に難しく、下手すると原作の味わいをぶち壊してしまう可能性を大きくはらんでいる。
ところが今回は、原作をさらに上回る形で、辞書編纂の現場をみせてくれている。
これは本当にスゴイことだと思った。
映像化は、時間的制約などで原作の大事な要素を割愛しなければならないケースもあるが、NHKドラマは原作の後半部分に絞るというアイデアが功を奏しているし、ドラマのオリジナルのシーンは物語に厚みを出して素晴らしいと思った。
流石はNHKドラマ版。
プロデューサー、ディレクター、特に脚本の蛭田直美さんに拍手を贈りたい。
2025年07月10日 昼ごはん
レモンざるラーメン

付属の海苔のなんとみすぼらしいお姿か wwwあはは

海苔盛大に追加しました💛

2025年07月10日 夜ごはん
昨日のグラタンと、今日作ったパスタサラダで パスタ被り

経堂コルティのOXで、Oさんに買っていただいたマグロのお刺身

おいすぃーーー!




