島木健作 著『或る作家の手記』を再読

風邪っぴきで熱に浮かされてフワフワと寝ている時に、何故だか小難しいものや逆に軟弱 ( 失礼 ) なものは読みたくなくて、ベッド脇のこの本を再読した。
転向作家である島木健作の代表作は『癩』『赤蛙』『生活の探求』といったところ。
転向作家といっても、中野重治のような共産主義思想を政治的に展開して逮捕された人と違い、島木健作は「お百姓さんがよりよく働ける為に」を目指して農民運動をしていて、それが「いけません」と投獄された人だった。
だから彼の頭は常に「農業」に向いている。
そんな彼が満州に興味を持ったのはしごく当然なことで、日本が満州に日本の食糧・原材料供給基地化を目指して満蒙開拓民をおくる《国策事業》に対して、島木さんは「本当に満州農業に未来はあるのか?」を確認したくなったのだろう。
当時の満州へは、日本から顎足枕付き※で多くの文人が招かれている。
※ 芸能・業界用語で、食事代(あご)、交通費(あし)、宿泊費(まくら)の3つを指し、
これらすべてが主催者側によって負担されることを意味します。
国が「満州はこんなに魅力的です」と作家に書いて欲しかったからである。
そういうお誘いに乗じて出かけた作家も多々いて、例えば里見弴や志賀直哉の旅がそれかも知れぬ。そういう人たちは、満州の気候の良い時に、インフラが整備された模範的農地に連れて行かれ「ほら、素敵なところでしょう?」と見せられる。
お偉いさんは、それを日本に帰って宣伝してくれればと目的達成なのだ。
ところが島木健作は違う
自費で時間をかけ奥地まで入り『満州紀行』というすっごいルポルタージュを書いてしまった。

しかも彼は、本を出版しただけにとどまらず、その本を持って北海道を始め各地に出向き、これから満州開拓民となろうとする農業従事者に満州の様子や体験談を語りに行っている。
これこそまさに「お百姓さんの為」の本当の活動だと思った。
今回読んだ『或る作家の手記』は『満州紀行』とセットのような本ので、《或る作家》は島木健作自身のこと。或る作家は満州に渡り感じたことや、コーディネーターやお偉いさんから受けた《大人の事情》をつまびらかにしている。
私は、彼のそういうブレない真っ直ぐさが好きだ。
今の日本に島木健作のような人が、ひとりでも多くいてくれたら、
日本ももうちっとマシになるのではないかと、熱にうなされながらつらつら感じた次第。
島木さんのこの本に関して、平山周吉さんの下の記事がとても素晴らしいのでリンクを貼らせてもらった。
平山周吉 | 満州國グランドホテル 第三十六回 「北海道人」島木健作が持ち帰った一匹の「満洲土産」
2025年12月23日 朝ごはん
おろし生姜を沢山入れたつゆで食べた素麺

2025年12月23日 夜ごはん
温いつゆにラー油を沢山入れて、韓国海苔と揚げ玉を散らした蕎麦

本日は、MOURI が仕事からの忘年会で留守なので、
ひとりこんなものを食べて島木健作に浸りました。