Garadanikki

日々のことつれづれ Marcoのがらくた日記

斎藤緑雨『油地獄』

 

斎藤緑雨『油地獄』を百年文庫で読了。

いきなり冒頭に、こんな長文がある。

大丈夫さに雄飛ゆうひすべしと、らざる智慧を趙温ちょうおんに附けられたおかげには、すきだのくわだの見るも賤しい心地がせられ、水盃みずさかずきをも仕兼ねない父母の手許てもとを離れて、玉でもないものを東京へ琢磨みがきに出た当座は、定めて気に食わぬ五大洲を改造するぐらいの画策もあったろうが、一年が二年二年が三年と馴れるにしたがって、金から吹起る都の腐れ風に日向臭い横顔を漸々だんだんかすられ、書籍御預り申候の看板かんばんが目につくほどとなっては、得てあの里の儀式的文通の下に雌伏しふくし、果断は真正の知識と、着て居る布子の裏をいで、その夜の鍋の不足を補われるとは、今初まったでもないが困った始末、だ感心なのはあの男と、永年の勤労が位を進め、お名前をきくさえが堅くるしい同郷出身の何がし殿が、縁も無いに力瘤ちからこぶを入れてほめそやしたは、本郷竜岡町ほんごうたつおかちょうの下宿屋秋元あきもと二階を、あがって左りへ突当りの六畳敷を天地とする、ことし廿一の修行盛り、はや起を屡々 しばしば宿の主に賞揚された、目賀田貞之進めがたていのしんという男だ。

斎藤緑雨 著『油地獄』ポプラ社 百年文庫<惚> p.6より

 

 

リズムある文章が心地よいのだけれど、意味はというとすんと頭に入ってこず、

3回も読み直してしまった。

 

要約すると、

本郷竜岡町の下宿に住んでいる21才の目賀田貞之進は、出世を夢見て田舎から出て来たが、ぱっとせずまま毎日の食事にも困るほどであった。だが同郷の男から誉めそやされている」といった感じなのだろう。

 

この調子で故事やたとえがつづくのだろうか、と気が重くなったが、

馴れるに従いスラスラ読めるから不思議だ。

後から思うに、冒頭の部分だけが特に読みづらかっただけだった。

 

目賀田貞之進は、人見知りで気の利いたことがひとつも言えない朴念仁。

実家が豊かだったのか、悪友たちからたかられる始末。

そんな貞之進が、同郷 ( 長野 ) の県人会に出席する。

人見知りの貞之進は誰とも話せずにいる。

 

そこで接待の芸者に一目ぼれしてしまう。

名前もきけず、返盃の仕方もわからず、人に聞く勇気も持たない男だったから、

隣の男が芸者の名前や置き屋を聞こうとしているのをダンボの耳で聞いている。

「歌ちゃん」というのを聞いて、それらしい名前を想像するだけだった。

 

厠に立つと、その芸者 ( 小歌 ) と出くわし、ハンカチを差し出される。

受け取っていいものか躊躇する貞之進に、小歌は言う。

「あらわたしのではお厭なの」

 

 

貞之進は、彼女の言葉が頭から離れない。

寝ようと思っても寝つけず、仰向いてみる天井に彼女の顔が浮かぶ。

寝返りを打てば障子にも、反対を向けば唐紙にも彼女の顔。

 

遊びなれない初心な奴ほど始末が悪い。

里から送金してもらい、小歌会いたさにお茶屋通いをする貞之進。

 

本人は小歌が好いてくれてきたと思い始めるが、相手は玄人だ。

小歌はさっさと金持ちの旦那に身請けをされて、貞之進は狂乱するという話である。

 

 

とにかく。

貞之進の初心さが尋常ではなく、冗談ひとつも言えないモテない男っぷりが気の毒になる。

今でいうところのストーカーのような行動が、気の毒だが笑えてしまう話だった。

 

 

して。

何故タイトルが『油地獄』なのかは、是非読んでみていただければと思います。

 

 

※ 趙温 (=中国後漢末期の政治家 )

「趙温雄飛(ちょうおんゆうひ) 後漢の趙温、初め京兆郡丞となり、大丈夫當に雄飛すべし、いづくんぞ能く雌伏せんやといひ、ついに官を棄てて去り、後、三公となった故事」「後漢書―趙温伝」に出て来る話。

二世紀、後漢王朝末期の中国でのこと。都で下級官僚として働いていた趙温は、「一人前の男だったら『雄飛(人の上に立って活躍すること)』すべきだ、『雌伏(他人の下に甘んじていること)』なんてしていられるか」と述べて、辞職してしまいました。その後の飢饉の際、趙温は自分の財産を使って庶民を救い、名声を得て、望み通りに出世を遂げたということです。 

※ 水盃をもしかねない=二度と会えないかもしれない別れのときなどに、互いに杯に水を入れて飲みかわすこと。

※ 五大洲を改造=五大陸 ( 世の中 ) を改革するという大きな意味か?

※ 雌伏し=将来の活躍の日を期しながら、他の下に屈従すること。

 

 

 

本日の昼ごはん というか朝食?

 

本日の?ごはん

MOURI が仕事で外出する前にご飯を食べたいというので、、、、

これは何ごはん?

 

 

本日の夜ごはん というか夜食?

ほたては、ぎょぎょいちのお取り寄せ。

やっぱり、すごく美味しい。

焼きおにぎりは、昼ごはんの残りで作っておいたもの。