遅ればせ。遅ればせながらでございます。が。小津安二郎監督の「麦秋」を鑑賞。
今更何を、とお思いでしょうが (笑)
鎌倉好きだもので、鎌倉文士と言われる作家の作品に興味を持ち、
里見弴、大佛次郎、島木健作、川端康成などなど、諸先生の作品を乱読。
里見先生繋がりでした。
この映画、まず驚いたのは、原 節子さんの美しさ。
「娘・妻・母」「山の音」「東京物語」「安城家の舞踏会」くらいしか見ていないのに、
語るのは叱られそうだけど、「麦秋」が一番綺麗なんじゃないかしら。
31歳ですか。一番のりに乗ってるというか、自由にいるというか、ともかく匂い立つような美しさだと。
原節子さんって、よく見ると造作が大きく男顔ですが、
「麦秋」の原節子さんは、憂いがあって、可愛くて、本当に素敵な笑顔です。
原節子演じる 紀子のことを親友と母親が、こんなことを言います。
紀子がどんな所にお嫁に行くかというイメージなんだけど、2人とも同じなの。
紀子には良い縁談があったのですが、それを蹴って、亡兄の友人の男やもめと電撃婚約してしまうのです。
周りのみんなはええ~っという感じ。
親友の田村アヤ ( 淡島千景 ) とは、こんな会話。
紀子「うん」
アヤ「随分、急だったのね。いつ行くの?」
紀子「もう一度、秋田から出てくんのよ。それからのことよ。」
アヤ「よく思いきったわね。
あんたなんて人、とても東京を離れられないんじゃないかと思ってた。」
紀子「どうして?
アヤ「だって、あんたって人、庭に白い草花かなんか植えちゃって、
ショパンかなんかかけちゃって、タイルの台所に、
電気冷蔵庫かなんか置いちゃって、
こう開けるとコカ・コーラかなんか並んじゃって、
そんな奥さんになるんじゃないかと思ってたのよ。」
紀子「そう。」
アヤ「あたしが遊びに行くでしょう?
そしたらほら、サンダーの日除けのあるポーチかなんかで、
あんた真白なセーターかなんか着ちゃってさ、
スコッチテリアかなんかと遊んでて、
垣根越しにハロー、ハワユーな~んて言っちゃって」
紀子「まさか。」
アヤ「ううん。あたしそんな風に決めちゃってたのよ。
秋田ってオバコでしょう?」
紀子「うん。」
アヤ「モンペ穿くのよ、あんた。」
紀子「穿くわよ。」
一方、母親 志げ ( 東山千栄子 ) は、息子の嫁 史子 ( 三宅邦子 ) にこんな風に言います。
史子「そうですね。何もお子さんのある所でなくったって。」
志げ「そうですよ。
本人がよくったって、あたしたちがついてて何だか可哀想な気がしちゃって。
あたしもね、あの子が女学校出た時分から『いいお嬢さんだ』『いいお嬢さんだ』って言われるたんび
にどんな所へお嫁に行くんだろうと思ってたんだけど。
田園調布の篠田さんね、あすこへ伺うたんびに、紀子もあんな芝生のあるハイカラなウチの奥さんに
なるんじゃないかなんて、思ってたんだけど。」
婚期が遅れている紀子には、同じく独身のアヤという親友がいて。
他の2人の友人は結婚しているんだけど、
4人で会うと、独身組vs結婚組に分かれてバトル んです。
昭和の女子の会話を久しぶりに聞いたわ。
甘酸っぱくて、おきゃんで、ホント可愛いんです。
小津映画といえば、原節子、笠智衆が定連ですが、今回2人は兄妹。
東京物語では、父と嫁だったのにね。
他にも、東山千栄子さん、杉村春子さんの新劇両巨頭が花を添えます。
当時の配役には、俳優座とか文学座とか、劇団のクレジットが付くんですね。
映画を撮るとき、まだ映画俳優だけではキャスティングがままならないことがあり、
演劇の世界から役者を借りてくるということが、クレジットの理由だと聞いたことがあります。
「麦秋」を観ていて、配役表に乗っていない小さな役で、気になる人がいました。
出勤の電車の乗客ですが、笠さんと溝口さんの向こうに、外人のような顔立ちの学生が・・・もしかして、E・H・エリックさん?
紀子の甥っ子の友だちが、電車ごっこするために集まります。
その中のひとり。
中央の少年、「長屋紳士録」の幸平少年をやった青木放屁くんに見えるんだけど。。。
違うかな~~。。
64年も前の作品ですから、ロケ地探求っていっても無理無理。
でも。。。
北鎌倉のこの景色。
こ~んな所から撮ったんじゃないかしら。
・・・違うかな~~っ(笑)