図書館に予約を入れた本が届いたので、北村薫 著『空飛ぶ馬』をいったん脇に置き、
『謎のギャラリー』特別室を併読することにしました。
この本は、北村薫さんが編纂したものです。
この本を見つけたキッカケは、
フランソワ・コッぺの『獅子の爪』という短編を読みたいと思ったからです。
『獅子の爪』は、『空飛ぶ馬』の最初の作品「織部の霊」の3ページ目にいきなり登場しました。
主人公の「私」が《古本屋まわりで見つけたらしい》本でして、こんな風に書いてあります。
昨夜、夜中の三時まで本を読んでいたわりには、今朝早く目が覚めた。
⸺ちなみに私の趣味は文学部の学生らしく古本屋まわりである。
昨日手に取ったのは昭和四年版 新潮社の世界文学全集。
フランソワ・コッぺの『獅子の爪』を読んで、しおらしい気持ちになったりしていた。
この一文だけでもう読みたくなってしまいましたの。
読み飛ばそうと思えば、すんなり出来そうなものですが、
これから付き合っていく主人公の「私」が、どんな本に興味を持っているかも知りたいし、
《遅刻の常習犯となり果て》ていた「私」を躁状態にさせ、調子の良い目覚めを与えた本が、どんな内容なのか、捨て置けないと感じたのです。
世界文学全集 昭和4年 新潮社発行
第36巻 近代短篇小説集
「私」が読んだ作品を底本で追体験をしたいのは山々です。
希少本らしいが、今なら入手はできそう。
しかし、てっとり早く読める道をとりました。
それが北村薫編纂『謎のギャラリー特別室』です。
北村薫 編纂『謎のギャラリー』特別室には、
今ではなかなか入手できない作品が収録されています。
都井邦彦「遊びの時間は終らない」――『小説新潮』1985年1月号掲載
里見弴「俄あれ」――『里見弴全集1』(筑摩書房)
梅崎春生「猫の話」――『梅崎春生全集3』(沖積社)
別役実「なにもないねこ」――『アンソロジー人間の情景4』(文春文庫)
南伸坊「巨きな蛤、家の怪、寒い日」――『チャイナファンタジー』(潮出版社)
ヘンリィ・カットナー「ねずみ狩り」――『ミステリ・マガジン』1967年8月号掲載
クレイグ・ライス「煙の環」――『エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン』1960年8月号掲載
ジョン・コリア「ナツメグの味」――『美酒ミステリー傑作選』(河出文庫)
樹下太郎「やさしいお願い」――『プロムナード・タイム』(東方社)
阪田寛夫「歌の作りかた」――『桃次郎』(楡出版)
フランソワ・コッペ「獅子の爪」――『世界文学全集36 近代短編小説集』(新潮社)
マージャリー・アラン「エリナーの肖像」――『15人の推理小説』(東京創元社)
しかし。
収録された作品の並びはなんなのか、編纂の意味がわかりません。
とりあえず、目的のフランソワ・コッぺ『獅子の爪』から読んでみることにしました。
フランソワ・コッペ 『獅子の爪』
【あらすじ】
海軍大尉ジュリアン・ド・レは、戦地で負った傷の癒すため訪れたポオで、美しい娘と出会います。
鷹狩から帰った彼女は、取り巻きの男たちを無視するようにテーブルを鞭で打ち、牛乳を持ってこさせます。それを立ったままで、息もつかず、ぐっと飲み干した彼女を見て、ジュリアンは恋に落ちます。
彼女の名はオルガ・ババリイヌ。
高級娼婦の娘でした。
ジュリアンは、オルガを「躾のろくにできていない女であったが、人に媚びを売る女ではない」と見ぬきます。そして「実は不幸せな上にも不幸せな心の中に、義理堅い心の宝が人知れず隠されている」ことを見逃しませんでした。
勿論彼は、彼女の美しさに心ひかれていました。
しかし、重なる胸の苦しみを、いかにも手柄らしく押し隠している彼女の心の中を思うと、別して彼女を美しいものに思いました。
どうしても彼女を妻にしなければならない。そうだ、この危ない事だらけな境崖から奪い出し、清い上にも清い自分の母の家に連れて行くことだ。本当の家庭の力強い清く澄んだ空気を吸わすことだ。
彼は、そう考えました。
あと一週間でポオを発ち、一年半したら戦場に戻ることを彼はオルガに告げます。
オルガはお別れに、ジュリアンが時計の飾りにしている獅子の爪をくれと言います。
「あたしは、猛獣も同じ女です…ですから、その飾りはあたしに似合いな品です…
あたしに頂かして下さいましな、あなたの記念にいたしますから」
ジュリアンはそれを渡しながらプロポーズをします。
するとオルガは、彼をじっと見て
「あなたは、あたしを愛して下さる初めて人です。それだからお断りします。」と言います。
オルガは、ジュリアンが落とした妹からの手紙を読んだと言い、文面からジュリアンの家がどんなに立派かを知れば知るほど、自分が不釣り合いだと言います。
何故なら自分が、母親によって財産のある大貴族と一緒にさせるために育てられ、相手を物色するために保養地を連れまわされているからだと。
そうして二人は別れました。
三年後、ジュリアンはセネガルからキャナリィ島に向かう輸送船に乗っています。
テーブルにどさりと置かれた新聞に、彼女のことが書かれた記事を見つけます。
その記事を読んだジュリアンは、彼女の今を知ることとなりますが、
同時に彼女が獅子の爪のことを《堅気の娘の気持ちで付き合った堅気な男の方からの思い出の品》と思っていたことを悟るのでした。
身分違いの悲恋物語と片付けてしまったらそれまでですが、とても美しい文章でした。
彼が美貌を理由に彼女を愛したのでないことも、ひしひしと伝わってきました。
短いストーリーのなかに、お互いの恋心が堅気なものであったこともわかります。
熱い情熱を心の奥に秘めながら、淡泊でしっかりした口調で別れを告げるオルガの健気さ。
《息もつかず、牛乳をぐっと飲み干した》彼女の姿も印象的で、しみる物語でした。
なるほど。読んで良かった!
『空飛ぶ馬』の主人公「私」が、しおらしい気持ちになったというのもイメージ出来ました。
これからも『空飛ぶ馬』を、読み進める合間に脱線し、そこに出て来る作品を読むかも知れません。
時間はかかるが、その方が何倍も深く面白く読める気がするから。
本日の夜ごはん
メインは、鶏むね肉のタンドリーチキン!
それから禁断の、、、海老です。
タンドリーチキンが、柔らかく美味しく出来ました。
これも、コウケンテツさんのお蔭です。
一度食べたらやみつきになる美味しさ。
コウケンテツさんの動画のお蔭で、胸肉がしっとりやわらかく出来ています。
もう、タンドリーチキンをモモ肉で作る気にはなれませぬ ('◇')ゞ
これもコウケンテツさんのレシピから。
生姜のさっぱり感にハマっています。
酸っぱいものはひとつでもいいかと思ったが、
トマトと紫蘇も食べたかったので。
禁断の、といったのがこれです。
スカスカですが、食べたあとではない。
最初から6尾しか作らなかったのです。
3尾くらいなら、MOURI のくしゃみ ( アレルギー ) も発せないかと。
〆 の金ちゃんヌードル
あれっ? ちょっと風味が変わったような。
乾麺が日向臭いというか、、、、
一番最初に感激した味と、ちょっと違うような感じがします。
⤴ 個人的感想です。
とじ込みは、世界文学全集36 近代短篇小説集に収録されている作品です
新潮社(ShinchoSha)/世界文学全集 第一期 全38巻 1927-1930年 第二期 全19巻 1930-1932年 より
『世界文学全集36』
翻訳:山田珠樹/他
発行:新潮社(ShinchoSha) Co:江喬松/宮島新三郎/新關良三/昇曙夢/千葉龜雄
1929 ( 昭和4年 ) / 7/25
近代短篇小説集
仏蘭西篇
「ヴァニナ・ヴァニニ」 Vanina Vanini スタンダール(Stendhal)translator:山田珠樹/水野亮
「マテオ・ファルコーネ」 Mateo Falcone プロスペル・メリメtranslator:山内義雄
「獅子の爪」 La Griffe de Lion フランソワ・コッペtranslator:内藤濯
「ヴェエラ」 ヴィリエ・ド・リイルアダンtranslator:辰野隆/鈴木信太郎
「思ひ違ふな」 ヴィリエ・ド・リイルアダンtranslator:辰野隆/鈴木信太郎
「病獸」 ピエル・ロティtranslator:吉江喬松
「老徒刑囚の悲哀」 ピエル・ロティtranslator:吉江喬松
「名もない國」 ピエル・ロティtranslator:吉江喬松
「屠殺場の獸肉」 ピエル・ロティtranslator:吉江喬松
「寶石」 Les bijoux モウパッサンtranslator:吉江喬松
「月光」 モウパッサンtranslator:吉江喬松
「博物誌抄」 ジュウル・ルナアルtranslator:岸田國士
「自殺未遂」 シャルル・フィリップtranslator:小牧近江(Komaki Ōmi)
「平凡人の死」 シャルル・フィリップtranslator:小牧近江(Komaki Ōmi)
「手毬」 シャルル・フィリップtranslator:小牧近江(Komaki Ōmi)
「アムステルダムの水夫」 Le Matelot d'Amsterdam ギョーム・アポリネール(Guillaume Apollinaire) translator:堀口大學
「オノレ・シュブラック減形」 La Disparition d'Honoré Subrac ギョーム・アポリネール(Guillaume Apollinaire) translator:堀口大學
「破綻」 アンリ・ド・レニエtranslator:西條八十
「センティメンタルな躊躇」 アンリ・ド・レニエtranslator:西條八十
「悲戀」 フランシス・カルコtranslator:山内義雄
英米篇
「マークハイム」 Markheim スティヴンスンtranslator:谷崎精ニ
「草堂の夏」 ジョオヂ・ギッシングtranslator:日夏耿之介(Hinatsu Kōnosuke)
「バイクラフトの正體」 The Truth About Pyecraft エチ・ジィ・ウエルズtranslator:柳田泉
「彼女の幸福」 マンスフィルドtranslator:山本修二
「半休日」 オルダス・ハックスリtranslator:宮島新三郎
「水車のある教會」 The Church with an Overshot-Wheel オウ・ヘンリtranslator:三宅幾三郎
「奇體な破片」 ジヤック・ロンドンtranslator:新居格
「細君もう一人」 アンダスンtranslator:十一谷義三郎
独逸篇
「オイゲニア」 ケルレルtranslator:新關良三
「ララピアタ」 ハイゼtranslator:生田春月
「盲目のジェロニモとその兄」 Der binde Geronimo und sein Bruder シュニッツレルtranslator:山本有三
「氷流」 シュミットボンtranslator:茅野蕭々
「烏と子供translator:シュミットボンtranslator:茅野蕭々
「極光」 ワッセルマンtranslator:成瀬無極
「痣のある女」 ウイルヘルム・フォン・ショルツtranslator:三恭光彌
「幸福への意志」 トオマス・マンtranslator:北村喜八
「アルノー・ヲブルクはなぜ婚約したか?」 エーウェルスtranslator:舟木重信
「光緒皇帝」 クラブンドtranslator:秦豊吉
露西亜篇
「信號」 ヱ・エム・ガルシンtranslator:熊澤復六
「復活祭の前夜」 ウラジーミル・コロレンコ(Vladimir Korolenko) translator:山内封介(Yamauchi Fūsuke)
「鐘撞きの老人」 ウラジーミル・コロレンコ(Vladimir Korolenko) translator:山内封介(Yamauchi Fūsuke)
「幻覺」 クープリンtranslator:蔵原惟人
「白い母」 ソログープtranslator:中村白葉
「秋」 ブーニンtranslator:原久一郎
「新らしき路」 ブーニンtranslator:原久一郎
「靜かな曙」 Тихие зори ボリス・ザイツェフ(Boris Zaitsev) translator:昇曙夢
「古いチーズ」 ピリニャークtranslator:米川正夫
「餓鬼」 イワノフtranslator:米川正夫
「貧しき人々」 ヤーコヴレフtranslator:八住利雄
南・北欧篇
「ニつあたり」 プラスコ・イバニエスtranslator:永田寛定
「接吻」 プラスコ・イバニエスtranslator:笠井鎭夫(Kasai Shizuo)
「バスコ族の人々」 バローハtranslator:永田寛定
「鐘の奇蹟」 バローハtranslator:笠井鎭夫(Kasai Shizuo)
「憎みから思ひやりへ」 ウナムーノtranslator:永田寛定
「突發する戀」 ウナムーノtranslator:笠井鎭夫(Kasai Shizuo)
「モンテーニユの理想」 アソリンtranslator:永田寛定
「フワン・ペドロの子フワン」 アソリンtranslator:永田寛定
「占ひ」 ダンヌンツィオtranslator:岩崎純孝
「ドン・サルヴァトラの降誕祭」 グラーフィア・デレッダtranslator:有島生馬
「西徴風」 ロツン・ディ・サン・セコンドtranslator:佐藤雪夫
「母の心の對話」 モルナアルtranslator:飯島正
「鐘」 Klokken ハンス・クリスチャン・アンデルセン(Hans Christian Andersen)
「羊飼ひの娘と煙突掃除」 Hyrdinden og Skorstensfeieren ハンス・クリスチャン・アンデルセン(Hans Christian Andersen)
「カアレン」 キイランドtranslator:吉江喬松