Garadanikki

日々のことつれづれ Marcoのがらくた日記

岩井志麻子 著『夜啼きの森』

 

岩井志麻子 著『夜啼きの森』を読了。

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岩井志麻子さんといえば、第6回日本ホラー小説大賞を受賞した『ぼっけえ、きょうてえ』が有名で、

最近はコメンテイターとしても、クイズの回答者としてもお馴染みの作家さん。

 

 

志麻子さんの書かれる岡山を舞台とした小説は独特です。

『夜啼きの森』も、ぼっけぇ きょうてぇ 内容で、思いっきり《志麻子ワールド》でした。

内容は、昭和13年に岡山の山村で実際に起きた、殺人事件をモチーフにしたもの。

「津山事件 ( 津山三十人殺し) 」という事件で、1938年 ( 昭和13 ) 岡山で起きた大量殺人事件です。

 

犯人の都井睦雄が、2時間足らずの間に村人たちを次々に殺して、犯行後自殺したんですが、

この事件を元に横溝正史さんが書いたのが『八つ墓村』でした。

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横溝さんは、犯人の異様な扮装 ( 懐中電灯を鉢巻きで頭に付け、猟銃と刀を持つ ) をモデルに、

推理小説として仕上げました。 ※1971年 (昭和46) 初出。

 

志麻子さんは、事件そのものをベースに、フィクションに仕上げました。※2001年 (平成13) 初出。 

フィクションですが、読んでるうちに「実在の犯人もこんな心境だったんじゃないか」と思えてきます。

話は、5人の村人の視点で展開していきます。

岡山の山奥の村に住む犯人が、少しずつ軌道を逸していく様が描かれています。

 

【あらすじ】 

大正から昭和にかけてのこの村は、近親相姦と夜這いが横行する閉鎖的な村でした。

主人公 ( 犯人 ) の辰男は、小さい時父親が結核で亡くし、祖母に育てられます。

大好きな姉が叔父に悪戯されるのを見たりして、性的にもドロドロとした環境で大きくなりました。

利発な子ながら親が結核だったことから、村中から忌嫌われ 村八分にされます。

でも、自ら進んで孤立している感もある。

やがて辰男は、武器を持ち・・・・。

 

【感想】

構成は前述の通り、5人の村人たちの目を通して描かれていくんですが、

まるで5人の絵描きが、一枚の油絵を仕上げていくような感じでした。

5人5様の筆さばきで、油絵具が塗り重ねられていく内に、辰男のキャラクターに厚みが出てクッキリとなっていきます。同時に、山村の風景や人間関係にも厚みが出てくるのが素晴らしかったです。

 

《章ごとに視点が変わる》という仕立てにも関わらず混乱せず読めたのは、

志麻子さんの交通整理が見事だったからでしょう。

書きたいことがブレてないのも凄い。

嫌いじゃありません、私は。

でも志麻子さんの本は、好きな人 嫌いな人とハッキリ分れるかも知れないな、

なんたって暗くて、ドロドロとしてて、きょうてえ ですから。

 

 

この本を読むキッカケを下さったのは、KOHARU ( id:komekichikun ) さんでした。

以前「八つ墓村」を書いた折、

岩井志麻子さんの『夜啼きの森』もおすすめ」とコメントを下さいました。

 

KOHARUさん、面白かったです。怖いけど、エロ黒だけど w 好きです!

たまうきさん、私の岡山のイメージ、困ったことに志麻子色に染められちゃいました、どうしよ。

 

 

最後に、好きな文章をひとつ書いておしまいにします

性的描写が多いのでちょっとしんどい作品ですが、そんな中、この文章が好き⤵

(4人目の視点) 馬場治夫が見た、祖父の死んだ日の描写です。

雪は病んでいたが、あちこちの田畑に屋根に白いものは積もって凍っていた。

飛ぶ鳥までが凍えていた。凍てついてたのは爺やんの死骸だけではなかった。

「すぐにみんな来るけんのう」

てきぱきと青年団や娘組を束ねて指揮するのは、糸井の雅雄や砂子の恵一らだ。

無論このような場面で、辰男が重用されることはない。治夫からすれば、嫌な大人ほど役に立つのだ。

婆やんは固まって、小さな人形になったように腰を屈めて俯いていた。

誰かが入営中の父に知らせねばと走ってくれ、たちまち葬儀の相談はまとまった。

慌ただしさの中、肝心の爺やんの死体だけが取り残されてのんびりとしていた。

『夜啼きの森』堤婆様 p.243より

 

 

 

 

本日の朝ごはん

牛乳が足りなかったので、今日は味噌ラーメン

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本日の夜ごはん

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焼き豚と長芋の炒め物、豚キムチ、ピーマンとツナのマヨネーズ和え

サバの塩焼き、千枚漬け

 

無性に食べたくなって買ってきましたが、味も素っ気もないサバでした。

醤油をちっと足して・・・

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豚キムチ

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こんくらいの量がベスト、と言われました (;'∀')

 

焼き豚と長芋の炒め物

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長芋を消化したくて、焼き豚と調理。

そこそこ

 

 

とじ込みは、本の登場人物とキャラクター。個人的な備忘録です。

 

糸井家 1人目の視点→辰男の叔父、糸井仁平

糸井辰男…犯人。賢いが父親が結核だったため、村中から忌嫌われる。

糸井さや子…辰男の姉。他の村に嫁ぐ。

糸井イヨ…辰男・さや子の祖母。息子の藤吉亡き後、孫のさや子と辰男を育てる。

糸井藤吉…辰男・さや子の父、結核で早く亡くなる。

糸井仁平…藤吉の弟、辰男の叔父。さや子が子供の頃に性的虐待をする。

糸井雅雄…仁平の息子。さや子が子供の頃に性的虐待をする。

 

砂子家 2人目の視点→分限者の妻、砂子モト

砂子泰蔵…分限者という立場を利用して、村中の女と関係を持つ。

砂子モト…泰蔵の妻。泰蔵からは構ってもらえない。辰男のことが嫌いではない。

砂子恵一…泰蔵の息子。父親ゆずりの女たらし、村中の女と関係を持つ。

 

石野家 3人目の視点→似非拝み屋の娘、石野みち子

石野みち子…流れ者の両親とともに村にいつく。村中の男に夜這いをかけられる。

石野悟一…みち子の父。流れ着いたこの村で、拝み屋をする。

石野あい…みち子の母。

 

馬場家 4人目の視点→村一番の貧乏人の子、馬場治夫

馬場治夫…辰男を慕う子供。

治夫の祖父・良三…糸井イヨと関係があった仲

治夫の祖母…

治夫の父…海軍入営中

治夫の母…貧困の為、砂子の泰蔵に身を売る。

 

金中家 5人目の視点→金中の入り婿、金中虔吉

金中の婆…噂・悪口好きの婆。入り婿の虔吉を邪険にする。

金中やよひ…金中の二女。虔吉という夫がありながら、浮気の絶えない女。

金中虔吉…やよひの夫。気弱で頭が足りないが、辰男に自己投影している。武器を調達。