Garadanikki

日々のことつれづれ Marcoのがらくた日記

夏川草介『本を守ろうとする猫の話』

 

夏川草介著『始まりの木』のあと、二冊目に手にとったのがこれ。

表紙とタイトルに惹かれたのが理由。

そして今回はもうひとつ楽しい理由がある。

よんばばさんと、つるひめさんが、この本を同時に読まれることになり、

読了後、感想を交換できそうなのだ。

 

 

そんな訳で読み始めた『本を守ろうとする猫』は、私の心のど真ん中にささった。

まず世界観が好きだ。

作者の、本や人間に対する暖かさにも心を打たれた。

しかし私は、感想文を書く段になり、4日間うなってしまった。

 

これから読む人 ( 特に今回はよんばばさんとつるひめさん ) の邪魔にならないように記事をまとめる難しさに悶絶した。

明治や大正の、誰もが知っている作品の感想文しか書けないタイプだと思い知った。

今日も、ああでもないこうでもないとパソコンをたたいていたら、

よんばばさんの記事がアップされた。

 

hikikomoriobaba.hatenadiary.com

 

巧い!

巧い! やっぱりよんばばさんの文章はスゴイ!

あらすじひとつとっても、端的でスパッと頭に入ってくるもの。

そうそう、こういう本なんですよ。

 

何も付け加えることがないほど、本の魅力が網羅されているので、いまさら何を、、、と思う。

だが私の4日間をなんとか救い上げるのも私の役目だ。

難しいことから逃げてはいけないと本が言っているではないか。

そんなわけで駄文。

まどろっこしくてわかりにくいのをご勘弁のほど、お付き合いいただければ幸いです。

 

 

いらないんですけど、のあらすじ⤵

幼い時に両親が離婚し祖父と暮らす夏木林太郎は、祖父が営む「夏木書店」という古書店で読書三昧のひきこもり高校生。

その祖父が突然亡くなり、面識のなかった叔母に引き取られることになった林太郎は、本の整理を始める。

すると店の奥からトラネコが現れて、林太郎に人間の言葉で話し出す。

トラネコは本を守るために林太郎の力を借りたいのだといい、林太郎は書棚の奥から本をめぐる迷宮に入り込む。

 

 

唐突ですけど・・・

この本を読んでいる内に私の脳内に呼び覚まされたのは、

『ビブリア古書堂の事件手帖』と『鹿男おをによし』 ( いづれもドラマ ) だった。

 

本書のトラネコが林太郎に言う「いくぞ二代目」というセリフと、

ドラマ『鹿男~』で鹿が言う「さあ神無月だ。出番だよ、先生」がリンクしてしまったのだ。

※ 鹿の声は山寺宏一さんが担当。

 

本書の「夏木書店」から『ビブリア古書堂』の店内とがリンク。

林太郎の、本に対する知識は、栞子さんと同レベルである。

 

 

話が脇にそれてしまったわ

物語には、四つの迷宮がでてきて、林太郎は四人の主と対峙する。


第一の迷宮 閉じ込める者

 多読を生業とし、読み終わった本をガラスケースに入れ鍵をかけている知識人

第二の迷宮 切りきざむ者

 速読術が嵩じて、本の内容を簡略化するという手法を考え、あらすじ化してしまう教授

第三の迷宮 売りさばく者

 売れる本を追求し、売れない本は容赦なく切り捨てる出版社の社長

第四の迷宮

 2000年、正確には1800年も前の本の精 ( ? ) 


林太郎は四つの迷宮に行き、主の心を動かすことが出来れば元の世界に戻れるらしい。

社交的でも雄弁でもない高校生にトラネコが何故この大役を持ち掛けたのかはいずれわかってくるけれど、林太郎が主たちに向ける 本への想いは熱く、その言葉は祖父が生前 林太郎にくれた言葉だった。

 

例えばこんなこと⤵

読むのはよい。けれども読み終えたら、次は歩きだす時間だ

第一の迷宮で鍵となる言葉。

最後に迷宮の男の妻が夫に手渡す小物に、粋を感じてしまった。

 

本を読むことは、山に登ることに似ている

読書はただ愉快であったり、わくわくするだけではない。ときに一行一行を吟味し、何度も同じ文章を往復して読み返し、頭を抱えながらゆっくり進めていく読書もある。

その苦しい作業の結果、ふいに視界が開ける。長い長い登山道を登り詰めた先ににわかに眺望が開けるように。

 

作品に散りばめられる本についての想いは作者自身が伝えたいことだろう。

夏川さんは《難しい本》について繰り返し繰り返し語る。

祖父を通して、林太郎を通して、そしてトラネコの口からも。

 

祖父

「本をめくることばかりしている学者は、ついには物を考える能力を喪失する」

「たくさんの本を読むことはよい。けれども勘違いしてはいけないことがある。

 本には大きな力がある。けれどもそれは、あくまで本の力であって、お前の力ではない」

「本がお前の代わりに人生を歩んでくれるわけではない。自分の足で歩くことを忘れた本読みは、古びた知識で膨らんだ百科事典のようなものだ。誰かが開いてくれなければ何の役にも立たない骨とう品にすぎない」

 

トラネコ

「大切なものは常にわかりにくいものだぞ、二代目」

 

林太郎

林太郎は同級生の柚木沙夜は色々な本を紹介する。

恋愛ものなら読みやすいかとオースティンから、スタンダール・ジッド、フローベールといった作品群。ひととおり読み終えた沙夜から、今度は別の種類の本をといわれガルシアマルケスを手渡されたものの、その難解さに苦しむ。

すると林太郎が言う。

「読んでいて難しいと感じたなら、それは柚木にとって新しいことが書いてあるから難しいんだ、難しい本に出合ったらそれはチャンスだよ」

 

 

つらつら抜き出していてハタと思った。

これが本のテーマなのかも知れない、と。

《難しいことに挑む》は、本に限った話ではなく、人生においても、山登りでもそうだ。

辛いことを切り開いた先に大切なものがあるのだと。

 

そうか、迷宮の主もそういうことだった。

第二の迷宮の主が、本を切り刻みあらすじ化してしまったのも、

第三の迷宮の主が、売れる本を作ることだけに邁進するのも、

現代人が忙しさにかまけて、難解な本に手を伸ばさなかったことを憂いてのこと。

 

 

夏川さんは、子供の頃から読書が好きだったらしい。

本書にも、驚くほど数の作品名と珠玉の言葉が散らばめられている。

 

これはその一例。メモ代わりです。

作品群

アレクサンドル・デュマ『ダルタニャン物語』11巻 剣よ、さらば

ロマンロラン『ジャン・クリストフ』

C・S・ルイス『ナルニア国物語』

ボズウェル『サミュエル・ジョンソン伝』

オースティン『自負と偏見』

コンスタン『アドルフ』

ガルシアマルケス『百年の孤独』

アンダスン、ジョンソン、カフカ、カミユ、スタンダール、ジッド、フローベールなどなど

 

珠玉の言葉たち 

悠揚たる態度、怜悧な光、端然と構えて、思慮と孤独と寂寥とを湛えた深い光、透徹して空気、惇順と説く、益体もない などなど

 

 

少し気になったこととわからなかったこと

「袈裟切りに切り捨てる」という言葉について

これは間違い? それともわざと?

 

猫を登場させたことについて

文庫本のあとがきで著者は、子供の頃に出会った絵本に出てくる猫の話をしている。

どうやらそれが、この作品のトラネコのイメージにつながるらしいが、さてなんという作品なのだろう。

「有名な絵本であるから、ここでその作品について詳細を述べるつもりはないが、~」と種明かしをしてくれていない。

「寡黙な猫だが、毒舌とユーモアをもって少年を揶揄し、皮肉り、叱責するようなイメージのトラネコが登場する絵本」とは、、、どんなに考えても私にはとんとわからない。

この絵本が何であるかがわかれば作品の中のトラネコのイメージの背景につながるのかもしれないし、肉付けにもなるようで残念でならないと思いながら、本を机に置いた。

 

 

 

 

本日の昼ごはん

蟹チャーハン

 

 

 

本日の夜ごはん

こんなところからスタート

困った時のお揚げさんチーズ

右はじは何? 牛肉とセロリの炒め物?