サッチモが虹の橋を渡りました。
大好きな板垣さんに看取られて静かな最期だったそうです。
板垣さんのところにサッチモが顔を出すようになったのは、4年前の暑い日。
板垣さんが飼っている日本猫の林太郎が気に入ったようで、日参する日々が続きました。
どうやら林太郎を女の子と勘違いしていた様子。
林太郎が男の子だとわかってからも、つきまとって甘ったれていました。
血統書もあるだろうバーマンがフラフラと外をうろついているのか、不思議な光景でした。
サッチモの左の喉には大きなたんこぶがあります。
でもフーシャーフーシャー言って人間を近寄らせません。
知り合いの猫の専門家 ( ねこのわさん ) に見てもらいましたが、目視で腫瘍らしきものと判明。
生後1年半くらいの雄であることだけはわかりました。
虐待された末の家出だったのか、サッチモは人間が近づくと異様に怖がり威嚇します。
その一方、林太郎が撫でられているのを見ると、自分は壁にスリスリして撫でられている気分になる。
ふとした拍子に「ふー」とか「アングリ」した愛猫に、腹を立てた飼い主が折檻。
そんなケースはよくあります。
ぶたれるから、フーシャー言う。
フーシャーと可愛くないから余計に折檻される。
サッチモも、そんなことだったんじゃないかと思いました。
板垣さんは玄関にサッチモ用のベッドを作り、庭先でご飯をあげるようになりました。
半年して、一年して、板垣さんの優しさにサッチモの心がほぐれていきました。
「この人は怖くない」
サッチモは、少しだけなら板垣さんにだけ触らせるようになりました。
しかし板垣さん以外の人間がパーソナルスペースに踏み込んだ途端、強烈な猫パンチを見舞わせる。
「あんたねぇ、ご飯を貰う時だけだもんなぁ」
そう思いながらも、怒ってしまったら、折角ほどけたサッチモの心が逆戻り。
世界で1人だけでいい、サッチモが心を許した板垣さんの愛情があれば、
それで、この子は幸せなんだろうと思いました。
少しずつですが、
サッチモの気分が良い時だけですが、
ご飯を食べている間にそっとなら、私も背中をタッチできるようになりました。
それでも機嫌が悪ければ容赦なくフーシャーだけど(笑)
フーシャーした後で、少し離れたところにゴロンとなり、
「ごめんなさい」と言っているような顔のサッチモ。
彼がどんなに怖い目にあったのかを思うと不憫に思います。
サッチモの行動半径は広く、1Km以上離れた境内で目撃することもありました。
そこは狸やハクビシンも出没する場所。
ある日、狸の子供がサッチモを親だと見間違い、ついて歩いていました。
柄が柄だけに「サッチモ 狸と間違われる事件」でした。
迷惑顔のサッチモ、その後に子狸、その後ろからホントウの親狸。
腹を抱えてしまうような光景でしたが、サッチモはそれに懲りたか1km遠足は間遠になりました。
サッチモの左首のたんこぶも気になります。
でもどんなに懐いた板垣さんでさえ、サッチモをホールドすることは不可能です。
動物病院に連れていってあげたいのは山々ですが、折角慣れたサッチモに、また怖い思いをさせるのもストレスかと、見守るしかありませんでした。
サッチモの食欲は旺盛で、こぶがある以外には、元気で快活に暮らしています。
ところが。。。
9月に入り、サッチモがどんどんやつれていきました。
食欲は一段と増し、いくら上げてもペロリです。
自分の分を食べたら、隣の林太郎のお皿に首を突っ込み
「兄ちゃん、僕にちょーだい」という始末。
それでもどんどんどんどん痩せていきました。
腫瘍の所為なのか、、、もしかしたら虫がいるのかもしれない。
捕獲できないまま半月が過ぎました。
そして今日、板垣さんから電話がありました。
「今日ね、朝7時にサッちゃん亡くなりました。
お医者に連れていくとか、何にもしてあげられなかったの。」
悲嘆にくれた板垣さんでしたが、私はサッチモは幸せだったと思います。
あんなに人嫌いだったサッチモが唯一心を開いたひと。
板垣さんに可愛い可愛いと沢山撫でてもらって、嬉しそうに甘えるサッチモが思い出されます。
美味しいご飯を沢山貰って、温かなベッドを用意して貰って、、、
恐る恐る板垣さんのお家の中も探検したこともあったわね。
板垣さんに会えて、サッチモはホントウに幸せだったと思います。
そんな大好きな人に見守られて息を引き取ったのですから。
サッチモ、良かったね。
君は幸せだったよね。
天国に行ったら、狸やにゃんこたちと仲良く暮らすんだよ。
さようなら、そしてありがとう。