Garadanikki

日々のことつれづれ Marcoのがらくた日記

赤屋敷の女 著:大佛次郎

「赤屋敷の女」読了。

f:id:garadanikki:20161007191430j:plain

この本は確か、鎌倉の公文堂書店で見つけたんだと思います。

真四角な本が珍しいので手に取って、たまには大佛さんの大衆文学もいいかなと購入しました。

しばらく積読になっていたのを読み始めたのは、丁度、横浜の大佛次郎記念館に行った時でした。

 

 

記念館のショーケースにも同じものがあったのを見て、ワクワクでした。

f:id:garadanikki:20161007191432j:plain

古書的には、そんなに珍しい本ではありませんが。

円地文子さんや平岩弓枝さんの装幀もやっている

時代小説の装幀・さしえの第一人者、佐多芳郎さんが手掛けています。

f:id:garadanikki:20161007191431j:plain

そんな本ですから、とても気に入っているんですが

さて内容は。。。

 

ハッキリ言って駄作。

初出は週刊朝日、連載小説だったそうですが、前半は引きつけられるところもあったものの、回を重ねる内に、話がコロコロと変り、あっけない最後となります。

作者はこの小説で何を語りたかったのか、問いかけたくなる結末でした。

 

幕末の江戸の人びとが、乗り込んで来た薩摩・長州の官軍勢を「田舎者」と忌み嫌い、

徳川幕府を懐かしんでいる様子は興味深く、

世の中が一変するということは、そういう感情もあるのかと感心しました。

お隣の横浜では特異な文化が育まれている様子も 面白く描かれています。

当時の江戸の人たち、横浜の人たちが何を考え、どんな環境で生きていたのかを知るにはとてもいいテキストでしたし、その本を読みながら訪ねた横浜は面白かった。

 

しかし文学的にはあまりにも筋が滅茶苦茶でお粗末としか言えません。

週刊誌の連載とは、こういうこともあるのかと驚きでした。

 

以下は、備忘で記したあらすじ。

雑文、整理していませんので読むほどのものでもなし、とじ込みにしました。

 

 

あらすじ

幕末、徳川幕府が倒れ、薩摩長州の官軍が江戸を占拠した時代の幕臣、小谷新吉の物語。

小谷の屋敷は麹町三丁目にあった。

上方で官軍と戦っていた新吉は、江戸に戻って薩摩軍を迎える戦闘に出て働く望みを捨てがたく、鳥羽から木津、伊勢路を抜け落ち武者となり江戸に帰ろうとしていた。

 

新吉はまだ二十二歳。

世の中がどうなっていくことか先が分からぬが、むだに死にたくなかった。

江戸城の明渡しを終えると、幕府直属の武士十数人がこれで自分の一代は終わったと、

潔く腹を切って辞したものがある。僅かばかりのその中に、新吉の父親がいた。

そうと知らず江戸に着いた新吉。

もとの旗本は家にこもって外に出ずにいるような状態。

新吉も荒れ果てた屋敷にこもっていると、官軍の士官が馬に乗ったまま、門をくぐり入ってきた。

「ご当主の家人か」

「今のところ、そのようです」

官軍の男は皮肉に笑い

「この家は、おれが貰っている。明日、太政官の命令が下ろうから、そのつもりで片づけておけ」

 

引越し前夜、新吉は隣家に挨拶をする。火事を出しますから水と御人数をあらかじめお仕度願いたい。

風さえなければ今夜中に仕ります。

少し抗議もあったが、金をやって新吉が火消しを集め、火事をかこんで用心させてあった。

その朝以来、旗本小谷新吉の姿は江戸にはなかった。

 

新吉が隠れ住んだのは横浜だった。髪を伸ばしてざんぎりにし、農家の離れに借りた。

江戸前のきりりとした容貌に女はほっておけないらしく、

新吉はおせんや、らしゃめんのお登勢に言い寄られる。

 

ある日、昔の知り合い大内田作之丞と再会する。

作之丞は、ある儲け話に新吉を誘う。話はこうだ。

戦況が怪しくなると、慶喜公が十人ばかりの供を従え大阪城を抜け出すという事件があった。

配下を置いて自分だけ逃げのびたのだが、その極秘の失踪の折、巨額の金を運び出した。

千両箱を積んで漕ぎだした開洋丸には勘定奉行の瀬戸内外記が乗っていたが、

船は難破、金も乗組員も海に沈んだと言われていた。

しかし作之丞は、難破した船が唯一生還した外記が金をどこかに隠したと睨んでいた。

儲け話といっても作之丞は金を独り占めしようというのではない。

外記を探し金のありかを突き止めたら、扶持を失い路頭に迷う仲間に分け与えようというのである。

話半分に聞く新吉をあとに、作之丞は江戸に出かけていく。

 

作之丞が訪ねた外記の屋敷は、娘の勝が守っていた。

父親は留守でいつ戻るかもわからぬと言う。

日参する作之丞に次第に心を開きはじめた様子の勝であったが、

作之丞は、「父親の所に案内する」と誘い出した荒野で殺されてしまう。

 

新吉は作之丞殺害が勝の仕業だと疑い、勝の行方を追う。

横浜や神戸の航海記録から、神戸でお勝の消息が途絶えたとわかると、

お登勢とその主人、おせんと4人で神戸に向かう。

 

神戸に降り立ったおせんは、観光で回った先で美しい顔立ちの中国人の男に会う。

その男は、高台の赤い屋根の家に住んでいた。

おせんからお登勢、お登勢を通じてその中国人の男の話を聞いた新吉は、

その中国人が、断髪して男になり変っているお勝であると突き止める。

 

外記の居所、赤い屋根の屋敷に向かう新吉。

しかしそこで聞く、お勝の話とその顛末は意外なものだった。