Garadanikki

日々のことつれづれ Marcoのがらくた日記

江口きちの生涯 

 

 

今、島本久恵:著『江口きちの生涯』を読み進めています。

f:id:garadanikki:20200507124120j:plain f:id:garadanikki:20200507124144j:plain

右が江口きちさん。

最後の上京の時に撮られた写真というので24歳の写真です。

 

きちの生涯

江口きちは、大正2年、群馬県利根郡川場村に生まれました。

父は博奕打ち、母は奉公人。

千葉県生まれの父と、栃木県生まれの母がどこで知り合ったかは不明ですが、二人が流れ着いたのが群馬県の川場村。そこで、廣寿、きち、たき子の一男二女を設けます。

 

きちの兄・廣寿が5歳の時、脳膜炎を発症します。

時を同じくして父は旅に出ます。

母は義父の援助で、街道筋に雑貨店兼簡易食堂「栃木屋」を開きます。

 

廣寿は脳膜炎か原因の知能障害者でしたが、きち・たきは尋常高等小学校まで卒業。

特にきちは学業優秀で卒業し、沼田へ出て和裁修行をします。

その5年後に、沼田郵便局に勤務し自活を始めるものの、

母の急逝に遭い、余儀なく店を継ぐことになります。

 

実家「栃木屋」には、戻ってきていた無能な父、手のかかる障害の兄、三歳下の妹たき子。

なにはともあれ、みんなを食べさせなければならず、きちは店に出て慣れぬ商売に奮闘します。

 

きちは心の憂さを、小学校の受持ちの先生 ( 田村晴子 ) から手解きを受けた短歌に託します。

やがて、河井酔茗・島本久恵夫妻が主宰する「女性時代」に投稿を始めるようになると、才能が開花。

きちの歌の題材は、亡き母のこと、赦せない父のこと、哀しい兄のこと、奉公に出た妹のことでした。

 

やがてきちの前に、援助の手を差し伸べる男性が現れます。

村の長者で妻子持ちの男でした。

教養もあり、人望の厚い人物でしたが店では寡黙な人でした。

男はきちの苦境をみて、援助を申し出ます。

 

二人の間には恋しい気持ちが芽生えますが、道ならぬ恋です。

きちは、兄廣寿を道連れに服毒自殺を遂げます。

男に借りた金を完済したのちに。

25年の生涯でした。

 

 

きちが母から引き継いだお店「栃木屋」

f:id:garadanikki:20200507124151j:plain

 

本書は、

第一部が、きちの歌の師匠である島本久恵が書かれています。

丁寧な語り口調でつづられたその文章は、やや読みづらい。

きちと久恵は、短歌を通したやりとりはあるものの、実際に逢ったのは一度だけだったそうです。

本に書かれた話の殆どは、弟子である小林なを子から聞いたエピソードをまとめたものでした。

 

小林なを子は、島本久恵が主宰する「女性時代」の同人で、

きちとは、川場村のきちの店に頻繁に通って友好を深めた歌仲間でした。

久恵は、なを子やきちの恋人と会い、恋人からは遺言 ( が書かれた手帖) を委ねられ、この本を書くことになったようです。

 

そうしてまとめられたのが、第一部の『きちの生涯』です。 

一度しか面識のなかったことを考えれば「よくまとまった」とは思うけれど、

それでもやはり「臨場感に今ひとつ欠けるかな」というのが正直な私の感想です。

 

 

第二部は、きちの作品。

第三部は、きちの日記でした。

 

短歌の素養がない私にとって、第二部は、何度読んでも理解に至らずでした。

第三部の日記は、きちが亡くなる年 ( 昭和13年 ) の半年間のものです。

日記の内容は主に備忘録、店に来た人の名前や用件をはじめ日常のこまごましたことですが、

初めの日にこんな記述がありドキリとしました。

既に死を決っしていたのかと。

 

6月1日

日誌や手紙の類 ひとまず整理して焼き捨てた後、

新たに日常生活の記録を書き留めておこうと思う。

 

繰り返しになるけれど、私は短歌というものが全くわかりません。

日記の断片に、きちの素顔をかいまみることしか出来なかったけれど、

短歌のわかる人ならば、彼女の歌から沢山の感動を得られるのでしょう。

彼女の持つ、清々しさ、寂しさ、正しさなどがひしひし伝わってくるのでしょう。

 

 

最後に、

一番印象に残った文章を書いて終わります。

昭和13年6月9日、亡くなる半年前に書かれた日記の一文です。

「野の花はあんまり忘れられている、金ぽうげや薊だって、一枝二枝挿してみるときれいだし、露草の花の色は雨の中にもくっきりと美しい、一日限りの命は雨にもいたまず、日にもさらされず、全生命の営みを全うしい終わる。亡びゆくものは美し、美しきものは亡びゆく。こんなセンチメンタリズム、なお捨てがたい、強靭なもの、健康の美、そして壮麗さより、もろさ、はかなさの美に心惹かれる因果か。」

 

 

《参考文献》

河出書房新社 2003年8月10日

「刹那の恋、永遠の愛」 相聞句歌四十章 著:正津 勉

p.127 わが投ぐる波紋の揺れの揺れ及びいたみあらすなこの君の上に 江口きち

https://gara-bungaku.hatenablog.com/entry/2020/05/02/170201

⤴ Marco 限定サイトに記載 閲覧ご希望の方はお申し出の程を。

 

 

 

 

本日の朝ごはん

f:id:garadanikki:20200517105349j:plain

残り物のカレーに加え、色んなものを出したらこんなんなった。

夜ごはん

f:id:garadanikki:20200517105429j:plain


金目鯛の干物 例の能登のやつ。

f:id:garadanikki:20200517105356j:plain

 

エリンギと豚肉を炒めました。

f:id:garadanikki:20200517105410j:plain

間違って買ってしまった厚切り豚肉の使い道に往生してたのが、エリンギと合わせたらなかなかでした。

 

自家製餃子アゲイン それとかっぱ巻き

f:id:garadanikki:20200517105416j:plain

 

かっぱ巻きを作った後に残った酢飯に明太子を混ぜて手巻き寿司にしました。

f:id:garadanikki:20200517105423j:plain

食べきれんかった。す、とほほ。