Garadanikki

日々のことつれづれ Marcoのがらくた日記

吉田修一『路』を読んで

 

吉田修一 著『路 ( ルウ ) 』を読了。

1999年、台北~高雄間の台湾高速鉄道を日本の新幹線が走ることになった。

入社4年目の商社員、多田春香は現地への出向が決まった。

春香には大学時代に初めて台湾を訪れた6年前の夏、エリックという英語名の台湾人青年とたった一日だけすごし、その後連絡がとれなくなってしまった彼との運命のような思い出があった。

 

台湾と日本の仕事のやり方の違いに翻弄される日本人商社員・安西、車輛工場の建設をグアバ畑の中から眺めていた台湾人学生・陳威志、台湾で生まれ育ち終戦後に日本に帰ってきた日本人老人・葉山勝一郎、そして日本に留学し建築士として日本で働く台湾人青年・劉人豪

 

それぞれ別々に進んでいた物語が台湾新幹線をきっかけに収斂されていく。1999年から2007年、台湾新幹線の着工から開業するまでの大きなプロジェクトと、日本と台湾の間に育まれた個人の絆を、台湾の季節感や匂いとともに色鮮やかに描いた、大きな感動を呼ぶ意欲作。.

文芸春秋『路 ( ルウ ) 』HPよりbooks.bunshun.jp

 

人物名にてこずる

作品には多くの台湾人が登場するので、名前の表記や読み方が難しかった。

 

例えば、劉 人豪

多田春香が学生時代に出会った青年も実名「劉 人豪」だが、

外国人には覚えてもらいにくいから、と「エリック」という英語名を通称にしている。

※ 春香と出会った時にも、彼は「エリック」と名乗った為、再会を困難にさせた。

 

彼のように台湾では、外国人と接する機会が多い人が英語名を持っているらしい。

だが、この本に登場するエリック以外は全員、台湾名だった。

本文では初回だけルビがふられていたが、二回目からはルビなしだったので、

「何と読むんだったかしら」と戸惑った。

 

事程左様に。

現地採用スタッフ 林 芳慧は「リンファンホエ」と読み、通称は小慧「シャオホエ」。

整備員になる青年 陳 威志は「チェンウェイズー」、通称は阿志「アーズー」。

威志の幼馴染 張 美青は「ツァンメイチン」、通称は阿美「アーメイ」。

 

他にも沢山の台湾名が出てきて戸惑った。

漢字が日本と同じだから、欧米の名前よりも混乱するのかも知れない。

 

名前問題に振り回され、内容が頭に入るまで多少の時間を要した。

読まれる方は、下のサイトを参考にしながら読むといいかも知れません。

(2ページ目)吉田修一『路(ルウ)』 国を越えた人の絆を描く感動長編 | 特設サイト - 文藝春秋BOOKS より借用

 

 

お国柄の違い問題に共感

新幹線の開通がどんどん遅れていく原因のひとつに《台湾人と日本人の仕事の進め方が違う》ということがあったようで、台湾側と折衝する商社マン・安西誠はどんどんノイローゼになっていく、彼は台湾側の担当者と折り合いがつけられずにいたのだ。

台湾側の黄 ( 台湾人 ) やバルト ( フランス人? ) が安西に、とても間に合いそうにない提出期限を設ける。もしかすると初めから間に合わなくて当然だと思っているのかも知れない。しかし期限を切られた安西の方はそれを真に受け、それこそ徹夜を厭わずに約束を守るのだ。

守られれば、先に進めるしかない。

しかし期限を決めた当の二人にまだ準備ができていないので、ああでもない、こうでもないと、安西の不備を責め、結局、安西が期限を守ったところでスケジュールは遅れてしまうことになる。

p.80

安西が真面目で、相手が不真面目ということではない。

スケジュールについての認識や、仕事の進め方が違うということだ。

例えば、スケジュールというものが予定通りには進まないものとして認識している人と、予定通りに進むからスケジュールだと考えている人の違いはそう簡単には埋められない。日本人からすれば、スケジュールが予定通りに進むということは、石を落とせば地面に落ちるというくらい当然なのだが、台湾ではスケジュールが予定通りに進まないということの方がそれと同じくらいに当然なのだ。

 

日本人からすれば当然なのは自分たちで、間違っているのは相手だと言いたくなるが、実は世界に目を向けてみると、スケジュールという言葉に対して「予定通りに進むもの」と認識する人の方が少ないのではないだろうか。これはどちらがいいとか悪いとかいう話ではなくて、スケジュールというものを到達点と考える者と出発点と考える者の違いであり、安西はそれに未だに順応できずにいる。

p.81

 

このエピソードから、【不良品】というグローバルジョークを思い出した。

あるアメリカの自動車会社が、ロシアと日本の部品工場に以下のような仕事を発注した。

「不良品は1000個につき1つとすること」

数日後、ロシアの工場からメールが届いた。

「大変困難な条件です。期日にどうしても間に合いません。納期の延長をお願いします」

数日後、日本の工場からもメールが届いた。

「納期に向けて作業は順調に進んでおります。ただ、不良品用の設計図が 届いておりません。早急に送付してください」 

 

これは《日本人が真面目》というのを皮肉ったものだが、海外で仕事をしていくには、

先方のお国柄をよく理解して柔軟に対処する資質がないといけないのかも知れない。

安西は同僚たちからも《順応できずにいて、心配》と思われていたようだ。

 

総合商社って、なにをするの? 春香の役目はなに?

最後までわかりにくかったのが、多田春香の役割だった。

彼女は総合商社の ( 三井商事か? ) から台湾に出向してくる商社マン。

出向者は山尾事業部長・安西・春香の3人で、あとは現地でスタッフを雇っている。

春香は英語や中国語が堪能というワケでもなく、学生時代から台湾が好きだというだけしか描かれていないし、新幹線の専門的知識を持っているようにも思えず、もちろん技術者ではない。

そんな未婚女性の春香が抜擢され、なぜ台湾に7年もいるのかがわからなかった。

 

台湾事務所には、林 芳慧という現地スタッフもいる。林は春香と違い、日本語も台湾語も英語も出来る。

そんなところにわざわざ日本から春香が来る意味はあるのだろうか。

せめて相手と対等にビジネス英語でわたりあえるくらいのスキルがなければ、台湾に連れてこられる必要はないのではないだろうか。

 

商社の役割につての基本知識が私にないからわからないのかも知れないが、

ドラマ化されたNHK『路~台湾エクスプレス』のシーンでも、春香がスキルを活かしている様子は見当たらなかった。

  • 台湾側との会議の議事録を書くようにと言われ、机の上にボイスレコーダーを置く
  • 日本から到着した新幹線が道路を運ばれて行くとき、観衆の案内役をする

 

いつもファイルを抱えている春香ちゃん



商社って何?

総合商社は、幅広い産業分野で、原料や加工品、サービスなどあらゆる商材を扱って、売りたい相手と買いたい相手を結び付け、取引の仲介をする。また、事業や商材を売り出すために、販売チャネルの開拓や新たな物流ネットワークづくりや金融・保険機能を果たしたり、国際的なプロジェクトを手がけたりする。例えば電力や交通などのインフラ事業やそれに関連する取引を手がけるのも総合商社の仕事だ。 

商社業界とは?仕事・業界研究 - リクナビ より

www2.nhk.or.jp

 

 

 

 

 

本日の昼ごはん

最近 ハマっているざるラーメン

右端にチラッと写っているブルーの小袋が、特製香味油

 

 

本日の夜ごはん

スペアリブ

 

デザートのプリン