ここのところ、毎月のように落語を楽しんでいます。
今月も落語会に行ってきました。
出演は柳家喬太郎さん、柳家花緑さん、柳家三三さん。
場所はめぐろパーシモンホール、
初めて行くホールです。
都立大学の駅にはポスターと案内表示が。。。
東横線は久しぶりだわ。
この駅は都立大学駅、隣は学芸大駅、
昔からよく間違える人がいます。
都立大も学芸大も今は移転してここにはありません。
両駅名は住民のアンケートにより大学が無くなった後も残されているんですって。
これから行く「めぐろパーシモンホール」というのも、都立大の跡地にあるようです。
このアプローチ素敵。
芝居や音楽会、落語もそうだけど、
会場に向かうのってワクワクする。
まして
こんなに良いロケーションは最高の気分になる。
ホールが見えてきた。
二つ目昇進は1993年
真打昇進は2000年
師匠は柳家さん喬
柳家花緑 ( かろく ) 1971年8月2日生まれ44歳
二つ目昇進は1989年
真打昇進は1994年
師匠は五代目 柳家小さん
柳家三三 ( さんざ ) 1974年7月4日生まれ41歳
二つ目昇進は1996年
真打昇進は2006年
師匠は十代目 柳家小三次
花緑さんは五代目小さん ( 祖父 ) の最後の弟子。
三人の中で真打昇進も一番先です。
喬太郎さんと三三さんは、五代目小さんの孫弟子にあたるわけですから、
お2人にとって花緑さんは師匠すじの人になるわけです。
※ 柳家喬太郎の師匠柳家さん喬は五代目小さんの弟子。
※ 柳家三三の師匠十代目柳家小三次も、同じく五代目小さんの弟子。
そうなると出演順は、喬太郎、三三、花緑という感じでしょうか。
当たり!! まず登場したのは喬太郎さん、禁酒番屋
【禁酒番屋】
きっかけは、とある武家の家中の事件。
泥酔した二人のお侍がチャンバラを始め、一人がもう片方をバッサリ。
斬った方はそのまま帰って寝込んだものの翌朝目覚めて我に返るや、
「主君に申し訳ない」と切腹をした。
その話を聞いた主君
「酒が災いしての無益な斬り合い、何とも嘆かわしい事じゃ。
今後、わが藩では藩士が酒を飲む事を禁ずる。
余も飲まぬからみなも飲むな」
殿様自ら『余も飲まぬ』とのお達しがあれば、藩士一同否応なく禁酒するしかない。
こうして家中一党禁酒、となったが……何しろものが酒である。
そう簡単にやめられるわけがない。
なかなか禁令が行き届かず、隠れてチビリチビリやる者が続出。
騒動になることを恐れた結果、屋敷の門に番屋を設け、
出入りの商人の持ち込む物まで厳しく取り締まる事になった。
人呼んで「禁酒番屋」。
家中の侍でも大酒飲みの筆頭である近藤、酒屋にやって来てグイッと一気に三升。
『禁酒なんど糞くらえ』で、すっかりいい心持ち。
「いい酒であった。小屋でも飲みたいから、今晩中に一升届けてくれ」
もとより上得意、亭主も無下には断れない。
だが近藤の長屋は武家屋敷の門内、配達が露見すれば酒屋は営業停止もの。
しかも入口には例の「禁酒番屋」が控えている。
どうやれば突破できるのか……
亭主が頭を抱えていると、小僧の定吉、恐る恐る手を上げる。
「正直に酒徳利を持って関所を通ろうとしたら止められます。
菓子屋の梅月堂で南蛮菓子のカステラを売り出したとか。
そいつに見せかけたらどうです」
もとよりお菓子は御法度の外である。
酒屋ではカステラを買ってきて中身を抜き、五合徳利を二本、
菓子折りに詰めてきれいに包装する。
定吉、菓子屋の小僧に衣装を借りて禁酒番屋へ……
「お頼み申します」
「通れ……そのほうは何じゃ?」
「向こう横丁の菓子屋です。近藤様に、カステラのお届け」
近藤は家中屈指のウワバミ、そこに菓子屋からカステラ……
あ奴いつ甘党になった、おかしい。
「よし、通れ」ということになった、ところまでは良かったが……
「有難うございます……ドッコイショ!」
「待てい!! 菓子折り一つで『どっこいしょ』とは何だ!?」
抗議の声も聞かばこそ、折りを改められて
「この徳利は何じゃ?」。
「えー、それはその、先ごろ出ました、『水カステラ』という新製品で……」
「たわけたことを申すな! そこに控えおれ。中身を改める」
一升すっかり飲まれてしまった。
「かようなカステラがあるか。この偽り者!!」
飲まれて追い出され、見事に失敗。
カステラで失敗したので、今度は油だとごまかそうとしたが、これも失敗。
酒屋から酒を巻き上げた番屋の藩士、もとより酒は嫌いでない。
「次はどうやって来るだろう」と待ち構えているから酷い話で……
都合二升もただ飲みされ、酒屋も堪らない。
「この際突破は諦めて、仕返ししてやりましょうや」
「どうする」
「番屋の連中に小便を飲ませます」
「小便?飲むか!?」
「初めから『小便です』と言えばいい。嘘はついてないでしょう」
話は決まった。
店の一同、大徳利を取り囲んでジャァジャァ……
「お頼み申します!」
「とォ~れェィ!」
番人たち、もうベロベロに酔っていて、何を言っているんだがわからない。
「向こう横丁の植木屋でございます、近藤様が植木の肥やしにする……
との事で、『小便』のご注文で……」
内心『また呑める!』とほくそ笑む番人、
「馬鹿ァ!! 出せ!!」
と徳利を供出させる。
「おお、これはまた、ヒック……ぬる燗がついておるな……
まったくけしからん……小便などと偽って……」
徳利の中身を湯飲みに注ぐ。
「……だいぶ黄色い……古酒だな。
それも、またよし……まったく、けしからんな……」
おもむろに一口……ぶーっと吹き出す。
「ウグッ!? これは小便ではないか! 何とけしからん奴だ!!
かような物を持参しおって!」
「ですから、初めに小便と申し上げました」
「うーん……あの、ここな……正直者めが」
喬太郎さんの酔っ払いぶりは、いつもオカシイ。
前回、練馬の大ホールの時も、大きな振りで酔っ払いをやっていたけれど、
喬太郎さんの独特な動き方が笑いを倍増します。
さて。
仲入り後、登場したのは三三さん、蛙茶番をされるようです。
綺麗なお辞儀だなあ、三三師匠は。
【蛙茶番】
ある商店で、店員や出入りの商人で素人芝居を演ることになり、くじ引きで配役を決めた。
当日になり、巨大なガマガエル役の伊勢屋の若旦那が、仮病を使って休んでしまった。
舞台の頭取(一切を取り仕切る役)を担当しる番頭は困り果て、丁稚の定吉を代役に仕立てることにする。
番頭は、舞台番(舞台袖で客の騒ぎをしずめる役)を担当するはずの建具屋・半次(半公)がいつまで待ってもやって来ないことに気づく。
定吉が迎え行くと、半公は怒っている。
「役をやらせてもらえると思ったら裏方だったので面白くなく、
さらに店の旦那に『いつか化物芝居の座頭をやるなら頼む』
とまで言われた」
と定吉にこぼす。
一旦引き返した定吉の報告を聞いた番頭は、
「半公が岡惚れしている小間物屋の娘・みい坊の名を使って半次を釣れ。
『素人役者なんかより、半ちゃんの粋な舞台番を観たいわ』と言っていた、
と半公に吹き込め」
とアドバイスする。
半公は、祭の時に仕立てた真っ赤なちりめんのふんどしを急いで質屋から請け出し、湯屋へ向かった。
「おやじ、油っ紙はねぇかな? ふんどしを包んで、頭に結わいつけて湯に入(へ)えるんだ」
「それじゃ川越えだ。大事なら番台で預かりますよ」
「後ろの神棚にでも上げといて……」
「馬鹿言っちゃいけねえ」
半公が湯に入っていると、定吉がきて、「早く来ないとみいちゃんが帰っちまう」と、再度嘘を言って急かす。
これを聞くなりあわてた半公は湯から飛び出し、体も拭かず、急いで着物を着て駆け出す。
店へと向かう途中、出入り先の鳶頭(カシラ)に出会った半公は着物のスソをまくり、
「いい物だろう?」と自慢をする。
カシラは「確かにすごい」とうなる。
「どっしり目方(重量感)があるんだ。物がいいから、丈が長(な)げえんだ。女子供を驚かそうと思ってよ」
「なるほど。気が小せえ奴が見たら目ぇ回すぜ」
「くわえて引っ張ってみてくれよ、チリチリっていい音が……」
「冗談言うな!!」
半公が自慢しているつもりになっているふんどしは、そのとき湯屋の番台に置かれたままであった。
半公が店へ入り、ようやく幕が開く。
舞台袖から見渡してもみい坊の姿が見えない。
半公は不審に思うが、ふんどしを見せれば発見できるだろう、と考えて、
誰も騒いでいないのに「静かに静かに」と番を務めつつ、着物のスソをまくる。
半公の異様な姿に気づいた酔狂な観客が「ようよう、半公、日本一! 大道具!」と大向う(掛け声)をかけたので、
調子に乗った半公は客席の方に乗り出していく。
この間に芝居は、大盗賊の徳兵衛が、赤松満祐の幽霊から忍術の極意を伝授される、という見せ場に入る。
ここで大どろ(太鼓)が鳴り、ガマの登場になるはずが、ガマ役の定吉が舞台袖から舞台へ向かおうとしない。
番頭が「おいおい、定吉! 早く出なきゃだめだよ」と声をかけると、
定吉は「いいえ、ガマは出られません」と答える。
「なんでだ?」
「あすこで、青大将が狙ってます」
面白い。三三さんが話すとひとつも下品にならない。
お声も良し、姿も良し、いいですなぁ、三三師匠は。
さあいよいよ大トリ、花緑さんが登場しました。
ところがここでハプニング。
枕で、今回の出演者を「個性の違う三人、どこもかぶらないのが大事なんです」という話から、
テレビ寄席「笑点」のメンバーも、ひとりもキャラがかぶらないのが長寿番組の秘訣という話になり、
「でしょう? 恐妻家、泥棒、女ったらし、腹黒、バカ~」と捨て身のキャラクター付けをして、
さて噺に入ろうとしたところに。。。
ガガガガブヘッ
会場のスピーカーから大音量の異音が轟く。
何が起こったのか。
・・・と、お客さんよりも動揺したのはこれから噺をしようとしている花緑師匠。
花緑師匠は、舞台袖のスタッフを見やり
「何があった?」「ん、原因は、、、わからない」
「わからないって言われてもねぇ、また鳴ったら・・・」
袖から出てこないスタッフに代わり、説明をしようともラチがあかず、
気を取り直して話し始めた矢先、またもや
ガ゛ガガガッ
「噺家はかくも小心なものなんです。
もう頭の中であれやこれや組み立てていたものが全部吹っ飛んでしまいました。
こういう時、舞台上に1人っていうのは辛いですね。
先の2人が一緒に舞台にいてくれたらって思いますが、喬太郎さんもう帰っちゃいましたから」
客席から笑いが起きる。
「そんなもんなんですよ~。
終わった後に打ち上げとか仲良くやってるようにお思いでしょう?
毎日そんなことやっていたら死んじゃいます」
どっと笑い。
「打ちあけ話をしますと、こういう会で何を話すかはその場で決めるんです。
でね、考えてた噺をやめようかと今思っているところ。えっ何?」
袖を見ながら話を続ける。
「さあて、何をやろうかな・・・」
「頑張れっ!!!」
大向こうがかかります。
「ぬん、頑張ります。
安心してくださいね~。
ひとつしか喋れないわけじゃないんですよ~。はい。」
会場大爆笑。
師匠は袖のスタッフを見やる。
「また鳴ったら嫌ですよ。原因究明してくれないと、うん、そう、それじゃ何?
一回幕を下ろす?
はい、それでは皆さん一回幕降ろして、原因を確かめるんだそうです」
幕がそろそろ下りていきます。師匠ひらひら手を振ってお辞儀をしております。
こんなこともあるんだねぇ。
しばらくして幕が上がると、師匠は高座にいたまま扇子をヒラヒラ振っています。
結局、原因は特定できなかったのですが、取り換えられるような配線などを交換したんだそうです。
「実をいうと、最初に考えていた噺はお化けのはなしなんです。だからやめます。
それに時間も足りないしね。終演を延ばすわけにもいきませんしね。
皆さんだってアレでしょう? このあと予定がある人もいるでしょう。
お迎えがある人もいるでしょ?
地方の公演なんかだと、帰りの足がないから家族が車で迎えに来るわけなんですよ。
そんなとこで終演延びたらもう大変。
「まだ終わらないの?」と携帯のコールが場内鳴り響いちゃいますもん。
います? もう帰りたい人、手ぇあげて」
なんて笑かしながらするり入っていった噺は、天狗裁きでした。
【天狗裁き】
家で寝ていた八五郎が妻に揺り起こされる。
「お前さん、どんな夢を見ていたんだい?」
「夢? 夢なんて見ていない」と答える八五郎に妻は納得せず、隠し事をしているのだと疑う。
「見たけど言いたくないんだろう」「夢なんて見ていない」と押し問答になり、夫婦喧嘩になってしまう。
長屋の隣人が夫婦喧嘩に割って入るが、経緯を聞いた隣人も夢の内容を知りたがる。
「そもそも夢は見ていないので話しようがない」と八五郎は言うが隣人は納得せず、
またも押し問答から喧嘩になってしまう。
今度は長屋の大家が仲裁に入った。
大家もやはり八五郎の夢について知りたがる。
八五郎は「夢を見ていない」と弁解するが大家には信じてもらえず、
「隠し事をするような奴はこの長屋から出て行け」と言われてしまう。
八五郎が立ち退きを拒否したため、奉行所で詮議されることとなった。
奉行は八五郎に好意的だった。
だがやはり八五郎の夢に興味を持ち、見た夢を聞き出そうとする。
八五郎は「夢は見ていない」と答えるが奉行の怒りを買い、縛り上げられて奉行所の庭木に吊るされてしまう。
吊るされた八五郎が途方に暮れていると、突風が吹いて八五郎の体が宙に浮く。
気が付くと山奥にいて、目の前には大天狗が立っている。
奉行所の上空を飛翔中、理不尽な責苦を負わされている八五郎に気が付いたので、助け出したのだと大天狗は言う。
大天狗もまた八五郎の夢のことを聞きたがる。
「夢を見ていないので話しようがない」と八五郎は今まで同様に弁解するが、
大天狗は怒り出し、八五郎の喉元につかみかかる。
首筋に大天狗の長い爪が食い込み、八五郎は苦しみ悶える。
気が付くと八五郎は家で寝ていて、妻に揺り起こされていた。
うなされていたようだ。
「お前さん、どんな夢を見ていたんだい?」
凄い。ピッタリ予定の終演時間。
花緑師匠は、それは大変でしたでしょうが、観客の気をそがないでハプニングを笑いにかえて締めくくる。
こういうのが腕なんでしょう。
実は柳家花緑さんの落語を生で聞くのは今回が初めてです。
昔、むかーし、特ダネに出演していらした頃の花緑さん、
大変失礼ながら、お顔が泣き顔で陰のイメージを持っていたんです。
泣かせる噺はお上手だが、すっとこどっこいな噺はどうなんだろうと、、、
本当に失礼しました。
師匠の女ぶりはそれは色っぽくて、何よりも品のある話しぶりでした。
そして頭の回転が速い、瞬時に空気を読むセンスと、
堂々とした貫録にあっぱれな高座を存分に楽しませていただきました。