Garadanikki

日々のことつれづれ Marcoのがらくた日記

志の輔らくご ACTシアター

 

先週の土曜日28日。

胃潰瘍で入院していた病院から退院させてもらって行った先を暴露します。

「志の輔らくご 赤坂ACTシアター」に行きましたの。

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師匠立川談志ゆずりの綺麗なお辞儀だ

 

志の輔さんの落語は生で聞いてみたいと思っていたが、

「チケットが一番入手困難な落語家」という話で諦めていました。

ところが取れたんです、ACTシアターのチケットが。でかしたMOURI !!!

 

しかーし。直前に急な入院となりまして、、、、

MOUURI には「いいから友だち誘って行ってきて」と言っておいたんですけども、

ダメもとで先生に退院をもちかけたら「いい」って話になって。やっほーるんるんるん

 

病院からフラフラしながら自宅に戻り、風呂に入って出かけました。

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あらぁ、赤坂の駅って変ったのねぇ。

30年前に赤坂の住人だった時には、こんなんじゃなかった。

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おうおうおう、階段が光っとる。

駅前にはケンタッキーがあって、TBS会館の地下のトップスのカレー、よく食べたなぁ。

・・・なんてノスタルジーに浸りながら会場に向かう。

いいアプローチだ。

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最近よく行く落語会といえば、練馬だったり世田谷だったり江東区だったり、、、

でも志の輔さんは違う。港区ですよ、港区。

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なんてお洒落な建物なんでしょ。

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階段ちょっとフラフラしながら、でも心臓は嬉しさでドキドキ。

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凄い。芸能人の花がたっくさーん。

他の落語家さんの落語会とは全然違う。まあ一日公演じゃないからってこともあるけど。

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花があると、華やかですねぇ。

シャレではない。

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このコーナー笑った。

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紅白の衣裳のことで険悪になったお2人の花が並んでます。

どぎつい。水前寺さんを中に挟めばいいのに(笑)

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そんなこんないいながら客席に入ります。

 

演目 

[第一部] 大忠臣蔵~仮名手本忠臣蔵のすべて

[第二部] 落語 中村仲蔵

 

幕が上がると「おおっ」 歌川国芳のむだ書きがパネルになっています。

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下手には座蒲団がひとつ。

上手奥からゆかた姿の志の輔さんが登場しました。

志の輔さんはゆっくりパネルの前を通りながら、セットとこれからやることを説明します。

 

その前に。

セットのむだ書、なんか違うと思ったら、この中の3枚の、、、、

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2枚の絵を反転させて、、、

写真は撮れませんが、公演にかかわられたスタッフの方のBlogがありましたので、寸借。

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出典:VJコミックカット・ユルユノレ日言己

実はこの絵の中に、デザイナーさんが「しのすけ」という文字を入れてるそうです。

一番右のパネルの中に。。。

志の輔さんが「そんなことしてもらって、嬉しいなあ」と言ったら、

デザイナーさん「気にしないでください、僕の名前も入れました」と言ったとか。

 

 

パネルはふすまのように開くようになっていて、中にはスクリーンがありまして。

志の輔さんの説明に合わせて文字や絵が映し出されます。

そう。

一部は、二部の「中村仲蔵」の予備知識として、歌舞伎の仮名手本忠臣蔵のレクチャーだったんです。

江戸時代の人は歌舞伎がもっと身近だったから、仮名手本忠臣蔵の何段目といえば、筋書や登場人物がわかってたでしょう。しかし現在は、歌舞伎好きだったりしない限り、知らない人の方が多い。

 

「二部がチケット代をいただくもの、一部は料金外のものであります」

師匠が浴衣姿で登場したのも、出番の前、歌舞伎役者が楽屋で過ごす雰囲気にならったものらしい。

 

志の輔さんの説明は本当にお上手です。

どんどん頭に入ってくる。

よどみのない説明は、まるで NHKの「面白ゼミナール」の鈴木健二さんみたい。

古っ!!!

あ~あ、志の輔さんが私の学校時代の先生だったら、もっとお勉強出来る子になってたろうに。

 

休憩をはさんで、いよいよ「中村仲蔵」の噺に入ります。

 

【あらすじ】

江戸時代、歌舞伎の世界が今よりも厳しかった頃、苦労の末、名題(なだい)に昇進にした中村仲蔵という役者の実話です。

彼は梨園の出ではありません。当時はどんなに実力があっても家柄の問題で名題になどなれない。

ところが仲蔵は、その器量と実力と努力でどんどん出世をしていきます。

成功にはやっかみがつきもの、名題になった仲蔵に与えられた役はとても小さな役でした。

 

 

「忠臣蔵」五段目の定九郎(さだくろう)役は、今でこそ名優が演じる役ですが、それもこの、中村仲蔵の奮闘のお蔭。

四段目と六段目の名シーンに挟まれた弁当幕とも言われる五段目の、中でもしょぼいしょぼい定九郎という役は、格下の役者かつとめるつまらない役どころでした。

仲蔵は 「こしらえに工夫ができますように」 と、柳島(やなぎしま)の妙見さまに日参します。

 

 

満願の日。

参詣後、 雨に降られて法恩寺橋あたりのそば屋で雨宿りしていると、 ひとりの浪人が駆け込んできました。さかやきは伸び放題、黒羽二重の(あわせ)の裏を自らひきちぎったような出で立ち。破れた蛇の目 を放り出し、酒をあおる浪人の姿を見た仲蔵はハタと手を打ちます。

「この男をモデルにしよう」

当時の衣裳は役者がこしらえます。

役のこしらえや設定を裏方や相手方に説明し、祝儀をはずみ手筈を整えました。

 

 

初日。

仲蔵は全身を真白に塗りました。驚いたのは楽屋の面々。

「おいおい、仲蔵さん、あんまり辛い目にあわされておかしくなったんじゃないか?」

そんな陰口をよそに、出番の直前に頭から水をかけ、仲蔵の定九郎が出来上った。

仲蔵の定九郎は定番のそれを見事にひっくり返しました。

初日の客は、 あまりの出来に息をのむばかり。 場内は水を打ったような静けさです。

「しくじった」

仲蔵は 逃げるように家に戻り「もう江戸にはいられない。上方に行く」 と女房に旅支度をととのえさせます。

家を出て裏通りを歩きはじめると、舞台を見た客の話が耳に入ってくる。

「いや~驚いた、凄いものを見た、今日の仲蔵の、あの定九郎は本物だ。」

観客が静まり返っていたのは、しんそこ感動したからだったのです。

「そうだったのか」

トボトボと歩く仲蔵に女房が追いつきました。師匠の中村伝九郎から呼び出しがあったとのこと。

師匠は仲蔵の工夫をほめたばかりか、新生定九郎の評判で、裏は客をさばききれずにてんてこまいだと伝えます。

芸道精進した中村仲蔵は、名優として後世にも名を残したというお話でした。

 

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【感想】

感動  もうその言葉しかありません。

仲蔵の定九郎を見た初日の客が、静まり返ったのと同じ心境です。

息を飲んでしばらく 感無量の状態になりました。

 

これがなかなか見られないという志の輔師匠の噺だったのか。

五段目の場面では、志の輔師匠に仲蔵さんがのり移り、赤坂ACTのオシャレな劇場が江戸の芝居小屋になりました。

優れた落語家は、歌舞音曲すべての心得がないとならないのだと、志の輔さんの五段目を見て納得。

今まさに目の前で本物の役者が歌舞いています。

そして、定九郎が工夫を重ねた演技のあと、客の反応をみる心の動きも鮮やかに表現されました。

「ここで。・・・・やっ、手はないのか」

「どうだっ!!!  ・・・・おいおい、なんとか言ってくれ」

張りつめた舞台の緊張感と、必死な定九郎の気持ちが痛いほど伝わってきました。

 

もうひとつ好きなのが、浪人との出会いのシーン。

志の輔さんが、ちょっと腰を浮かせて手をへのへのもへじのように広げ、

大雨が「ざーーーーーー」っと言った時には、本当に頭から大雨をあびた思いでした。

浪人が、ざざっと障子戸を開けて入ってくる。

「いやあ、濡れた濡れた、おやじ、酒をくれ」

浪人の存在感に仲蔵が釘づけになったように、私もそのインパクトに釘づけになる。

うまいっ

     志の輔さんのお侍さんは本当に凄いっ

「おやじ、酒をどんどんつげ。中にこぼすんだ。外にこぼしてどうする」

大きなどんぶりで、グビッグビッと酒をあおる豪快だが、どこかに品もある浪人の姿に顔がほころんでしまう。

 

病院で寝ているよりも、落語をきいて大笑いをしている方が体にはいいだろう

そう思って出かけてきた志の輔らくごでした。

いつもの落語会のように「大笑い」というのではありませんでしたが、

「大きな感動」を沢山受け取りました。

本当に歌舞伎や、上質の演劇を一本見た気分です。

いやあ、本当に、来て、良かった。

 

【後日談】

予備知識なしに飛び込みましたが、聞くと、この演目「中村仲蔵」は、毎年続けているそうです。

定連さんは毎年毎年、同じものを聞いているんですね。

尚更凄いと思いました。

練りに練れている。とどまっていない。ますます極めている。

ということでしょう。過去に見た方の感想をいくつか拝読しましたが、

年によっては「大泣きした」というのもありました。

志の輔さんほどになると、今年はこの場面に思いをかけようという、見事なこしらえをほどこしているんでしょう。

 

rakugo.ohmineya.com

中村仲蔵は、過去の名落語家が高座にあげています。

何本か見させてもらいましたが、志の輔さんが一番凄い。

お歴々の中では、志の輔さんの筋書きに一番近いのは、6代目三遊亭圓生さんかも知れません。

お時間がありましたら、是非にきいてみてください。