Garadanikki

日々のことつれづれ Marcoのがらくた日記

トルーマン・カポーティ「遠い声 遠い部屋」

 

『遠い声 遠い部屋』を読了。

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図書館の予約リストに入っていたのだが、いつ、なぜ、この本に興味を抱いたのかわからない。

とりあえず一読すると、たちまち独特の世界感の虜となる。

読み終わってすぐ、「もう一度読み直したい」という衝動にかられた。

 

途中でいきなり筋が飛んでいるところがあり「読み飛ばしたか」と戸惑ったが、

最後まで読み通してみたら腑に落ちたので、著者が効果を狙ったものと思われる。

「読み直したい」と思うのは、そうした伏線や仕組みが沢山散りばめられている予感がしたからだ。

 

 

少し昔の海外作品は、当時の風景が想像できず、それも戸惑うひとつの要素。

『フロス河の水車場』も、100年前のイギリスの田園風景がイメージできずに苦労したひとつだ。

 

 

今回もしかり。

100年前のアメリカ南部の片田舎の景色というのは、表紙の絵を頼りにするしかない。

「鬱蒼とした森の、見通しの悪い道を馬車で抜けた先にある家」といわれてもピンと来なかったりする。

こういう場合は同時代の映画を頼りにするといいかも知れない。

 

トラックは急に幅の広い、がっしりした道路に出た。はるか遠くの松の梢が、左手に横たわる大平原の縁を黒くふちどってはいるが、この道路には影を落とす樹一本すらない。

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本書がアメリカで発売された当時、評価が真っ二つに分かれたそうだ。

ニューヨーク・ヘラルド・トリビューン紙書評 ( 1947年1月18日号 )

『遠い声 遠い部屋』は、われわれに人間の心についての知識を与えてくれるものであり、すばらしい成果を収めている。それはただ単に無類の美しさをたたえているばかりでなく、無類の知性に彩られた作品である。読者はここに、もっとも完成したアメリカ作家の文壇への輝かしい登場を見ることになろう

 

ライブラリー誌 (1947年12月1日号 ) 

アル中的作品、病的頭脳の妄想に走り、支離滅裂。強烈な個性は感じられるが、図書館には推薦をはばかる

 

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初版本の裏に掲載されたらしい著者・トルーマン・カポーティの写真

蝶ネクタイを結び、縞のチョッキを着こみ、つのぶち眼鏡を片手にソファに寝そべった一人の少年が、深海魚のように不気味な目を光らせている。

その太い吊り上がった眉は、どうやら演出効果を狙って描かれたものらしい。

一度見たが最後、どうしても記憶から拭い去ることのできない、悪夢そのもののような写真である。

 

発売当初は二分した評価だったが、その後、作品の評判はぐんぐん上がった。

新進作家の作品としては珍しい勢いで売れ始め、十二か国語に翻訳され、

カポーティの代表作となった。

 

 

あらすじ

少年ジョエルは母の死後、幼少期に別れた父に引き取られることになり、「骸骨館しゃれこうべやかた」と呼ばれる南部 ( ランディング ) の古い邸にたどりつく。

館に住んでいるのは、父の後妻-エイミイ、その従弟-ランドルフ、小間使いのミズーリ、ミズーリの祖父-ジーザス・フィーバー

父に引き取られたはずなのに、エイミイはなかなかジョエルを父親に遭わせない。

やっとのことで再会した父は、二つのガラス目玉となって身動きできない病人だった。

 

館の近所には、双子姉妹が住んでいる。

姉のフローラベルは美しいが高慢ちき、妹のアイダベルは乱暴で野生児のような少女だった。

アイダベルと仲良くなったジョエルは、二人でランディングから逃げ出す計画を立てるも、逃げ出した先で雷雨に見舞われ、高熱にかかり家にひき戻される。

病から癒えたジョエルは、見るもの全てが新しいようで、しかしまだ子供のままでいたいようで複雑な心境に陥る。

ジョエルは、大人の世界に足を踏み入れたことに気づくのだった。

 

 

 

小説に登場する人物はみな、破滅的な現世界に囚われ、悶々として生きている。

 

雪を見たい女中のミズーリも、

過去の栄光ばかりを振り返る 義母エイミイも、

ツマラナイ父親や姉からの逃避を願うアイダベルも、

父親からアイデンティティーを得られないジョエルも、

いつかは結婚をと望むサーカスの小人-ミス・ウィースティリアも、

全員ががんじがらめになった時の囚人であり、著者の分身なのだと思われる。

 

サーカスで出会うミス・ウィーテリアの言葉が印象に残った。

今は小さい男の子たちでも、いずれは大きく成長しなけりゃならないでしょ、あたしそれを考えて、ときどき泣くことがあるの。

p.256

この言葉こそ、物語のテーマであり、

ジョエルや、幼少時代のカポーティーを見つめる《目》なのかも知れない。

 

 

「遠い声 遠い部屋」解説:河野一郎⤵

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本日の昼ごはん

なにをかいわんや

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本日の夜ごはん

つまみ三品盛りは、しし唐焼き、鯵の南蛮漬け、岩下の新しょうが

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豆腐とひき肉と豆板醤・コチュジャンを使いーの、麻婆豆腐ではないものを作った。

辛さが苦手になったおじさんがいるので、控えめな味に。

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長芋ときゅうりの酢の物

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冷凍してしまっていたサーモンを使った一品

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豆苗と軽くバターで炒めて、醤油とピンクペッパーをアクセントにした。

 

冷凍アサリを鶏出汁で煮込み、大量の長ネギ加えたスープ。

車麩がいい塩梅で「美味しい」と高評価。

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全体像

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