瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』読了
公式HPより⤵
私には五人の 父と母がある。その全員を大好きだ。
高校二年生の森宮優子。
生まれた時は水戸優子だった。その後、田中優子となり、泉ヶ原優子を経て、現在は森宮優子を名乗っている。
名付けた人物は近くにはいないから、どういう思いで付けられた名前かはわからない。でも、優子は長い苗字とも短い苗字とも、たいそうな苗字ともシンプルな苗字とも合う名前ではある。
継父継母がころころ変わるが、血の繋がっていない人ばかり。。
「バトン」のようにして様々な両親の元を渡り歩いた優子だが、親との関係に悩むこともグレることもなく、どこでも幸せだった。
物語は主人公の優子が高校二年生の話から始まる
彼女が何故、色々な苗字を経たかというと、
実母を事故で亡くした優子のもとに、梨花という新しい母親がやってきた。
梨花は浪費家でお調子者だが気立てが良く、優子を実の娘のようにかわいがる。
ある日、実父の水戸秀平がブラジルに移住すると言い出した。
妻の梨花は「あなたは1人で行って、私は優子ちゃんと日本に残るから」と拒否し、
離婚を切り出して、優子を自分の旧姓の田中にしてしまう。
田中家は、梨花の浪費癖でじり貧生活である。
ある日、優子が友達の影響でピアノに興味を持ち「ピアノが欲しい」と言うと、
「待ってて、なんとかするから」と、梨花は大金持ちの泉ヶ原という老人と再婚する。
泉ヶ原の屋敷にはグランドピアノがあり、ピアノの教師もつけてもらい、優子は何不自由なく育てられる。
しかし梨花は、泉ヶ原家の生活が窮屈だといって、優子を置いて家を飛び出して、新しい結婚相手をみつけてくる。
それが森宮壮介だった。
森宮さんは、さえない風貌ながら高学歴で一流企業に勤めている堅実な人だった。
がしかし!
梨花はその森宮家からも出奔、行方不明になってしまい、
優子と森宮さんの不思議な2人暮らしが始まる。
以上が、優子が苗字を3回も変えた理由と経緯。
優子は血の繋がらない大人から大人へと、バトンを渡されるように生きてきた。
《継母に振り回され、いろんな家をたらいまわしにされる》といえば不幸な少女の物語を連想するが、
優子は決して不幸ではない。
養父はそれぞれ持てる愛情を尽くして優子に接する。
優子も、卑屈になることもなく笑顔をたやさず可愛らしく成長する。
物語の展開は、三番目の父・森宮さんとの生活がメインになっていて、
回想の形で、実父と暮らす水戸優子の話、梨花と暮らす田中優子の話、二番目の父と暮らす泉ヶ原優子の話がはさまっている。
その回想シーンと現在との切り替えがとてもスムーズで、わかりやすく書かれているのが見事だった。
突飛な設定 だけれど。。。
そもそも、実の父親から継母が娘を奪い取るというところからして斬新な設定。
3人の男と結婚・離婚を繰り返していくというのも継母もかなりなキャラクターだが、
梨花という人物をみればさほどおかしく見えない。
各家庭や高校などの登場人物が、きめ細やかに描かれているから、こんな突飛な設定でも、違和感なく感じてしまうのかも知れない。
森宮さんが ス・テ・キ
《女が血の繋がらない娘を連れて転がり込んできて、その連れ子をおいてどこかに行ってしまう》
森宮さんは、そんなことをされても《さもありなん》なキャラクターだ。
底抜けに明るくて、真っすぐで、優子をとことん愛していて、父親役を楽しんでいる。
彼をそうさせたのは、梨花の言葉が、心に突き刺さったからだろう。
「梨花がさ、付き合ってる時、会うたびに優子ちゃんの話をしてたんだ。
まっすぐですてきな優しい子だって」
「ずいぶんな過大評価だね」
梨花さんが大げさに話している姿が目に浮かんで、私 ( 優子 ) は肩をすくめた。
「梨花が言ってた。優子ちゃんの母親になってから明日が二つになったって」
「明日が二つ?」
「そう。自分の明日と、自分よりたくさんの可能性と未来を含んだ明日が、やってくるんだって。親になるって、未来が二倍以上になることだよって。明日が二つにできるなんて、すごいと思わない? 未来が倍になるなら絶対にしたいだろう。それってどこでもドア以来の発明だよな。しかも、ドラえもんは漫画で優子ちゃんは現実にいる」
『そして、バトンは渡された』p.279より
2021年に映画化されたらしい
主人公の優子は永野芽郁、梨花は石原さとみ、森宮さんは田中圭。
実年齢の三人の歳は近すぎるが、永野芽郁が高校生にも見えるのは、現在放送中の「君が心をくれたから」で納得済み、違和感はないと思われる。
でも、私のイメージでは森宮さんは濱田岳なんだけれど、な。
本日の昼ごはん
世田谷区梅が丘の名店「すしの美登利」のおいしいおいしいバラちらし
この豪華なちらし具合で880円とは、人気で品切れゴメンなわけだわ。
本日の夜ごはん
今日はいろいろな味、いろいろな色があって楽しい。
アザミの大皿は、牛肉と春菊とオレンジを炒めて叙々苑の焼肉のたれで味を調えたもの。
オレンジの酸味がいいアクセントになっている。
こちらのスープは、鶏でとったスープにトマトとミニキャベツ。
トマトの酸味がいい役目をはたしてくれた。