昭和の名監督、あなたは小津安二郎派? それとも成瀬巳喜男派?
うーん、悩むけど、私は成瀬監督が好きかなあ。成瀬監督は女優を美しく撮るので有名ですね。
「美しく撮る」というのは語弊があるかしら、
「女性の心情をよく観察して引き出している」という方が適当かも知れません。
『流れる』でもそれを感じました。
以下は、私が「あっ」と思った出演者のしぐさの数々です。
女中-梨花 ( 田中絹代 ) の場合
花柳界の家で働くことになった梨花は素人さんなのですが、
彼女が深々と丁寧なお辞儀をするシーンが何回も出てきます。
主人-つた奴 ( 山田五十鈴 ) に、初めましてのご挨拶

つた奴の姉で金貸しの鬼子母神 ( 賀原夏子 ) にご挨拶

賀原さんの「あらま」という感じもウマいですねぇ。
もちろんお客さん ( 宮口精二 ) にも丁寧にご挨拶。

お客さんといってもこの男、この家から出て行った芸妓の叔父で、人権蹂躙だの未成年略取だの売春強要だのと文句を言いに来た男。それでも梨花さんの挨拶は丁寧なのです。
因みに。。。なんどり ( 栗島すみ子 ) だと、この貫録ですわ。

なんどりというのは原作の名称でした。映画ではお浜といってこの家の女主人-つた奴 ( 山田五十鈴 )の先輩芸者だった人、今は料亭-水野の経営者におさまっているこの辺りのボスキャラ的存在なのです。
梨花の挨拶はお浜姐さんにも、もちろん丁寧です。

芸者のお辞儀とは違う気がするの。
成瀬監督は、このお辞儀を通して梨花の素人らしさを表現させたのではないでしょうか。
もうひとつ梨花で印象的なシーンがこちら。

米子の娘-不二子が熱を出しお医者さん ( 中村伸郎 ) が注射をするっていう時に、
「暴れないように押さえて」と言われるんだけど、母親の米子 (中北千枝子) は出来ないの。
梨花は、そんな母親の代わりにタオルケットで子供の手を包んで押さえます。
その包み方がとーっても優しいのです。

梨花は、主人に先立たれ子供も亡くして女中奉公に来た女性です。
不二子に対しても、ポケットマネーで買った林檎を煮て食べさせたりと労わります。
女主人-つた奴 ( 山田五十鈴 ) の場合
つた奴の電話してるとこ。

色っぽいものですなぁやっぱり芸妓さんは。

これが妹の米子になると。。。

姉-つた奴と妹-米子 まるでライザップのCMの使用前・使用後みたいだ。
裾にじゃれつく猫のぽんこをあしらうのでも、、、い 色っぽい。

バツが悪い時だって、色っぽいし、

手水を使う時だって、こんな感じ

時計を見る姿だって、すてき

とにかく色っぽいのであります。
つた奴の娘-勝代 ( 高峰秀子 ) の場合
今回の高峰秀子の役がらは、始終ご機嫌ななめなんですの。
冒頭のシーン、なみ江と対峙しています。
勝代は、なみ江と反りが合わなかったのね、結果としていびり出す形になってしまい、それがあだとなり後々騒動が起こるのです。

勝代は始終むくれた顔をしています。
梨花の漢字の読み方を母親に聞かれるだけだっていうのに、この表情。

勝代にとってこの家でのことはひとつも愉快ではない

染香 ( 杉村春子 ) が母親にたてつくのを見てもくってかかる勝代。ああ悔しいの表情。

そんな勝代ですが、梨花の優しさには心がほどけるようです。

つた奴の妹-米子 ( 中北千枝子 ) の場合
二枚目の板前 ( 加東大介 ) に捨てられ、1人娘の不二子をつれて姉の家に転がりこんでいるのですが、この人何も出来ない、何もやらないのです。
この家で起こることをいつもボーッと静観。着物の着方もしぐさにもだらしなさ満開なのです。

この立姿、いいなあ。

梨花が来る前は、しぶしぶこの家の家事をやっていたようですが、梨花が来てからは娘をほったらかして外出。たまに家にいても、、、、寝てます。

家にいる時は、雑誌を読んでいるか、、、、寝てますの。

いいキャラクターですなぁ。
染香さん ( 杉村春子 ) の場合
染香さんは通いの売れない三味線芸者。年下の男と暮らしているので借金がかさんでピーピーしているようです。食事はいつもコロッケ。

主人に内緒で梨花にねだっているのは、ソース。

信心深い染香さん、

何を拝んでるかっていうと、、、、かえる?

火事封じのおまじないを指南

お茶っぴきを気にして、梅干しは禁止。
料亭の仲居さんに電話をして「ふいの客がきたらヨロシク」の営業。

つた奴がなみ江の問題でお座敷に上れないと聞き、急遽ピンチヒッターにたつことに。
染香さん大張り切りの図。

今日お座敷でやるっていう三味線の合いの手を、つた奴さんに聞いています。
「姐さん、あそこ、つつ、つん、つん、つんって、ああそうか、そこに間がはいるんですね」

「頼むわよ、こっちはそれどころじゃないのよ」と内心では言いたい つた奴。
お座敷がうまく勤まった ( ごまかして ) とはしゃぐ染香さん。

男に捨てられ、酔っ払ってやけっぱちの染香さん。

挙句は、台帳と清算金が合わないとつた奴に直談判。

いやあ。こういうシーンは杉村さんの独壇場ですな。

哀しい女、切ない女、やらせたら、ウマす。
けつをまくって看板を外して出ていくものの、他ではやっていけなかったの。
「お姐さん、先日は酔っ払ったとはいえ、とんだことでした」

「あら、いいのよん」とつた奴姐さん。
この辺の人の良さが、この世界ではだめなのかもという伏線が、あるんですかね。
なゝ子ちゃん ( 岡田茉莉子 ) の場合
なゝ子は、この家の看板芸妓。とりあえずそこそこ売れてるみたいです。
立ち居振る舞いも売れてる感がありますなぁ。

事件大好き、見逃しません。

耳が早いのも芸者として大事なことなんですって。

おちゃっぴいでお気楽かというと、なゝ子にだって悩みはあるのよ。
昔の恋仲が落ちぶれちゃったのを見て、憂鬱なんです。

恋人に会うか会わぬかはコインで決める。

こんな商売、なんとかなるわさでやっていくしかない、みたいです。
水野の女将-お浜 ( 栗島すみ子 ) の場合
つた奴のよき理解者、頼れる先輩のお浜さんは組合の顔役ですから。

チラとも見なくても、つた奴がいるのを知っています。
今は大きな料亭の女将におさまっていて、皆が頼ってくるみたいです。

つた奴の昔の旦那にも頼んであげたり、

お金を用意してくれたり

とにかく便りになる姐さんなのです

つた奴が警察に連れていかれても、あとは任せろ


でも。本当は相当怖い人。

この貫録は、一日二日で出るものじゃありませんな。
一番好きなシーン。

染香さんとつた奴さんの「神田祭」の演奏。
〽 一歳を今日ぞ祭に当り年~ 警固手古舞華やかに~ 飾る桟敷の毛氈も
色に出にけり酒機嫌~ 神田ばやしも勢いよく~ きても見よかし花の江戸~
って、いやホントに2人の三味線は凄い。本作のサービスカットです。
おまけ
ぽんこ



さて。皆さんはどんなシーンがお気に入り?