Garadanikki

日々のことつれづれ Marcoのがらくた日記

佐藤忠良作 『少女』

鎌倉から横浜にやってきました。

目的地は、港の見える丘公園にある「大佛次郎記念館」の見学。

 

横浜は詳しくなくて、電車で降りたつのは初めてかも知れない。

近いのにねぇ そう、近いゆえ小さい時から車でビューンの世界でした。

そんな横浜、折角横浜駅を経由するのだから、東口にあるという、あの彫刻を見てみたくなりました。

 

佐藤忠良作「少女」

f:id:garadanikki:20160922103326j:plain

あった、あった。

 

f:id:garadanikki:20160922103333j:plain

私の、横浜駅のイメージは「いつもどこかしら工事をしている」というもの。

横浜の東口に新しい玄関としてポルタが誕生したのは、35年も前なのね。

f:id:garadanikki:20160922103329j:plain

それを記念して設置されたのが、この「少女」の像。

プレートにもあるように、彫刻家-佐藤忠良さんが、孫をモチーフに作成した彫刻です。

佐藤忠良、69歳の時の作品。

1981年といえば、忠良先生がフランス国立ロダン美術館の招きで、同美術館で個展を開催した年だ。

 

現代日本の具象彫刻界を代表する彫刻家、佐藤忠良の作品には、身近の人が多くモチーフになってます。例えば、弟子で彫刻家の笹戸さんをモチーフにした「帽子」。

それから長女で女優の佐藤オリエさんや、孫の未菜さんや竜平さんも何度もモデルになり、その人たちから数多くの作品が作りだされています。

お孫さんは、アトリエで遊んでいる姿をデッサンしたんでしょう。

彼らの成長をたどるようにして作られていった「幼女」「りゅう三年生」「ミナ一年生」「中学一年生・ミナ」「中学三年生・竜」は、その年その年の子供が持つ「あどけなさ」だったり「みずみずしさ」や「躍動感」「爽やかさ」といったものが表現されています。

完成した作品って、孫や娘を描いたというよりも、孫や娘の肉体を借りて作られた「忠良先生の想い」みたいなものなんでしょうか。

 

さて。

「少女」 ( 未菜さんが10歳の時の作品 ) ですが、

髪型も高くひっつめにし、よく見るとレオタードのようなものを着ています。

首から肩にかけての筋肉のつき方から、モダンバレーや体操をされていたのではないかと想像されます。

 

面白いのはその視線。

f:id:garadanikki:20160922103334j:plain

このアングルでは、遠く彼方、上を見ているようにも見える。

f:id:garadanikki:20160922103332j:plain

左ひじが心もち上っているから、そう見えるのでしょう。

f:id:garadanikki:20160922103328j:plain

 

ところが背中から見ると。。。 

f:id:garadanikki:20160922103330j:plain

「横浜の新しい玄関 ( ポルタ ) 」の、階段下に視線が注がれているようにも見える。

 

それか、、、もしかしたら、あの壁画 ( 井出宣通作「横浜の詩」 ) を眺めているのかも知れない。

f:id:garadanikki:20160922103337j:plain

彫刻って、ぐるり廻ってみると、見る高さや角度によって色々な表情になるから不思議です。

折角、公開の場にあるのだから触ったり、ぐるり回ったりしなきゃ勿体ない気がする。

美術館では、写真不可はもちろん、ガラス張りだったり、一方向からしか見えないなんていうこともありますからね。

 ( ※ 佐藤忠良さんは生前「彫刻は手で触ってもらい楽しんでもらうのもいい」

   とおっしゃっていらしたそうです。 ) 

f:id:garadanikki:20160922103336j:plain

この場に来て「彫刻の陰影が素晴らしい」と思った理由が、写真を見てわかりました。

室内空間だと思っていたのですが、天井がガラス張りになっていて、自然光が回るんです。

これは彫刻には最高の環境でしょう。

 

自然光で見る彫刻が好きです。できれば野外彫刻が。

しかし環境によっては、銅が変色してしまったりするコンディションのものもある。

 

実はこの「少女」。

同じ作品と思われるものが、江別市にも設置されています。

実物を見たことはありませんが、zookoo11 さんのサイト「裸婦像放浪記」のお写真を拝見すると、、、 

かなり風化して、横浜のとは違う印象です。

 

横浜の「少女」は、恵まれた環境にあるんですね。

新しい玄関と言われて35年、当時の少女だったお孫さんも、すっかりお母さんになられている年齢ですが、ブロンズ像「少女」は階段を登ってくる人を何万人も見てきたことでしょう。

そして、これからも横浜の東口を爽やかな眼差しで見つめていくのでしょう。